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『亡国の農協改革①』三橋貴明 AJER2015.9.8(13)
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飛鳥新社「亡国の農協改革 ――日本の食料安保の解体を許すな 」、早速、大増刷になりました! ありがとうございます。
9月9日、欧州連合はシリア、イラクからの難民計16万人を、今後二年間で加盟国に割り当てていく案を発表しました。欧州連合は7月の時点で4万人の割り当てで合意していたが、その後の難民殺到を受け、12万人を積み上げしたのでございます。
とはいえ、中東欧諸国は難民受け入れの「義務付け」に強く反発しています。
『難民16万人の割り当て義務化を、欧州委員長が新提案
http://jp.reuters.com/article/2015/09/10/refugee-junker-idJPKCN0RA0GI20150910
欧州委員会のユンケル委員長は9日、欧州議会で一般教書演説を行い、欧州連合(EU)に流入する難民への支援を加盟国間で分担するよう訴える一方で、不法移民を阻止するために国境警備をより厳重にすると約束した。
イタリア、ギリシャ、ハンガリーの負担軽減のため、当初は4万人の難民割り当て計画を提案したが、東欧諸国などの反対で断念した経緯がある。委員長は9日の演説でこれを4倍の16万人に引き上げ、割り当ての義務化を改めて主張した。
チェコやスロバキアの首脳は割り当て義務化に強く反対している。一方、ポーランドのコパチ首相は、欧州委員長のメッセージを受け止めると述べた。「我々に結束を求めるのは脅迫ではない。EUが協力して有効に行動することは、わが国の利益につながる」とし「かつては我々も難民だったのだ」と語った。
ハンガリーやオーストリア、デンマークでは、数百人の移民のグループがドイツや北欧のスウェーデンを目指して路上を歩いているため、主要なハイウェイの封鎖を余儀なくされるなど、混乱に陥っている。』
9月9日時点で、欧州連合が各国に割り当てた難民受け入れ数は、以下の通りです。
●ドイツ 4万2千人
●フランス 3万1千人
●スペイン 1万6千人
●ポーランド 1万人
●オランダ 9千人
●ベルギー 6千人
●ルーマニア 6千人
●スウェーデン 6千人
イタリア、ギリシャ、ハンガリーの三カ国は、すでに多くの難民や移民が入国しているため、対象外になっています。もっとも、ギリシャはハンガリーに難民受け入れを義務付けたところで、両国ともに履行しないでしょう。
イギリス、デンマーク、アイルランドは、シェンゲン協定を批准していないため、対象外です。すなわち、シェンゲン協定を批准しているか否かでも、欧州各国の難民受け入れ義務に「差異」が生じてしまっていることになります。
難民を受け入れるか否かは、各国の主権の問題です。もちろん、国際協力の面、人道的な面で難民を受け入れる必要があるときもあるでしょう。とはいえ、それはあくまで「国民の主権」に基づいて決定されなければならないはずです。
ところが、ドイツ第四帝国ならぬ欧州連合の加盟国は、欧州連合という国家を超えた機関から難民受け入れを「義務付け」されてしまうわけです。ソ連のくびきから脱し、欧州連合という新たな「帝国」に自分たちの意志で参加した中東欧諸国は、自分たちが「何」に加わってしまったかに気が付き、戦慄していることでしょう。
ちなみに、欧州連合諸国が正当な理由なく難民受け入れを拒否した場合、最大で対GDP比0.002%分の欧州連合予算に対する予算的貢献を求められます。つまりは、
「難民受け入れを拒否するならば、カネを払え」
という話です。欧州連合の予算を「いくら」支払うかは、これまた財政主権の問題ですが、欧州連合加盟国は、やはり国家を超越した「帝国」の指示に従わざるを得ません。
すでに、ハンガリーは難民問題を機に欧州連合から離脱の方向に進んでいます。イギリスも、17年までに欧州連合からの離脱の是非を問う国民投票を実施する予定になっています。(というわけで、トッドがイギリスとハンガリーについて、ドイツ帝国から「離脱途上」と表現しているのです。)
ドイツのメルケル首相は、9月9日の記者会見で、
「世界が我々を見ている。(中略)『遠い国のシリアなんて自分には関係ない』とは言えないはずだ」
と、中東欧諸国をけん制。
メルケルは「保護すべき人は保護するのが欧州の伝統」という持論を持ち、「人権」こそを欧州共通の理念として位置付けています。
なぜ、「人権」なのでしょうか。理由は、次に出版する書籍で明らかにしますが、いずれにせよ現在の欧州はEU・ユーロという「ドイツ第四帝国」の下で、国民の主権が制限されている状況が続いています。
このまま主権を制限され続ける限り、欧州連合に加盟している各国は「国民国家」を失うか、もしくは一部の国々(トップはハンガリーでしょう)から離脱していき、「欧州合衆国」の夢がついえることになります。いずれにせよ、今後の欧州は「ヒトの移動の自由」というグローバリズムにより、各国ともに混乱が継続することになるでしょう。
日本「国民」は今、欧州をケーススタディ(事例)として、国民国家のあり方を改めて考える必要があると確信するのです。
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