サバイバル 後編

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チャンネルAJER 更新いたしました。今回のテーマは「日本の公共事業の現実」です。

『日本の公共事業の現実①』三橋貴明  AJER2012.7.10(3)
『日本の公共事業の現実②』三橋貴明  AJER2012.7.10(4)

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8月30日(木)18時30分-大阪「三橋貴明が語る!政治・経済の真実『メディアの大罪』 」講演会開催

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 本日のエントリーは昨日の「サバイバル 前編 」の続きです。本日分だけを読んでもわけが分からないと思いますので、昨日分から続けて読むようにして下さいませ。


 医療サービスを評価する基準に「コスト・クオリティ・アクセス」というものがあります。日本語にすると、「費用・品質・アクセス」です。アクセスだけがカタカナのままなのは、日本語で短く表現するのが難しいためです。


 医療サービスのアクセスとは、「国民が必要なときに、必要なサービスを受けられること」を意味しています。具体的には、「近所に病院が存在し、かつ健康保険でどの病院でも治療が受けられること」になります。その国の病院が「安価に、高品質に」医療サービスを提供していても、国民がアクセスできない(病院が近所にない。保険適用を受けれない、など)のでは意味ありません。というわけで、医療サービスは「市場原理主義」が好む費用及び品質のみならず、「アクセス」という要素も評価対象の一つにしているわけです。


 さて、昨日の復習ですが、日本の「地場の建設サービス」は、「いつ、どこで起きるか分からない」自然災害が発生しても国民が生き残るために、すなわちサバイバルのために必要です。だからと言って、政府が助成金で建設企業を存続させ、技術やノウハウが蓄積されないのでは意味がないため、「公共事業」という存在があるわけです。


 とはいえ、現在の日本は一般競争入札が主流(そもそも法律でそうなっている)になってしまい、条件を満たせば「誰でも」公共事業に応札出来てしまいます。そうなると、価格競争が激化し、公共事業の品質が維持できなくなる可能性があるため、かつての日本人は「指名競争入札」により、建設企業に公共事業の品質を高めるインセンティブを与えていました。


 ところが、指名競争入札「のみ」では、元々のサバイバルのために必要な「地場の建設産業」を存続させるという目的を達成することができません。というわけで、落札業者を指名競争入札の業者間で「相談して、合意」し、何とか全建設企業が生き残れるにしましょう、ということで続けられてきたのが「談合」というわけです。


 予め書いておきますが、政治家や公務員が談合の結果を左右し、見返り(票、金など)を得るというのは、これは「汚職」という犯罪行為です。政治家の汚職は「国民」が監視し、罰しなければなりません。


 しかし「談合」というシステムそのものは、先の医療同様に「コスト・クオリティ・アクセス」の「アクセス、」すなわち「緊急時に地元に建設産業があること」を維持するために日本人が編み出した知恵に過ぎないのです。何しろ、緊急時に建設サービスの「アクセス」が低いと、国民が生命を失う可能性があるわけです。
 
 これが気に入らなかったのが、アメリカです。まあ朝日新聞とかはイデオロギー的に気に入らなかったのでしょうが、アメリカも「談合」というシステムがある限り、日本の公共事業の市場に参入することができないため、何とかこれを廃止させようと「政治的」に動いてきました。


 アメリカは1988年以来本格化した日米建設協議で、、
「外国企業の参入等による国際化の進展、建設市場における公正な競争の確保の要請」
 を求め、日本政府はそれに応じた制度改革を始めました。


  アメリカは単に、自国の建設会社(ベクテルなど)に日本の公共事業の市場を与えたかっただけなのですが、この時に利用された概念が「市場原理主義」です。日本の指名競争入札や談合は「市場原理主義」に反する(そりゃあ、反していますが)として、アメリカは繰り返し日本に独占禁止法の強化を求めました。「なぜか」日本のマスコミもアメリカの尻馬に乗り、日本の指名競争入札や談合、さらには公共事業や建設産業そのものまでを攻撃始め、日本国民は建設サービスへの「アクセス」を次第に失っていきます。


