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『実質賃金を引き上げる方法①』三橋貴明 AJER2015.3.17

https://youtu.be/54A1iQdY8Zs

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一般参加可能な講演会

5月15日(金) 19時30分より『Voice』特別シンポジウム『日本の資本主義は大丈夫か――グローバリズムと格差社会化に抗して』

パネリスト:小浜逸郎、三橋貴明、中野剛志

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  何度も繰り返していますが、デフレ脱却の正しいゴールは、
インフレ率がプラス化し、それ以上に名目賃金が上昇し、実質賃金がプラス化する
 です。


 図の通り、日本の実質賃金のピークは1997年です。つまりは、橋本政権が日本をデフレに導く緊縮財政を実施した年になります。


【日本の実質賃金指数(決まって支給する給与)の推移(長期、年平均)】

http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_49.html#choki


 デフレ突入後、日本は、
インフレ率がマイナスに陥り、それ以上のペースで名目賃金が下落し、実質賃金が低下していく
 形で、国民が貧困化していきました。すでに、ピークの1997年と比べると、2014年末の日本国民の実質賃金は、約12%落ち込んでしまっています


 第二次安倍政権が発足し、消費者物価は一時的にプラス化しましたが、名目賃金の伸びが不十分で、実質賃金のマイナスは続きました。これは、日銀の問題というよりは、どちらかというと政府の責任です。


 通貨を発行し、金利を調整する以外の機能を持たない中央銀行が、「需要創出」のコミットメントなどできるはずがありません。需要とは、あくまで「モノやサービスの購入」なのです。日本銀行が国内の銀行から国債を買い取っても、その時点ではモノやサービスは購入されていないのです。


 というわけで、安倍政権は金融政策を拡大すると同時に、財政政策で需要を創出しなければなりませんでした。2013年はそこそこやったのですが、その後は緊縮財政に転じ、2014年4月の消費増税により需要拡大に「蓋」をしてしまいました。

 結果、今度は消費者物価指数の上昇率が低下をはじめ、コアCPIは2015年2月にはついに(消費税増税分を除くと)対前年比でゼロになってしまったわけです。


2月実質賃金は前年比‐2.0%、22カ月連続マイナス=毎月勤労統計
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0MU0BH20150403
 厚生労働省が3日発表した2月の毎月勤労統計調査(速報)によると、物価の変動を考慮した実質賃金は前年比2.0%減となった。マイナスは22カ月連続で、減少幅は前月に比べて小幅縮小した。(後略)』


 また、記事にもある通り、実質賃金の方は相変わらず対前年比マイナスで推移しています。もっとも、減少幅は縮小傾向にあるのですが、これが果たして、
名目賃金の伸びによるものなのか。物価上昇率の低下によるものなのか
 は、精査が必要です。恐らく、両方の理由からなのでしょうが、いずれにせよ重要なポイントは、物価上昇幅が縮小した結果、実質賃金の下落幅が圧縮されても、上記の、
「インフレ率がプラス化し、それ以上に名目賃金が上昇し、実質賃金がプラス化する」
 からは遠ざかってしまう、という話でございます。


 ちなみに、厚生労働省は、3月31日に実質賃金を発表予定だったのですが、
「精査が必要な部分が見つかり、内容を点検することになった」
 という不思議な理由で発表が延期されました。「精査が必要な部分」が何か、是非、知りたいところです(嫌味ではなく、純粋に好奇心から)。


 それはともかく、実質賃金は、

●実質賃金指数=名目賃金指数÷消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合
 で計算されます。


 実は、上記の「消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)」は、CPIやコアCPIよりも高くなる傾向があるのです。2月の値は、対前年比2.5%でした(消費税増税分を除くと0.5%)。


 というわけで、消費税増税の影響が対前年比の値から消える今月(4月)であっても、実質賃金計算時の「消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)」はマイナスになっていない可能性が高いのです。


 例えば、上記の消費者物価指数が0.3%増だったとして、それを上回る名目賃金指数の上昇がなければ、4月は「物価下落による実質賃金のプラス化」の段階にすら至らないことになります。


焦点:政府試算の春闘ベア、前年比0.5%増程度 景気好循環に不安
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0MU0CT20150403

 内閣府が今週初めに公表した今年の春闘におけるベースアップ率の試算によると、0.5%程度と前年実績の0.39%ををやや上回る程度に伸び悩む見通しだ。
連合によれば、ベースアッップ実施企業は増加し、賃上げの裾野は広がっているが、政府・日銀の期待値とはかい離が生じており、政府部内には経済の好循環や物価上昇につながるか、不安も漂い出した。(後略)』


 政府は春闘のベアに相当、期待していたようですが、ベアを実施する大企業ですら対前年比0.5%では、4月の実質賃金プラス化は厳しいように思えます。昨年の経験を踏まえると、ベアが0.5%程度では、全体の名目賃金指数の上昇は0.2~0.3%程度でしょう。「消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)」の上昇率と、いい勝負です。(本質とは全然関係がない勝負ですが


 いずれにせよ、デフレ脱却の正しい姿は、マクロ的にはインフレギャップ化、ミクロ的には、
「インフレ率がプラス化し、それ以上に名目賃金が上昇し、実質賃金がプラス化する」
 になります。


 上記の「基本」を政府が理解し、政策を転換(需要創出に向けて)しない限り、2015年の日本経済は「良くて」野田政権期(インフレ率も実質賃金も横ばい)の停滞に戻ることになるでしょう。


 そうなると、「結局、この二年間は何だったんだ」という話になり、下手をすると金融政策までもが世論的に完全否定されることになりかねません。金融政策を含む「デフレ対策」を打てない状況に至るという、最悪の結果を防ぐためにも、今、政府は財政出動により仕事を増やし、インフレ率以上のペースで所得が上昇し、「国民が豊かになる日本」に船の舳先を向けなければならないのです。


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