8月28日、有ってはならない事件が起こりました。

皆さんもご存知の通り、少年院を仮退院した少年が、更生保護施設から失踪し、女性を殺害した事件です。

私自身、保護司という立場で、この事件について、この2週間、できる限り調べました。

関係省庁、地元の津保護観察所、事件管轄の福岡保護観察所、全国保護司連盟、本家の法務省保護局などへ電話しました。

「更生保護行政」について、今回の事件と関連付けて、いろいろな質問・状況などをできる限り詳細に聞きました。

悲惨なあり得ない事件ですから、私自身、保護司という立場ではありますが、人としても、真摯に向き合う必要性を感じ

私の意見などを書きたいと思います。(あくまでも私の個人的意見です)

 

事件が起こってから2週間が経過しました。しかし、私の知る限り、関係者(少年院担当者、担当観察官、担当保護司、更生保護委員会、法務大臣など)からは、一切コメントが出ていません。

たとえば、教師の不祥事などがあれば、教育委員会などが、会見を開き

「すいませんでした・・・」と謝罪します。

しかし、善良な21歳女性が命を落としたにもかかわらず、何らコメントすらありません。

私は「保護司」という立場で、関係省庁に電話していますが、新聞などのマスコミの報道以上の情報は

つかめません。この状況に大いに疑問を覚えているのが現状です。

 

いったん、話を切りますが、私が保護司になるまでの経緯、手続きを書きます。

保護司になろうという人は少ないのが現状です。

保護司は全国で46763人います。昨年2019年、現役保護司4000人を対象にアンケート調査がなされ、

自ら進んで保護司になった者は4000人のなか、わずか62人

2%にも満たないのが現状です。

ほとんどの者は、現役保護司の方などからの勧誘というものです。

 

私は自ら保護司になった絶滅危惧種ですが、その手続きは大変なものでした。

まずは、津保護司会に電話しました。欠員がある返答いただきましたので

「保護司になりたいのですが・・・」と申し出ました。

ここから、手続きが始まりました。

 

① 地元保護司の面接

  私の住んでいる地域の先輩保護司による面接

② 津保護司会役員面接

 津保護司会会長並びに主要役員数名による面接

①,②をクリアーしましたので、正式手続きに入りました。

③ 履歴書などの書類提出、選考

  津市長(居住地の首長)、津保護観察所長、津保護司会会長、監督官庁に提出する書類です。

  履歴書、地域での活動(自治会長など、地域に貢献したかどうか、市の審議会などの委員になったことがあるか、表彰を受けたことがあるかなど)など多岐にわたる多くの書類です。必ずしも地域での役職などは必要ではないでしょうが、様々な書類を考慮し、保護司の資質があるかどうかを見極めていると私は感じました。

④ 法務大臣の委嘱

  正式に令和元年6月30日に法務大臣の委嘱を受け、7月1日より2年間の委嘱を受け保護司となりました。

この間、5か月程度がかかりました。更生保護という重大な役目がありますから、厳しい審査が行われるのは当然です。

 

保護司法により保護司には次の条件が求められますので、

保護司であるということは

津市長、保護司会長、津保護観察所長、そして、法務大臣に認めていただいたわけですから

本当に身が引き締まりました。

 

・人格及び行動について、社会的信望を有すること

・職務の遂行に必要な熱意及び時間的余裕を有すること

・生活が安定していること

・健康で活動力を有していること

 

保護司の主要な役割は2つあります。

①保護観察

犯罪や非行をした人たちと定期的に面接を行い、更生を図るための約束事(遵守事項)を守るよう指導するとともに、生活上の助言や就労の手助け等を行います。

②生活環境の調整

少年院や刑務所に収容されている人が、釈放後にスムーズに社会復帰できるよう、釈放後の帰住予定地の調査、引受人との話合い等を行い、必要な受け入れ態勢を整えます。

 

ここで話を戻します。

刑務所を裁判で決まった刑期よりも早く出てくるのが仮釈放、少年院を早く出てくるのが仮退院といいます。

仮釈放・仮退院とも、必ず、事前に生活環境の調整が行われます。

刑務所や少年院から出ても、受け入れ先がないと生活ができないからです。そのため、保護観察官と調査を依頼された保護司が、生活環境調査をします。実際に受け入れ先を訪問し、受け入れ先の環境、しっかり更生に向けた生活ができるかどうか、家族の協力が得られるかなどを調べます。もちろん、必要があれば、保護観察官が主体となり、保護司が本人とも刑務所・少年院に出向き面接することもあります。また、保護司は受刑者などと手紙のやり取りもできます。保護司は調査報告をし、保護観察官が精査して、全国8か所にある地方更生保護委員会で、仮釈放・仮退院が決定します。

今回の福岡事件15歳少年の場合は、仮退院と考えて良いでしょう。少年の場合は例外を除き仮退院ということです。

 

