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『高度成長期に学ぶ①』三橋貴明 AJER2015.3.10

https://youtu.be/cAze-cExL_s

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一般参加可能な講演会

3月28日(土) 12時より『シンポジウム「台湾映画『KANO』にみる、忘れられた台湾史と今の日本人に求められるもの」』 文京区シビックセンターにて。

5月15日(金) 19時30分より『Voice』特別シンポジウム『日本の資本主義は大丈夫か――グローバリズムと格差社会化に抗して』

パネリスト:小浜逸郎、三橋貴明、中野剛志

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 さて、現在は農協改革(要は農協解体)とTPP交渉が並行して進んでいる状況にあります。これは、冗談でも何でもなく、日本「国家存亡の危機」だと思うのですが、例によりマスコミがまともに報道しないため、一つ一つ、整理しながら解説したいと思います。


 まずは「農協」について知って欲しいのですが、全国には約700の地域農協があります。さらに、地域農協は約1000万人の組合員(農家など)の出資により成り立っています。


 すなわち、農協は「株式会社」ではありません(ここが、極めて重要です)。


 地域農協は、商社機能を果たすJA「全農」と農産物や肥料等を売買し、農林中金が提供する信用(要は銀行です)、JA共済が提供する保険を組合員に販売しています。実は、大元の農協の目的の一つである全農関連のビジネス(経済事業と呼ばれています)では利益が出ず、農協の経営は信用、共済という二つの金融事業により支えられているわけです

「利益が出ないなら、全農関連のビジネスは止めてしまえ!」
 と、できないのが、日本の食料安全保障を担う「農業」という産業なのです。株式会社の理論に従えば、「利益が出ない事業は撤退」という話になりますが、「農業」「食料」でそんなことをやられては、日本国民が困ります。というわけで、組合方式の農協と全農が、農林中金と共済の利益を活用しつつ、日本の食料生産、食料流通を何とか維持してきたというのが過去の歴史です。


 ところで、地域農協は過去に何度も「危機」に陥りまして、そのたびにドタバタと経営改善をすることで、何とか生き延びてきました。その音頭を取ったのが、全国農業協同組合中央会、すなわちJA全中です


農協改革 JA全中一般社団法人化を半年延期
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150319/k10010021511000.html
 農協改革を巡り、農林水産省はJA全中・全国農業協同組合中央会を農協法に基づかない一般社団法人に移行させる時期を当初の改革案より半年遅い、平成31年9月末までとすることを決めました。
 政府は先月、政府・自民党でまとめた農協改革案に基づいてJA全中が地域の農協に対して行う会計監査の権限を撤廃して、JA全中を農協法に基づかない一般社団法人へと移行させるなどとした関連法案を来月3日までに国会に提出することにしています。19日、自民党本部で農協改革に関する党の作業チームの会合が開かれ、農林水産省が関連法案の骨子を示しました。
 それによりますと、先月決めた政府・自民党の改革案では「平成31年3月末まで」としていたJA全中や各都道府県の中央会の新しい組織への移行期間を「平成31年9月末まで」と半年延ばしました。農林水産省は、農協の一部には会計年度が6月末までのところがあり、会計の承認を得るのに9月ごろまでかかることから、すべての農協が全中による監査を受けられるよう、移行期間を延ばしたと説明しています。
 出席した議員からは特に異論は出ず、関連法案の骨子は了承されました。 』


 JA全中は、新聞では「全農協を統制している」かのごとく書かれていますが、実際にはそんなことはなく、やっているのは地域農協に対する会計監査と業務監査です。別に、経営「指導」をしているわけではないため、マスコミなどでまことしやかに語られる、
「JA全中があるため、農協や農家が新しい事業をできない」

 というのは、明確に嘘です。と言いますか、新規事業開発だろうが、世界市場への売込みだろうが、農協も農家もやっているところはやっています。


 JA全中が「農協の親玉」のように思われているのは、各地域農協とのコネクションがあるため、例えば「TPP反対運動」「反農協改革」などでは旗振り役を務めるケースが多いためではないかと思います。要するに、TPPや農協解体を進めたい勢力にとって、反対派を統合する全中は非常に「邪魔」なのでございます。


 というわけで、このたび、安倍政権はJA全中を農協法から切り離し、社団法人化し、地域農協に対する会計監査や業務監査の業務も「改革」されることになりました。JA全中の監査権は廃止され、地域農協は監査について既存の監査法人か、新設される全中系監査法人と、監査する機関を選択することになりました。

 要は、安倍政権は全中が持つ「政治力」を削ぎたかったのだと思います。


 さて、農協改革の真の目的は、あるいは「標的(ターゲット)」は、実は全中ではありません。全中は農協改革をする際に「邪魔な政治力を発揮する」からこそ、最初に農協から切り離されることになったに過ぎません。

 農協改革の真の目的は、大きく二つあります(他にもありますが、最も大きな二つのみ、取り上げます)。


 一つは、金融部門、特に「共済」の保険市場です。

 アメリカ商工会議所のホームページには「JAグループは、日本の農業を強化し、かつ日本の経済成長に資する形で、組織改革を行うべき」という、農協改革に関する指示命令意見書が掲載されています。


 指示命令意見書で、アメリカ商工会議所は、農林中金とJA共済について、「民間の銀行・保険会社とイコールフッティングせよ」と要請しています。要は、各種の法的に担保された優遇措置を廃止せよ、という話です。


 さらに(アメリカ様に)問題視されているのは、農協の金融サービスを「農家の組合員(正組合員)」以外が利用していることです。すなわち、准組合員(JAに出資金1000円払えばなれます)及び組合員以外の利用、すなわち員外利用です。


 アメリカ商工会議所の資料によると(よく調べてあります)、農協の金融事業利用者983万人のうち、准組合員は516万人になります。実は、農協の組合員の過半数は正組合員(農家)ではないのです。さらに、員外利用については、共済の掛け金の2割まで、農林中金は25%まで認められています。


 というわけで、アメリカは准組合員や員外利用を制限せよ、と、日本政府に指示命令要請し続けてきました。アメリカの意を受けた「日本の」規制改革会議が、
「准組合員利用料の規制は、数値基準も明確にした上で極力速く導入するべき」
 と、提言。一時は、准組合員利用を正組合員の二分の一に制限せよなどと、無茶苦茶を言っていました。実際に准組合員の利用を制限すると、農協の経営基盤が崩壊するため、農協側はパニックになります


 結果的に、今回の農協改革では「JA全中を社団法人化し、監査権を廃止する」ことを農協側が受け入れ、准組合員や員外利用については、五年後に再検討されることになりました


 すなわち、農協サイドは五年間の猶予と引き換えに、政治力の中心である全中の切り離しを呑まされてしまったというのが、今回の農協改革の真相です。


 もっとも、上記の共済問題は、「国境を越えた金融ビジネスの市場の奪い合い」という話になります。要は、アメリカの保険会社が日本の共済市場を「欲しい」というだけの話で、
「それは確かに問題だと思うが、さすがに『国家存亡の危機』というのは大げさでは・・・?
 という感想を持たれた方がいるかも知れません。


 その通りです。日本国家存亡の危機に繋がる「農協改革」は、上記の金融問題ではなく、他にあるのです。
 というわけで、明日に続きます。


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