中森明菜さんの「難破船」
たかが恋なのです。
たかが恋なのに、
たかが恋人と別れたことで、
悲しみの海に溺れ、寂しさの海に漂い、
心ごと沈没し、私は、まるで難破船のようだと、
愛を失った人間の心情を難破船に例えた歌です。
1つの愛を失った人間の、
悲しくて寂しくてどうしようもない、
行き場のない感情が表現された歌の世界です。
作詞作曲された加藤登紀子さんの感性が光る歌です。
中森明菜さんの、少しハスキーで、
儚さを感じる歌声による歌唱と表現で、
悲しさ、寂しさ、切なさを感じます。
歌に感情を乗せているのか、
今にも壊れそうな、とても辛そうな表情で、
今にも泣き出しそうな表情で、
時には、実際に涙を流しながら歌われるので、
薄幸な表情とともに、
歌の世界観の悲愴感が増します。
プライベートでの恋愛が、
ままならなかったことも、
噂で聞いたことがあるので、
現実での感情が、
歌の世界にリンクしているように響くのか、
聴き手としても、なおさら、
より、切なく、哀しく、
聴こえるのかもしれません。
賛否両論分かれるカバー曲ではありますが、
林部智史さんが熱唱する難破船も、
また切なさや悲しさが伝わってきて、
私個人的には惹かれました。
林部さんの歌唱を聴いていると、
この歌に限らず、
心に刺さるような、
胸が締め付けられそうな感覚に陥り、
聴いていて胸が苦しくなるのですが、
哀愁漂う世界観の歌が、
林部さんの声質に、
とても合っているように感じました。
歌唱力、表現力に長けた方だからこそ、
カバー曲でも、
情感タップリに歌い上げることが、
出来るのだろうなと感じました。
華原朋美さんの「難破船」
私個人的には好きな歌唱です。
どちらかといえば、
90年代J-POPの最前線にいた頃よりも、
音楽の世界から姿を消した後の復活、
再起後の歌唱に、より魅力を感じていました。
ちゃんとボイストレーニングを受けて、
歌唱されるようになったのではないかなと、
思われます。
この歌の歌唱に関しては、
私個人的には、
脆さや儚さ、繊細さよりも、力強さを感じるので、
今も、現在進行形で、
難破船のような感情を引きずっているというよりも、
辛かった過去は、
あくまでも過去として受けとめ、
もう前を向いて歩いていってるような、
そんな女性の芯の強さも感じます。
余計なお世話なのですが、
彼女もまた、プライベートで、
別離による失恋を経験され、
シンデレラストーリーのような幸せの絶頂から、
ドン底に落とされていた期間があったことは、
ファンではない私でさえも知っていたので、
よく、この歌を歌うことを決意出来たな!?
と驚かされました。
当時の愛する人が隣にいて、
幸せの絶頂にいた頃の姿を見たことがあった分、
カバー曲とはいえ、
この歌をちゃんと、
しっかり歌えるようになるほどまでに、
ドン底から這い上がってこれたんだなと、
聴き手として感じさせられました。
歌っている方の声質や歌い方、表現によって、
また、歌い手が抱える人生背景を、
聴き手が知っているかどうかで、
聴き手の心への歌の響き方や伝わり方も変わるのが、
歌の世界の面白い所だなと感じます。
