太極拳と右脳開発 | 健康・護身のために太極拳を始めよう

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太極拳は、リラックスによるストレス解消、血行改善、膝・腰強化、病気予防などの健康促進効果以外に、小さな力で大きな力に勝つような護身効果もある。ここでは、中国の伝統太極拳の一種である呉式太極拳の誕生、発展およびその式(慢拳・快拳・剣・推手)を紹介する。


先日 呉式北派の重鎮、故・王培生大師の入室弟子の高壮飛大師の北京自宅を訪ねた。これまでに東京在住の高師の長男、友人の高小飛武道館長の自宅で2回ほど会った。今回の意外な収穫は 「以心行意、以意行気、以気運身」の太極拳の修行方法は右脳の開発に資することを教えられたことだ。

人間の脳は左と右が異なる役割を持っている。左脳は言語と運動を司っているのに対し、右脳は視覚・イメージ想像と潜在意識の統率に関係している。又、左脳は後天的な情報を主とするが、右脳は先天的な情報を主とし、「先天脳」とも呼ばれている。右脳の開発は無限な可能性を持っているが、 左脳に対する欠かせない条件がある。即ち、左脳が「静」の状態でなければ 右脳の開発が十分にできないことだ。太極拳の諸要領の中に「静」が極めて重要だということはこの右脳の特性、ひいては その潜在能力の発揮に関係している。 左脳と右脳のこのような調合は太極拳にとって必要だということだ。 我々はなぜ瞑想する際に目を瞑るか、なぜ冷静時に名案が浮かぶかもそこに答えが見つかるのだ。また所謂 「動中有静、静中有動」(「動きの中に静けさがあり 外形上の静止状態に動的なものがある」の意)のように 右脳による視覚(目線)・イメージ想像(心法)の下で左脳による太極拳の外形動作を行う。太極拳の心→意→気→勢→形のメカニズムも脳のこのような働きによる結果だと考える。


脳科学者の茂木先生が 右脳と左脳が活発に活動すると色が赤くなるような実験をテレビで披露されるのを見たとき、太極拳の修行時もきっと同じような結果が出るだろうと思った。可能なら本当に実験してみたい。

筆者は、これまでに《形の太極拳》について議論を展開したが、太極拳の右脳開発効用の原理を考えれば、右脳によるイメージ想像 (心→意→気→勢の心法)で左脳による外形動作を促すように太極拳の修行を続ければ 左脳と右脳の両方の運動となり、太極拳の健康促進効果がより一層高くなろう。