毎日新聞によると、少年は幼いころから児童福祉施設で暮らしていて、施設の職員やほかの児童に暴力を振るっていたということです。

その暴力で少年院送致になったのだから、施設で面倒見切れず、少年院送致にしなければならないほど酷かったのだから、極悪非道な面もあったと思います。仮退院させるのは、退院後の居場所が必要だが、親は引き受けない、こういう状況で引き受ける児童養護施設はなかなか見つからなかったと推測します。

そのため、更生保護施設(仮釈放、仮退院後に行き場のない人が最長半年間生活できる居場所、半年の間に仕事や住む場所を探す)が、引きうけることになったと推測します。複雑な事情があるだけに、無理せず、せめて義務教育終了までは少年院で見守ればよかったと思いますが。それからでも決して遅くはなかったと私は思いますが。

 

また、あくまでも推測ですが、中学生で仮退院が8月26日ということは、更生保護施設から地元中学校に通わせる意図があったと思います。9月から2学期から学校という流れであったのではと推測します。中学校との調整も大変な苦労があったと推測します。そして、悲惨な事件が起こってしまったということです。

 

ここで問われるのが、人を見る力です。

皆さんご存知の通り、私は元教師でした。教師時代は極悪非道の中学生と相対してきました。更生なんて考えられない、次元が違うことを体験してきました。

一生懸命面倒を見てくれている児童福祉施設の職員や一緒に生活している児童に手に負えないほどの暴力を振るうなど、極悪非道そのものです。だからこそ、少年院送致になった。少年院送致になるほどですから想像を絶する酷さです。本当に反省しているのか、仮退院で社会に出していいのか、慎重に判断すべきと思います。まさに人を見る力が必要になります。

 

私自身、この事件以来、しっかり眠れていません。もっとも、保護司は指名を受けても、担当を受けるかどうかを決める権利はあります。断っても良いのです。保護司研修で質疑応答の時間がありましたので確認済みです。無理しないでやることが肝心ですからね。

被害者は本当に悲惨です。加害者ではなく、被害者に寄り添う保護司ではいけないのだろうかと思っています。

 

実際「被害者担当保護司」という制度があり、全国の保護観察所に2~数名の被害者担当保護司がいますので、被害者の心情に寄り添うことに特化した保護司になっていくこともできますので、今後の方向性をしっかりと考えねばと思っています。

 

この2週間、初任者研修でいただいた保護司関連の膨大な資料を読み漁り、質問事項や要望意見を、詳細に伝えてきました。

その中で、違和感をぬぐいきれないのは、いまだに、私の知る限りでは、関係者が、この悲惨な事件に対して、コメントとりわけ、謝罪などを全く発していないことです。私が事件を起こした少年の担当保護司であったならば、誰が何と言おうと、被害者女性の葬儀に駆け付け、土下座して詫びます。蹴られようがののしられようが何が起きようとかまいません。記者会見でも何でも応じます。

「本当に申し訳ない、お詫びのしようもない。2度とこのような悲惨な事件が起きないように人生をかけて取り組みます。それが唯一私ができることですから、本当に申し訳ありませんでした」

 

事件を起こした少年が一番悪いのは当然ですが、

担当した少年院関係者・保護観察官・保護司・更生保護委員会、そして、法務大臣にも責任はあると思います。

役職の前に人として心ある対応をしていただきたいと切に願います。

今の対応では、被害者が浮かばれません、やられ損ではいけないと思います。

また、国民の代表である国会議員も何もコメントなし、これでは国は良くなりませんね。

 

京都アニメ事件、今回の事件、更生保護を担う保護司である私たちにさえ、詳細は開示されていません。

担当刑務官・少年院関係者・保護司・保護観察官・更生保護施設職員の方々、口を開くということは大変なことでしょうが、どうか、よろしくお願いいたします。

 

長い審査を経て、保護司となり

法務大臣にまで

「人格及び行動について、社会的信望を有する」

と認定していただいているのに、何ら開示されないのには納得いかないですね。保護司をどうか信用してください。

我々保護司を信用して、2度と悲劇を繰り返さないために、事の詳細を開示してほしいと願います。

何も知らされないのならば、保護司の存在意義はありません。

 

起こってしまったことは元には戻らない、しかし、これを教訓として、2度と将来起きないようにみんなで知恵を出し合いたいのに。

何のために保護司になったか、本当に無力ですね。この仕組みを、やり方を変えねばならないですね。

そのためには、もはや、法務大臣に、自らなって改革するしか、道はないのでしょうかね。

法務大臣は、国会議員でなくてもなることができますからね。一本釣りしてくだされば、なんて思っています(本気です)

 

あくまでも私個人の見解です。愚痴ばっかりになってしまいましたが、長文を最後まで読んでいただき、心から感謝いたします。ありがとうございます。

とにかく私は今できることを考え、行動していきたいと思っています。