昨年、加工品を製造、販売する個人に対しても衛生管理を徹底して保健所の許可を取るように法整備された。これにより、道の駅など地元密着型の直売店に加工品を卸しているおばあちゃん達の多くが廃業を余儀なくされた。漬物におはぎなど、そして山菜の保存品など多岐にわたる。どれもこれも人気の商品で、道の駅では後継者不足解消のため、スタッフがあばあちゃんに弟子入りしたという話も聞いた。
『いぶりがっこ』をご存知だろうか。秋田県の内陸部に残る郷土の漬物で、近年では全国にも知れ渡る名物だ。大根を塩漬けにし、発酵したら煙で燻(いぶ)して香りをつける。コリっとした歯応えの立った漬物を頬張ると燻製の香りに包まれる。ご飯にもよし、おつまみにもよしで万能である。
秋田県横手市でいぶりがっこ作りの名人と言われるおばあちゃんがいる。高橋朝子さんは80歳。いぶりがっこを道の駅などで販売して20年になるが、きっかけはお裾分けをした相手からの「もっと作って売って欲しい」の一言。大会では金賞も獲っている、受賞の常連だ。
しかし、昨年施行された衛生法により岐路に立たされる。2年以内に許可を取れなければもう販売できなくなる。反面、整えようとすればそれなりの費用がかかる。そんな中、背中を押してくれたのは「また楽しみにしています」という、やはりお客さんからの手紙だった。
朝子さんは決意して加工場の衛生管理を整える。今年作るのは3000本のいぶりがっこ。つけ始めてからの高温も乗り越えて大会にも出品。残念ながら自身は受賞を逃したものの、教え子が2位に輝いた。
法整備が必要なのもうなづける。しかし、「あのおばあちゃんしか作れない」郷土の味もある。そのおばあちゃんの味を食べたい人も。
良い悪いではない。残念だなと思う。