依頼者保護給付金制度は,強制加入団体制度の終わりの始まりになるだろう | Singer-Song-Lawyer とは私のことだ

Singer-Song-Lawyer とは私のことだ

バナナはおやつに入るのかを考えるブログ


テーマ:

「依頼者保護給付金制度」というものの導入が検討されています。

たとえばこの記事です。

 

近時の弁護士による巨額横領事件の多発を受け,市民の信頼維持を図る必要があるところ,
弁護士の横領等により損害を被った依頼者に対して,「見舞金」を支給する制度とのことです。

 

財源は,一般会員(弁護士)から集められた会費から予算化し(別枠の基金や特別会計を設けない),被害者1名あたりの上限額(500万円)や,加害弁護士1名あたりの上限額(2000万円)を決め,また年間予算額(8000万円~1億円)も決めておくということです。

 

この制度等を検討するため,今月20日に兵庫県弁護士会で会員集会が開催されました。台風の日にもかかわらず,20数名が参加されていました。
日弁連から説明員が2名来られていました。

 

おっしゃる制度趣旨は,「市民の信用を高めるとはいかないまでも,今より下げることにしない」といったもので,実に歯切れが悪いものであるというのが率直な印象でした。あわせて「(本制度は)不祥事の予防には役立たない」と明言されていました。


私は他国の導入事例で,市民の信頼維持に役立っているという実証的なデータがあるか質問しましたが,これは存在しないとのことです(アメリカでは基金形式で導入されている)。
説明員の方は「(効果は)理念的なもの」と発言されていました。

 

また,そもそもなぜ横領事案が増えているのかという原因を突き止める必要があるのではないかという指摘に対しては,その原因について「分からない」と答えていました。「分からない」理由は,キャバクラでシャンパンタワーをするなど,贅沢をして横領に至った者もおり,必ずしも経済的困窮のみが原因ではないと述べていました。
横領事案の原因について,客観的な分析データがあるのかという質問に対しては「ない」と答えていました。どうも,「キャバクラでシャンパンタワー」というのが印象に残ったため,それを強調しているだけとお見受けしました。

 

つまるところ,制度導入にあたっての,立法事実の裏付けが曖昧すぎるわけです。
みんなの金を使うにあたっての根拠づけが希薄すぎます。

 

その他指摘された疑問点としては・・
・ 弁護士会に法的責任はないと言いつつ,弁護士会が金を出す合理性がないし,横領した弁護士に求償しないというのも納得がいかない。
・ 年間の予算が決められている(一般会計から支出するもので,別会計や基金形式ではない)ため,タイミングによっては,見舞金が支給されない場合がありうるが,それで市民の信頼を維持できるのか。
・ 巨額の横領事案において,上限500万円程度を支給されたとして,果たして市民の信頼を維持できるのか。
・ 弁護士会が金銭を出すということが,弁護士会が責任を認めたものと捉えられ,むしろ被害者による弁護士会への訴訟を誘発するのではないか。仮に1件でも勝訴事案が発生した場合,過払い金訴訟のような訴訟の頻発が発生し,弁護士会が財政的に破綻するおそれがあるため,慎重になるべきではないか。
といったものでした。

 

これに対して,積極論の根拠は,「こういう制度は(効果との関連より)マスコミを通じた何となくの雰囲気づくりが大切」「1人あたりに均せば大した負担ではない」といったものであり,おおもとの制度趣旨(=市民の信頼維持)に繋げたものというよりは,アリバイ作りのために大した負担ではないからやっとこうぜ,という風であるのが,率直な印象でした。
何となくの雰囲気作りで信頼を維持しようという発想は,それこそ市民をバカにしたものやろ,というのが私見です。

 

これまで日弁連の金の使い方に疑問があったとしても,それは誰かのメシの種であるから仕方ない(例:ロースクール),また自分とは異なる思想の人もいるんだから仕方ない(例:憲法関係)と思ってきましたが,この依頼者保護給付金制度については,いったい誰得であるのか,まったく理解ができません。

この制度が導入されれば,強制加入団体の終わりの始まりになるでしょう。
私は,もうそれでもいいかなという気分になりつつあります。
 

TADATOさんをフォロー

ブログの更新情報が受け取れて、アクセスが簡単になります

Ameba人気のブログ

Amebaトピックス