番外編
『fate』if…
*2*
M side
車が停止して、テギョンさんが、シートベルトを外した音を聞いても、身体が動かなかった。
いや、動けなかった…。
これ以上、先に進んでしまったら、後を引き返せなくなりそうだった。
「…ミニョ」
テギョンさんが、心配するような優しい声で、私を呼ぶ。
優しい、その声に、甘えそうになってしまう…。
自分に、現実を、突きつけて、今を、見せないと…。
大きく深呼吸を繰り返しながら、小さな声で、告げた。
「…ご結婚…されたんですよね…おめでとうございます」
テギョンさんの顔を見れずに、ずっと、俯いたまま、テギョンさんの言葉を待つ。
「結婚はしてない。ヒジュとの婚約は、ずっと前に、破棄になったんだ。」
思ってもいない言葉に、驚いてしまう。
「嘘…」
ずっと、テギョンは、あの女性(ヒト)と、一緒になって、幸せでいるのだと思っていた。
でも、現実は、違っていた。
「ミニョ…会いたかった。ずっと、ずっと…会いたかった…。ミニョ…お前だけだ…。お前だけを、今でも、ずっと、愛してる。」
テギョンさんの暖かな手が、頬に触れる。
…ダメ
そんなこと、言わないで…。
私は、アナタに隠している秘密があるんです…。
「…ごめんなさい。…ごめんなさい。」
「何で、謝る…?謝らないといけないのは、オレの方なんだ。お前を…」
「ごめんなさい・・・。
私・・・実は・・・テギョンさんの・・・子どもを・・・産みました・・・。
今、7歳になります・・・。
勝手に、産んで、ごめんなさい・・・。
でも・・・テギョンさんには・・・絶対に・・・迷惑を・・・かけたりしませんから・・・。
大丈夫ですから・・・
どうか・・・
心配しないでください・・・。」
・・・・・あの頃、失意のなかにいた私にとって、お腹に宿った生命は、テギョンさんが残してくれた愛の証だった・・・私にとって、テギョンさんの愛を残せる希望だった・・・。
これからのことを考えると、不安だらけだけど・・・ずっと、テファとふたりで生きてこれたのだから・・・これからも・・・きっと・・・大丈夫・・・
泣いても、過ぎ去ったことだから、赦されるわけでもない。
涙を見せないように、手で顔を覆った。
突然、身体が重くなるのを感じる。
あの頃と変わらない、テギョンさんの匂いが、鼻孔を擽る。
大きくて、温かな身体に、包み込まれていた。
このまま、病気のことも、すべて、打ち明けて、縋ってしまおうか・・・
そんな安心感に包まれるけど・・・
そんなこと・・・
出来ない・・・
テギョンさんに甘えちゃダメ・・・
テギョンさんの重荷になりたくない・・・
そう思って、何度も、この腕の中から、抜け出そうと思っても、優しい檻のようで、逃げることが出来なかった・・・。
★★★★
愛してるからこそ、相手に心配をかけたくない、ミニョは、打ち明けても、まだ、苦しんでいます。
ちなみに、ミニョの娘『テファ』のイメージなんですが、シネちゃんが、映画で共演した、子役の女の子(ソウォンちゃん)。ちなみに、『happiness』のソラのイメージも、このコです。

夜中に、メールで2話更新したんですが、朝になっても、反映されてないので、直接、更新させていただきます。
ダブって更新されていたら、ごめんなさい。