 アメリカは例により「オープン」に、日本に談合廃止を求め続けます。例えば、アメリカ大使館には以下の資料が堂々と掲載されています。


米国政府は日本の公共工事市場の障壁に失望 (1999年1月29日) [ワシントンD.C.]
http://japan2.usembassy.gov/j/p/tpj-j043.html
 ウイリアム・M・デーリー商務長官は、日米建設協定に関わる協議の際日本側から出された二つの提案は、米国企業の日本建設市場へのアクセスに多少は貢献するだろうが、米国企業にとって重大な障壁は未だに残されていると、語った。また、「我々は、日本側の提案にも関わらず、米国企業は日本の建設市場ではビジネスの機会がひきつづき十分に提供されていないことに非常に失望している」とも語った。
 デーリー商務長官は、「我々の企業は、その卓越した設計や建設工事の専門的知識を国際的にも評価されているし、日本市場に提供できる多くのものを持っている」と述べた。(中略)
 米国政府は米国企業の日本建設市場のアクセスに著しい進展が見られるまで注視しつづけるつもりである。(後略)』


 アメリカは堂々と「アメリカ企業の日本建設市場へのアクセス」という言葉を使っていますが、要はそういうことなのです。アメリカ企業の「アクセス」のために、日本国民の「アクセス」を犠牲にしろという話で、この辺の分かりやすさは個人的には好きだったりします。


 ここまで堂々とアメリカが「自国企業のアクセスを高めろ」を訴えている状況で、日本政府が「日本国民のアクセス」を犠牲にして、独占禁止法を強化し、指名競争入札や談合を不可能にしていったわけで、まさに日本側の問題なのです。別に、アメリカの陰謀とかそういう話ではありません。


 TPPにも「政府調達(公共事業など)」や「競争政策(独占禁止法強化)」という項目がありますが、具体的な中身は裏にある日米経済調和対話を見れば分かります。


『日米経済調和対話(アメリカ側の要求事項)
http://japanese.japan.usembassy.gov/j/p/tpj-20110304-70.html
(前略)競争政策(中略)
談合:特に調達担当職員の利益相反を排除するための規定の強化や、官製談合を排除する取り組みの促進、公取委の課徴金減免制度の適用が認められた企業に対する行政措置減免制度の拡大などの措置を通じて、政府調達における競争を促進し談合を排除する。(後略)』


 市場競争、大いに結構でございます。
 が、「建設サービス」についてまで市場競争をひたすら促進し、日本国民のサバイバルのために必要な「アクセス」を喪失させていって、それが本当に正しいのでしょうか。医療同様に、建設サービスに緊急時にアクセスできないことは、冗談抜きで国民の生命に直結します。


【図 日本の公共事業費の推移(単位:兆円)】
三橋貴明オフィシャルブログ「新世紀のビッグブラザーへ blog」Powered by Ameba
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_38.html#Jigyo


 バブル崩壊。橋本政権以降の公共事業の削減。そして独占禁止法の強化により、日本の地方から建設産業が消滅していっています。こんな状況で、今この瞬間にも起きるかも知れない次なる自然災害から、国民は自らの生命を守ることができるのでしょうか。


 一部の野党が公共事業について拡大政策を訴えはじめ、例により「バラマキだ!」「腐敗の温床だ!」といった国民の生命を軽視する批判が増えてきています。朝日新聞などは「日本を成長させない」ために言っているのでしょうが、少なくとも「市場原理」に基づき公共事業や談合を批判する人は、
「建設サービスのコスト・クオリティ・アクセス」
 をどのようにバランスさせるのか。「アクセス」をどのように維持するのか、談合に代わる代替案を出さなければならないと思うわけです。

 それができないというのであれば、独占禁止法は元に戻すべきでしょう(アメリカや市場原理主義者や朝日新聞がぎゃあぎゃあと文句を言うでしょうが)。何しろ、ことは国民のサバイバルの問題であり、経済合理性の追及よりも優先順位が高いのです。


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