【白石】
代表的な老化現象のひとつに挙げられる「聴覚の衰え」があります。

聴力の低下とともに、高音が聞き取りにくくなっていきます。この「加齢性難聴」は治すことはできませんが、補聴器を利用して聞こえを改善することはできます。

ですが、そのまま難聴を放置していると、コミュニケーションが減り、脳機能や生活の質の低下につながります。

聴覚障害は一部の限られた人の問題ではなく、70歳以上の2人に1人が持つ深刻な問題です。

難聴者の多くは感応性難聴であり、これは老人性難聴でもあります。

近年、老人性難聴の増加が深刻化してきており、耳が悪くなったかなと実感するのは40から50デシベルの中軽度の聴力ですので、身体障害者手帳を所持するまでではありませんが、難聴者と同じような社会的な困難事例は見られています。

・会話が聞き取れず、聞き返してしまう
・呼んだのに気づかないと言われた
・テレビの音声が聞き取れないため大音量になっている
・電話のベルが聞こえない
・玄関先に人が来ていてもわからない

などの支障を来たし出すのです。

加齢性難聴は、自覚するのが難しいので、家族や仕事仲間からの指摘を受けてそこでやっと耳鼻科を受診するらしいのですが、医者からは加齢のせいですといわれます。そして次に、補聴器を購入することになるのですが、補聴器には眼鏡のように処方せんもなく、眼鏡のようにかけたからすぐによく見えるようになるというものではないので、一人一人に合わせた微調整が難しく、完全に調整できるものではありません。

そのため、本市で医療、保健、福祉の連携で社会復帰の過程を支援する仕組みが必要ではないかと考えます。

厚労省の推計によれば、団塊の世代が75歳以上となる2025年には、認知症患者数は700万人前後に達し、65歳以上の高齢者の約5人に1人を占める見込みです。本市でも認知症の周りには多くの支援があり、多方面からきめ細やかな施策を実施されています。

しかし、65 歳以上の高齢難聴者は全国で約 1,500 万人に上り、わが国が対応すべき緊要な課題の一つであるともいわれています。加齢性難聴によって、音を認識する脳の『側頭葉』が劣化すると、言葉がゆがんで聞こえるようになってしまうそうです。すると、会話中も相手の言葉がわからなくなり、人とコミュニケーションをとるのがおっくうになって社会から孤立してしまいます。

社会とのつながりや、コミュニケーションによる脳への刺激は認知症の予防に必要不可欠です。個人や社会に対して高齢期難聴がもたらす負の影響は、抑うつ、意欲や認知機能の低下、脳萎縮、要介護または死の転帰にまで及ぶと報告もあります。

【白石質問:1】
身体障害者手帳を所持するまでにはいかない高齢難聴者に、何らかの市としての支援が必要だと考えますが、ご見解をお伺いします。


【健康福祉部長答弁:1】
加齢性難聴は、加齢に伴い、耳の蝸牛の中にある有毛細胞の劣化や現象が原因で、高音域の張力の低下や、言葉の判断能力の低下など、高齢期に発症する聴覚障害です。

「聞こえ」の老化は、個人差はありますが、一般的には40歳代から徐々に聴力が低下し、70歳を超えると半数近くに加齢性難聴の症状が現れるといわれています。

加齢性難聴の対策は、早期の受診とされていますが、特に治療方法は無いので、補聴器や人工内耳を用いて、低下した聴力を補うことになります。

議員ご案内のとおり、高齢者のもたらす影響は大きく、放置しておくと、周囲との円滑なコミュニケーションが阻害されるだけでなく、抑うつ、意欲の低下、認知症機能の低下、脳の委縮など、要介護状態や死亡に至るリスクが増加することなどが、多くの調査、研究で報告されています。

本市では、現在実施している「介護予防事業」や「認知症施策総合推進事業」において、介護予防教室や各種講座などを通じて、高齢者の健康づくりの重要性を市民に広く啓発しているところです。

今後とも、高齢者の方々が住み慣れた地域で、いつまでも元気に、健康で暮らし続けていただけるように、加齢性難聴も含めた健康づくりの啓発に努めてまいりたいと考えています。