欧州のカオス

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『日本の亡国を防ぐために①』三橋貴明 AJER2015.9.15(5)

https://youtu.be/oN59AffMGQE

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 明日は6時から文化放送「おはよう寺ちゃん活動中」に出演します。
http://www.joqr.co.jp/tera/


 ドイツのDPA通信によると、ドイツ中部カッセル郊外の難民キャンプで、9月27日に難民同士の小競合いが発生したとのことです。カッセル郊外のキャンプでは、何と20カ国からの移民が混在していました。


 難民同士の喧嘩がエスカレートし、アルバニア難民 対 パキスタン難民の対立に発展。さらに、夕方には70人、300人の集団による衝突となったとのことでございます。


 言葉も、文化も、伝統も、生活習慣も、そして宗教も異なる人々が、何千人、何万人という単位で「国家」に流入してくる。何らかのもめ事や諍いが発生することなく、整然と「管理」するなど、神様にも不可能でしょう。


 さて、フィナンシャル・タイムズ紙が興味深い記事を配信しています。


5つの同時危機でカオスの域に入る欧州 難民危機だけでも政治的、財政的に手足を縛られる盟主ドイツ
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44872
 欧州は同時進行する5つの危機と奮闘している。いずれも、異なる発展段階にある不測のショックだ。シリアからの難民、ユーロ圏周縁国の債務、世界的な景気減速、ロシアのクリミア併合とその余波、そしてフォルクスワーゲン(VW)の犯罪と不正行為である。
 カオス理論の人気の比喩は、世界の別の地域で竜巻を引き起こす蝶の羽ばたきだ。
 欧州の罪のない危機の引き金は、シリアからの難民にドイツを開放することにしたアンゲラ・メルケル首相の道義的な決断だった。
 大半のドイツ国民は熱狂的にこの決断を歓迎したが、首相は来るべき事態に向けて、政治的、物理的に自国と他の欧州諸国を備えなかった。
●難民受け入れを決めたドイツの英断の代償
 ベルリンとハンブルクでは、住宅事情があまりに絶望的なため、当局が人が住んでいない私有アパートを接収する法律を準備しており、ハンブルクでは商業用不動産も対象になっている。
 地方政府が難民に住まいを提供するために、公営住宅の入居者の賃貸契約を打ち切った事例も複数ある。公的部門がこのように振る舞う時、外国人嫌いの気運はものの数ナノ秒で頭をもたげる。
 ドイツでは、メルケル氏率いるキリスト教民主同盟(CDU)の姉妹政党でバイエルン地方の保守派の地域政党・キリスト教社会同盟(CSU)党首、ホルスト・ゼーホーファー氏以上に素早く国民のムードの変化を感じ取る人はいない。
 同氏は、ドイツは長期にわたり、メルケル氏の政策がもたらす結果の代償を払うことになると言う。かつて重力に逆らうほど高かったメルケル首相の支持率は最近、低下した。(後略)』


 シリア難民(あるいは「地中海」難民)。
 ギリシャなど、ユーロ周縁国の財政危機。
 世界的な景気減速。
 ロシア問題。
 そして、フォルクスワーゲンの不正行為。


 特に、ドイツは上記五つに「同時に」対処しなければならない状況になっているわけです。しかも、FT紙が指摘している通り、ユーロ経済の復活は「純輸出」頼みになっています。


 と言いますか、そもそもドイツ経済が「純輸出」頼みになっており、世界的な貿易縮小(現在)はユーロ・EUという「ドイツ第四帝国」を直撃します。


 経済面に限って言えば、ドイツは財政拡大によりユーロ全域の需要を創出しなければならない立場にありますが。が、できません。理由は、FT紙の記事にもある通り、ドイツは「憲法」で均衡財政を義務付けてしまっているためです。


『(引用)ドイツは憲法で、景気サイクル内での財政均衡を義務づける定めを自らに課した。ひとたび黒字が消えたら、裁量的な政策行動を取る政治的、法的余地が消えることになる。ありていに言うなら、ドイツ国民はギリシャではなく難民に黒字を費やすことを決めたのだ。』
 

 露骨な書き方をしていますが、まさにその通りで、ドイツは「ユーロ」を利用して実現した財政黒字を、ユーロ加盟国のために費やすべきでした(できれば、所得移転方式で)。ところが、ドイツはギリシャに対し、あくまで「借金の繰り延べ」で対応し、所得移転も財政拡大も拒否しています。

 代わりに、膨大な難民、川口先生の情報によると、今年だけで100万人を突破する難民のために支出を拡大することになるわけです。


 しかも、
「地方政府が難民に住まいを提供するために、公営住宅の入居者の賃貸契約を打ち切った事例」
 までもが出ているわけですから、愕然としてしまいます。


 現在のドイツ政府は、果たして「ドイツ国民のための政府」なのでしょうか・・・・


 ちなみに、ドイツが難民にここまで寛容になる(ならざるを得ない)のは、ナチスの歴史を背負っているという面もありますが、もう一つ。EUの「憲法」の問題もあります。


 平成16年9月に公表された日本の衆議院憲法調査会事務局の「欧州憲法条約-解説及び翻訳-」によると、欧州連合条約の「価値」は、以下の通りとなっています。


『第I-2条[連合の価値]
連合は、人間の尊厳、自由、民主主義、平等、法の支配、少数者である人々の権利を含む人権の尊重の諸価値を基礎とする。これらの価値は、多元主義、無差別、寛容、正義、連帯および男女平等が優越する社会にある構成国に共通するものである』


 何となく、どこぞの国の「憲法」を思い出しませんでしょうか


 思想としては高邁だと思いますし、目指すことにも価値がある理想だと考えます。が、現実に押しつぶされ、国民の利益を否定してまで実現しなければならない「価値」なのでしょうか。


 それこそ「価値観」の問題なのですが、いずれにせよドイツは自国憲法(ドイツ基本法)の財政規律条項や、EU憲法の「価値」により、政治的な選択肢を失ってしまっているのです。


 片や、ドイツ基本法やEU憲法という「ルール」に縛られ、反対側でフォルクスワーゲンの途轍もない「ルール違反」が露見。難民は容赦なく押し寄せ、ギリシャは刻一刻と「発展途上国」化し、債務免除(絶対に必要ですが)は政治的に通らない。頼みの外需も、ご存じ、中国を中心に失速中(日本もですが)。(ちなみに、中国で最も人気がある高級車は、フォルクスワーゲンのアウディでした。)

 まさに「カオス」ですが、問題なのは現在のドイツが抱える多くの危機が、いわゆる「実践主義的」ではないことで引き起こされ、深刻化していっていることです。非・実践主義的な政策で、事態を悪化させていく。ドイツやユーロ・EUは、この点でも日本の先行者なのです。



「非・実践主義的なドイツを反面教師にするべき」に、ご賛同下さる方は、

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