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『自然失業率①』三橋貴明 AJER2014.12.16(3)

http://youtu.be/AjgzRylJOYk

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 三橋経済塾第四期「経済時事」、開講しました。


 第一回目の講義は、1月18日(日)です。ゲスト講師も次々に決まっておりますので、塾生の方は「対面講義のスケジュール及びゲスト講師 」で確認して下さいませ。


 さて、年明けに取り上げようと思っていたのですが、重大事件が相次ぎ、遅れていた話題です。すなわち、イギリスのEU離脱問題


英首相 EU離脱賛否の国民投票前倒しも
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150105/k10014433671000.html
 イギリスのキャメロン首相は、EU=ヨーロッパ連合からイギリスが離脱すべきか賛否を問うため実施を公約している国民投票について、2年後としている今の計画を可能であれば前倒ししたいという考えを明らかにしました。
 イギリスのキャメロン首相は、EUの統合がさらに進んでイギリスの主権が制限されることに反対しており、EUと改革に向けて交渉する一方、国内では2年後に国民投票を行ってEU離脱の賛否を問うと公約しています。
 キャメロン首相は4日、イギリスの公共放送BBCのテレビ番組に出演し、ことし5月の議会選挙後も政権が継続した場合、「国民投票を早められるのであれば、喜ば
しい」と述べ、国民投票を前倒ししたいという考えを明らかにしました。
 キャメロン首相は、EUがイギリスの主張を受け入れて改革を実行すれば、EUにとどまることがイギリスの利益になると説明する一方、「求める成果が得られなければ、いかなることも排除しない」と述べ、EUとの交渉の結果次第ではEU離脱も選択肢だと示唆しました。(後略)』


 混乱している方が(政治家ですら)いらっしゃるのですが、欧州連合(EU)とユーロは関係性は深いですが、別の組織です。と言いますか、EUとは欧州委員会で、ユーロはECBと理解すると分かりやすいでしょうか。


 大雑把に書くと、欧州連合という「緩い政治的統合」の組織があり、その多くの国々が「きつい金融的統合」であるユーロにも属しているわけです。EUが、
「完全なる財政の統合、金融の統合」
 を実現できていたならば、まさに欧州合衆国の誕生ということで、現在の混乱は起きていなかったでしょう(代わりに、別の問題が起きていたでしょうが)。


 また、EU諸国の多くは「国境を越えた移動の自由」を認めるシェンゲン協定に加盟しています。欧州のグローバリズムは、EUで関税自主権(モノの移動の制限)を撤廃し、加盟国間の制度の違いを無くし、サービスの輸出入を容易にし、資本の移動の自由も保障。さらに、シェンゲン協定で人の移動を自由化。さらに、ユーロで通貨を統合することで、欧州合衆国を目指すという「社会実験」でした

 EU、シェンゲン協定、そしてユーロに加盟していれば、一応、加盟国間で「モノ(サービス)、ヒト、カネ」という、いわゆる経済の三要素の国境を越えた移動が自由化され、さらに通貨が統一という事になります。すなわち、見た目上は「日本国内」と同じような環境になるわけです。


 元々、EUの前身である欧州経済共同体は、ローマ条約(1958年発効)において、加盟国間で人、物、サービス、資本が自由に移動できる共同市場を創ることが目指されたものです。半世紀以上も昔から、明確に「グローバリズム」の定理に従い、欧州共同市場の設立を目指していたわけですね。


 現在の欧州は、国際協定で「欧州合衆国」を目指すという実験を推進したため、各国の民主主義と衝突し、恐ろしくややこしい状況になっています。


 例えば、アイルランドはEUとユーロに加盟はしていますが、シェンゲン協定には加盟していません。
 スイスは、EUにもユーロにも入っていないのですが、シェンゲン協定は加盟しています。
 そして、イギリスはユーロもシェンゲン協定も加盟していませんが、EUには入っています。
 現在、ギリシャの離脱問題が騒がれているのは「ユーロ」の話であり、EU離脱ではありません。
 イギリスはシェンゲン協定には加盟していませんが、EUには加盟しているため、人の移動の自由についてもほとんど制限していません(シェンゲン協定に加盟していないため、国境検査はやっていますが)。


 結果的に、イギリスは「移民が急増している」と、EUに対して制限の強化を求めています。もっとも、EUの改革には「全加盟国」の合意が必要です(ユーロも同じ)。一カ国でもイギリスの提案に反対すると、「イギリス」が移民を制限することができないのです。


 まさに、国際協定による主権の喪失です。


 ついでに書いておきますと、EUは加盟各国の「予算編成」にも嘴を挟んできます。
「この予算は多すぎる。やり直し!」
 と、EUが予算を「認めない」ため、フランスやイタリアの予算編成が遅れたりするわけです。EU加盟国は財政主権の一部もまた、喪失しているわけでございますね。


 しかも、ドイツはEU加盟国に、ご自慢の「財政均衡主義」を押し付けようとしています。イギリスは、そのたびに「主権の侵害だ」と反発し、署名を拒否する行動に出ていますが、「主権国家」である以上、当たり前だと思います。

 というわけで、イギリスは「主権」を取り戻すために、EU離脱の賛否を問う国民投票を2017年に予定しています。しかも、イギリスでは例により反移民・反EUの独立党(UKIP)が急速に支持を伸ばしています。2014年5月のEU議会選挙において、UKIPはイギリスに割り当てられた73議席中24議席を獲得し、第1党に躍り出たのです。国政でも、保守党を離党してUKIPに移った議員2人が補欠選挙で勝利するなど勢いを増しています。


 というわけで、キャメロン政権としては「EUから離脱を問う国民投票」の前倒しをすることで、UKIPに票が流れることを防ごうとしているわけでございます。


 さて、年明けから「国際協定」で主権を喪失した欧州各国の混乱を取り上げていますが、理由はもちろん、我が国も「国際協定による主権の喪失」であるTPPの交渉を継続しているためです。


 例により、TPPについては「2015年は正念場だ!」「今年中に妥結が必要だ!」などと、マスコミや「識者」が煽っていますが、彼らには是非とも、TPPの進化形であるEU・ユーロが「なぜ、混乱に陥ったのか?」について、説明して欲しいと思うわけです。国際協定による主権の喪失は、回復が非常に困難であると欧州諸国が示してくれている以上、我が国は「TPP交渉離脱」について議論するべき時期であると確信します。

 国際協定による主権の喪失は、御免こうむります。


「国際協定による主権の喪失は拒否する!」に、ご賛同下さる方は、

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