おカネの話(後編)

テーマ:

株式会社経世論研究所  講演・執筆依頼等、お仕事のご依頼はこちらから
三橋貴明のツイッター  はこちら

人気ブログランキング に参加しています。

新世紀のビッグブラザーへ blog

人気ブログランキングへ

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
『ギリシャと地方創生①』三橋貴明 AJER2015.6.16

https://youtu.be/kDM_C2YUqHU

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

   


 明日は、7時からTOKYO MX「モーニングCROSS」に出演します。

http://s.mxtv.jp/morning_cross/


  さて、いよいよギリシャのEU支援(&緊縮財政)受け入れに対する賛否を問う住民投票が、本日、実施されます。


ギリシャ きょう国民投票 国民の選択は
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150705/k10010139161000.html
 財政危機に陥っているギリシャでは、EU=ヨーロッパ連合などが金融支援の条件としている財政緊縮策の受け入れの賛否を問う国民投票が5日行われます。反対が過半数となれば、ギリシャが通貨ユーロの圏内から離脱する可能性もあり、ギリシャ国民の選択が注目されます。
 ギリシャは先月末に支払い期限を迎えたIMF=国際通貨基金からの債務、およそ2000億円を返せない状態に陥っています。
 今回の国民投票は、EUなどから金融支援の条件として財政緊縮策の受け入れを迫られたことから、ギリシャのチプラス首相がその賛否を国民に問うと
して先月27日、急きょ実施を決めました。
 チプラス首相は、「反対を選択すれば、より強い力でEUと交渉することができる」と主張し、反対に投票するよう訴えてきました。これに対し、賛成派は、緊縮策を受け入れなければ、EUとの対立が決定的となり支援を受けられず、経済が立ち行かなくなると主張してきました。
 反対が過半数となれば、ギリシャがEUなどから支援を受けられずユーロ圏内から離脱する可能性もあり、ユーロの信用が損なわれ、混乱が生じるおそれが指摘されています。一方、賛成が過半数となれば、EUなどからの支援再開に道が開かれることになり、ギリシャ国民の選択が注目されます。(後略)』


 ギリシャの問題は、「外国から借りた債務」すなわち、欧州の金融機関が「債権者」であり、ギリシャ政府が「債務者」であるおカネの問題です。


 未だに、おカネについて「神様が与えてくれた財産」であると勘違いしてる人がいますが、皆さんにとって債権である「おカネ」は、必ず別の誰かにとって債務となる「おカネ」なのです。おカネは同額になる債権と債務の記録であるということを、いい加減に理解して欲しいと思います。


 すなわち、日本政府が負債(債務)を増やしたとき、反対側で必ず別の誰かが資産(債権)を増やしています。日本の場合、世界最大の対外純資産国であるため、債権者は日本国民です。


 それに対し、ギリシャ政府の負債(債務)の債権者は、フランスやドイツなどの銀行、さらにはEUやIMFなどの国際機関になります。

 日本政府が負債を増やすと、日本の家計や企業の資産が「必ず」増えます。それに対し、ギリシャ政府が負債を増やすと、「外国の金融機関」の資産が増える構造になっていたのです。(ギリシャが経常収支赤字国だったため)


 と、しつこく「誰が債権者で、誰が債務者?」を考えれば、ようやくおカネの正体が見えてこないでしょうか。未だにおカネの問題について「一経済主体(例えば政府)」で認識し、それっぽい説明をする家計簿脳が少なくないわけですから、困りものなのです。しつこいですが、政府が借金を増やしたとき、必ず反対側で誰か別の経済主体の資産が増えます。いい加減に諦めて、この原則だけでも理解して欲しいと思います。


 ところで、エクサスケール・コンピューティングを推進している株式会社ExaScalerと株式会社PEZY Computingを率いる齊藤元章氏は、本ブログでも何度か登場した「エクサスケールの衝撃 」において、「おカネのない社会」について思考実験的な考察をされています。


『(P344)本章の第1項では、「衣」「食」「住」がフリーになり、それ以外の贅沢品ですらフリーになる可能性を見てきた。モノやサービスがフリーになり、お金を支払う必要性が次第になくなってくると、いっそのこと、お金自体を使わなくするか、なくしてしまったほうが早くはないだろうか。「衣」「食」「住」がフリーになると、人々は生活を守り、安定させるために働く必要がなくなる、「不労」の状態を実現することになる。
 当面の間は、一定の時間は無償の勤労が求められるが、自動化とロボット化が進むことによって、その求められる労働時間は、次第に減少していくことが確実である。

