番外編
『fate』if…

*8*

M side





「ごめんなさい・・・・・

テギョンさん、ごめんなさい・・・・

ごめんなさい・・・」

大きく見開かれる瞳
頬から、滑り落ちる大きな手

テギョンさんが愕然としていることは、一目瞭然だった。

こんなこと、言わなきゃ・・・良かった・・・・

これ以上、テギョンさんの重荷になるわけにはいかないのに・・・

結局、迷惑をかけてしまった・・・

でも、大丈夫・・・

今からでも、話を撤回して、ここから、出ていこう・・・

今なら、大丈夫・・・

まだ、引き返せる・・・

私のことは、忘れてください・・・

これ以上、あなたに、迷惑をかけたくない・・・

きっと、あなたを不幸にしてしまうから・・・

どうか、私のことは、忘れて・・・
素敵な女性(ヒト)を見つけて、幸せになってください・・・・・

「ミニョ・・・」

「ごめんなさい・・・

テギョンさん・・・

私は・・・
大丈夫ですから・・・

さっき、私が言ったことは、忘れて・・・」

一瞬の・・・出来事だった。
全ての言葉を言い終わる前に、唇を塞がれていた。
テギョンさんの息を近くで感じる。
キスとは言えない、口づけはすぐに離れ、息が出来ないくらいに、強く、背中を掻き抱くように、抱き締められていた。


「ミニョ・・・

お願いだから、俺から、逃げるな・・・

俺のそばにいるんだ・・・

この世に、俺と・・・子どもを残して、勝手に死のうとするな・・・

まだ、病気を治せるんだろ?

諦めるなよ・・・

生きようと、してくれ・・・。

俺には、お前が必要なんだ・・・」

テギョンさんの震えるような声が、胸を強く突き刺す。
テギョンさんの顔を埋めている肩がずっしりと重く、服が濡れているのを感じる。


生きたい・・・

生きたい・・・

生きたい・・・

生きて・・・

テファのそばにいたい・・・。

そして・・・

誰よりも近くに、テギョンさんのそばにいたい・・・

それが、今の、私の願い・・・





★★★★



番外編
『fate』if…

*7*

T side





「テギョンさん・・・

私・・・・・

死ぬ・・かもしれないです・・・」

ミニョが、やっと口にした言葉は、残酷なものだった。

全身の力が抜け落ちていく。
ミニョの頬を包んでいた手の力も抜け、全身がガタガタと震えていくのを感じる。

ミニョが・・・死ぬかもしれない?

やっと、ミニョを見つけることが出来たのに、また、失うかもしれないのか・・・・・

よく考えれば、思い当たるとこはあった。

最初に触れたときに感じた、手の冷たさや、華奢になった指・・・
抱いたときに感じた痩せ細った小さな身体・・・

どうして、すぐに、気付けなかったのだろうか・・・

これも、7年という時間(とき)の流れの重みなのだろうか・・・

それでも、気付けなかった自分に苛立ちを感じた。

「ごめんなさい・・・・・

テギョンさん、ごめんなさい・・・・

ごめんなさい・・・」

また、顔を俯かせたミニョは、謝りながら、泣いていた。
きっと、俺に告げてしまったことを、後悔しているのだ。

「ミニョ・・・」

「ごめんなさい・・・

テギョンさん・・・

私は・・・
大丈夫ですから・・・

さっき、私が言ったことは、忘れて・・・」

ミニョが、全て口にする前に、ミニョの唇を塞いで、言葉を封じていた。

また、逃げようとするミニョに、カッとしたように苛立ちを感じ、ひんやりと冷たいミニョの唇に、自分のを押し付け、ミニョの身体を強く抱き締めた。

また、そうやって、俺から離れようとするのか?

大丈夫じゃないんだろ・・・?
どうして、そうやって意地を張るんだ?
俺に、さっき、助けてくれって、言ったじゃないか・・・

忘れてください・・・って

本当にバカか、お前は・・・

そんなの、忘れるわけないだろ・・・


「ミニョ・・・

お願いだから、俺から、逃げるな・・・

俺のそばにいるんだ・・・

この世に、俺と・・・子どもを残して、勝手に死のうとするな・・・

まだ、病気を治せるんだろ?

諦めるなよ・・・

生きようと、してくれ・・・。

俺には、お前が必要なんだ・・・」


不覚にも、ミニョの肩に埋めて、俺は泣きながら、ミニョに懇願していた。

生きてほしい・・・

そばにいてほしい・・・

そう心から願うのは、ミニョ、お前だけなんだ。




★★★★





















番外編
『fate』if…

*6*

M side




「お願い・・・助けて・・・」

目の前にある温かな存在に、縋るように、テギョンさんの背中に、腕を廻した。

「ミニョ・・・?

どうした?何があったんだ?」

「私・・・・・」

優しく聞くテギョンさんの声に、すべてを打ち明けてしまって、楽になりたいと思った・・・
けれど、やっぱり、テギョンさんに迷惑をかけ、苦しめることになる、重荷になってしまうと、考えると、出かけた言葉が喉の奥が詰まり、どうしても、言えなかった・・・

やっぱり、言えるわけない・・・

なんでもないと、首を横に振るけど、次々に押し寄せる不安に怯え、涙に変わっていた。

「ミニョ・・・」

テギョンさんの声とともに、温かな手が、頬を包む。顔を上げさせられ、テギョンさんと視線が合う。

真摯で力強い眼差しに見つめられ、息を呑んだ。

「ミニョ・・・

俺は、お前のすべてを受け入れる覚悟は出来てる。
子どものことも、そうだ・・・。
俺に、迷惑をかけるとか、重荷になるとか、そんなこと考えるな。
俺は、お前のそばにいたい。
お前を、もう二度と、失いたくない。
ミニョ・・・
お願いだから、俺に、隠してることがあるのなら、すべてを打ち明けるんだ・・・。
いいな・・・」

・・・私の心を、すべてを見透かされていた。

こんな私のことを・・・

すべてを受け入れてくれると・・・

もう一度やり直したいと・・・

言ってくれた・・・。

本当に、本当に、嬉しかった・・・

テギョンさん・・・

本当に、ありがとうございます・・・

でも・・・

ごめんなさい・・・


「テギョンさん・・・

私・・・・・

死ぬ・・かもしれないです・・・」

テギョンさんの顔を見つめながら、言わなきゃ良かったと、後悔した。
医師が、私に、余命宣告したときよりも、その言葉は、現実に帯び、残酷に響いていたから・・・・・。




★★★★

ムムム・・・(゜゜;)(。。;)
なんか、本編より暗~いハナシになってますね。ごめんなさい・・・。
ミニョは、すべて打ち明けました。
言葉にすると、残酷なことになっておりますが、どうか、これから、ふたりに希望の光が見えますように・・・と、そう思いながら、描いています。