三橋貴明診断士事務所を開設しました。お仕事のご依頼はこちらから http://takaaki-mitsuhashi.com/
 Voice3月号に、筆者(紙媒体)初のシミュラフィクション「1ドル70円台の日本経済」が掲載されています。
 http://www.amazon.co.jp/dp/B001QCGI1Q/
 また、本シミュラフィクションをお読み頂いた方は、是非とも以下のPHPのメールアドレスまで、感想を送って下さいますようお願いいたします。
PHP研究所Voice編集部 voice@php.co.jp

 「麻生内閣の国民対話 ~強く明るく これからの日本~」で内閣府が意見を募集しています。
http://www8.cao.go.jp/taiwa/theme20090219.html
 本ブログで知ったこと、気がついたことを参考に、経済対策、マスメディア対策などなど、応募して頂くと大変嬉しいです。

 唐突ですが、昨日、経済産業省の依頼で、同省で日本経済に関する講演をしてきました。タイトルは特に決めていなかったのですが、アジェンダは以下の通りです。

 ■日本は外需依存国家という誤解
 ■円安になれば日本輸出製造業は助かるという誤解
 ■日本の国家モデル
 ■日本は財政破綻するという誤解

 要は、これまでの日本の国家のモデルは「日本は外需依存国家だ!」「円安こそが日本のためだ!」「日本は財政破綻する(から政府支出を増やすな!)」といった様々な誤解、いや、むしろ空気の中で育まれてきた。それがサブプライム危機を切っ掛けに成立しなくなり、日本は新たなモデル構築を迫られている、といった内容です。
 この種の講演であればいつでもお引き受けいたしますので、ご興味がある方は一番上の「三橋貴明診断士事務所」までご連絡ください。
 もちろん、わたしの講演なので数値データを前提にした(面白おかしい)話が中心になります。先述の、主にマスメディアにより醸成された「空気」を覆すには、数値データに基づいた「事実」を活用することが、最も適切だと思っています。
 実際、日本人の「誤解」は数値データに裏付けられたものではないので、数字を出せば一発でひっくり返せます。
「円高は日本経済にとって良くないことだ!」
どうして?
「日本は輸出国だからだ!円安のほうが良いに決まっている!」
じゃあ、日本の輸出産業は日本経済全体、例えばGDPの何%なの?
「・・・」
 これだけの話です。「何%?」と聞かれて、すらすら数字を答えられる人は、まずいません。もしもいたとしたら、その人は日本の輸出産業がGDPに占めるシェアを知っている、すなわち日本が外需依存国でも何でもない事実を知っているはずです。
 この種のやり取りを、きちんとしたシミュラフィクションに仕上げたのが、冒頭の「1ドル70円台の日本経済」というわけですね。マスメディアに染まって日本経済破綻論、悲観論を喚きたてる人たちには、この「数字を聞く」という手法が極めて有効です。
 あるいは、日本の財政問題について言えば、
日本政府はお金を使いすぎだ!だから経済成長率が落ちるんだ!
 といった意味不明な主張を展開するマスメディアもあります。実態は全く逆で、日本は「公的債務」こそ確かに増えていますが、「政府の支出」は全く増えていません。
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_16.html#Seifusisyutu
 「政府の支出」はGDPの「公共投資」や「政府最終消費支出」に当たりますので、単純に言うと政府の支出を増やせばGDPは最低でもその金額分成長します。実際には乗数効果があるので、もっと増えますが。
 GDP(支出面)=民間最終消費支出(個人消費)+総固定資本形成(公共投資、住宅投資、設備投資)+政府最終消費支出+在庫変動+純輸出
 恐ろしいことに、1994年から2006年に掛け、日本の政府支出(政府最終消費支出+公共投資)はほぼ横ばいを続けているのです。同じ期間、公的債務のみがなぜか増え続けています。ちなみに日本以外の主要国は、政府支出と公的債務は同じペースで増加を続けています。
 なぜ、日本のみが公的債務と政府支出の増加率に差異が産まれているのでしょうか。というよりも、政府支出が増えていないにも関わらず、公的債務が増えているのはなぜでしょうか。ちょっと考えただけでも、二つ理由を挙げることができます。(他にもあるとは思います。)

? 政府支出が抑えられ、GDP成長率が低下した結果、税収が減少し、国債発行額が増えた
? 円高防止の為替介入(主に2003年と04年)のために、政府短期証券を発行し、円安誘導を行った(政府短期証券の残高は約100兆円)

 以前も書きました、円高防止の為替介入を行うと公的債務(マスメディア風に言うと、「政府の借金」)は増えます。しかし、GDPは直接的には増えません。それはもちろん、円安により輸出は増えるかも知れませんが、所詮は世界の需要次第です。現在のような需要縮小期には、通貨が暴落したところで輸出は増えません。
 もしも日銀が為替介入に使った100兆円を政府支出として国内に使っていたら、最低でもGDPが100兆円増えます。さらに乗数効果が働くわけで、水物の輸出よりも確実にGDP成長率を高めることができたはずです。
 しかし、日銀が為替介入を行わない、すなわち円高が進行することは、「一般の日本国民」以外の誰かにとっては、大変都合が悪かったのです。
 果たして誰にとって都合が悪かったのか。その答えについては、近々に扶桑社から出る新刊「崩壊する世界 繁栄する日本 『国家モデル論』から解きあかす」までお待ちください。すでに筆者は校了していますので、まもなく発売日等をお知らせできると思います。
 また、GDPと公的債務、政府支出などの関係について詳しく知りたい方には、廣宮氏の「国債を刷れ!」をお奨め致します。

国債を刷れ!「国の借金は税金で返せ」のウソ  廣宮孝信著(彩図社)
http://www.amazon.co.jp/dp/4883926788

後編に続く
http://blogs.yahoo.co.jp/takaakimitsuhashi/24640775.html