 人々は、勤労から解放されてできた余剰の時間を使って、娯楽や趣味や旅行を楽しむために、あるいは贅沢品を手に入れたりするために必要なお金を得る目的で、一部は有償で働くことになる。
 しかし、さらに無償で求められる労働時間が減ってくるなかで、人々は自らの娯楽や趣味や旅行、あるいは贅沢品のために働くのではなく、誰か他の人のために働きたい、誰か他の人にも喜んでもらいたいと考えるケースが、少なからず出てくるはずである。そして、その行動は広がっていき、浸透していくことが期待される。そうなると、「衣」「食」「住」以外の、娯楽や趣味や旅行が、そして贅沢品までもがフリーになる可能性が見えてくる。そうすると、とうとうお金を使う必要がない人たちのグループが、一部に出現してくることが予想される。(後略)』


 おカネの存在しない社会など、想像もつかないかも知れませんが、人類はそもそも古代ギリシャやメソポタミア以前はおカネを使っていませんでした。(少なくとも、おカネを使っていたという歴史的記録はない)


 当時の社会は、共有と分配により成り立っていたと考えられています。すなわち、生産された財やサービスは社会の共有「資産」であり、リーダーが分配することで各人、各家庭が生活を成り立たせていたわけです。そして、一社会内で物々交換が経済活動の主だった歴史的事実は、実は発見されていません。

 各人が分配された資産を「交換」する際に、互いに貸し借りとして交換事実を数字で記録した。例えば、
「A氏がB氏から100の小麦の提供を受けた。A氏はB氏に100小麦の負債を追っている」
 と記録され、B氏が別の「交換」の際に、
「B氏がC氏から5の衣服の提供を受ける際に、A氏の負債(100小麦)で支払う」
 ことが可能になった時、すなわち「誰かの債務=誰かの債券」に譲渡性が出たとき、初めて「おカネ」が誕生したわけでございます。紙幣や硬貨は、別におカネの本質ではありません。おカネとは、しつこいですが債務と債権の「記録」なのです。


 というわけで、「おカネの存在しない社会⇒おカネの存在する社会」の移行があった以上、逆は「あり得ない」などということが「あり得ない」のでございます。齋藤氏の仮説は、別に荒唐無稽というわけではありません。


 もっとも、齊藤氏も書いている通り、エクサスケールコンピューティングやロボット化が進み、「衣」「食」「住」の生産が十分すぎる以上に可能になるという前提は、やはり必要なのです。すなわち、ハイパー・デフレーションです。


 人類の生産性が極端に高まり、「供給能力>総需要」の差、つまりはデフレギャップが過剰なまでに拡大してしまったとき、ハイパー・デフレーションになったとき、衣食住に代表される生産物を適切に分配する方法さえ考案されれば、おカネの必要性は極小になります。


 娯楽や趣味、旅行、贅沢品の場合はどうでしょうか。実は、これも話が同じで、「供給能力>総需要」が最大化されるハイパー・デフレーション状態になると、やはりおカネは不要になります(適切な分配システムは必要ですが)。とはいえ、そもそも「贅沢品」についてハイパー・デフレーションになるなどということがあるのか、現時点では想像がつきません。と言いますか、ハイパー・デフレーションになった時点で、贅沢品は贅沢品でなくなってしまうような気がいたしますが。


 まあ、ここまで行くと経済というよりは、哲学や宗教の問題のようにも思えます。「価値をいかに定義し、いかに分配するか」という話ですね。


 いずれにせよ、齊藤氏が書かれた「お金が必要ない社会システム」の実現のためにはハイパー・デフレーションと適切な分配システムが必要になります(齊藤氏の主張は、エクサスケール・コンピューティングにより二つが実現する可能性がある、というものでございます)。逆に、この二つが成立すると、おカネはおカネの用をなさなくなり、ギリシャ危機のような「おカネの危機」は、二度と発生しないことになります。


 そもそも、ギリシャの自動車市場で「ハイパー・デフレーション」が成立しており、ギリシャ人がドイツ車を大量輸入しなければ、今回の危機は起きなかったわけです。無論、ギリシャの経常収支赤字を作っているのは自動車に限りませんが、象徴としてドイツ製自動車を取り上げました。


 いかがでしたでしょうか。ギリシャ危機がクライマックスを迎えたことを受け、今回は「おカネのない社会」について考えてみました。


本日のエントリーを興味深くお読み頂けた方は、

↓このリンクをクリックを!
新世紀のビッグブラザーへ blog

人気ブログランキングへ

◆本ブログへのリンクは以下のバナーをお使いください。

新世紀のビッグブラザーへ blog
◆関連ブログ

三橋貴明オフィシャルブログ「新世紀のビッグブラザーへ blog」Powered by Ameba

◆三橋貴明関連情報

Klugにて「三橋貴明の『経済記事にはもうだまされない』」 連載中

新世紀のビッグブラザーへ ホームページ はこちらです。