太田忠の縦横無尽 -183ページ目
2009年04月13日(月)

ハンコ屋のオヤジの嘆き

テーマ:仕事のこと

会社を設立するときに真っ先に決めなければならないのが、会社の名前である。


いざ自分が代表者となって会社を起業する時、社名に関してはひとつのこだわりがあった。それは、カタカナや英文字は決して使うまい、という他人からみれば妙に思われるかもしれないこだわりだった。また、社名を見て何をやっている会社かわからないのは絶対に避けようと考えた。


私は中小型株のエキスパートだが、新興企業における業種すら想像できないカタカナの社名の会社にはロクなものがなく、名は体を表すことを十二分に知っているからだ。もちろんダメ会社がすべてカタカナや英文字の会社とは言わないが、ダメ会社になってしまう「必要条件」の要素にはなりうると本気で考えている。そこで、漢字の社名を志向し、これに強くこだわった。しかも一目見てすべてが理解できる社名でなければならない。


こうして「太田忠投資評価研究所株式会社」が誕生した。


社名が決まれば、会社の印鑑を作らなければならない。実印、銀行印、角印を俗に法人三点セットと呼ぶのだが、担当の司法書士が紹介してくれたハンコ屋にツゲの木の印鑑を発注した。注文した翌日の夕方にはできているという。なかなかのスピード商売だ。 翌日さっそく受け取りに出かけた。そこは渋谷のガード下にある小さなハンコ屋だった。


「おたくの会社は珍しいね」と唐突にハンコ屋のオヤジが私に向かって言った。別にこちらから会社の内容を話したわけではないので「なんでこの人はそんなことを聞くのだろう」と思った。突然突飛でサプライズなことを言い出しはしないだろうか、と思って少しだけ緊張した。ふと横に目をやると旋盤のような機械を回しながら、二人の職人が手作業で彫っていた。作業台の上には木の屑が大量に散らばっている。「家内制手工業」という昔小学生の頃に習った言葉が、突然ひょっこりと頭の中に浮かんできた。


「いやー、今時、会社の名前が全部漢字なんて珍しいよ。しかも、10文字。株式会社を入れると全部で14文字。印鑑に入るスペースとしてはぎりぎりだったよ」とちょっとにらみをきかせていた(ように見えた)。


確かにそうだ。今の時代、カタカナ3文字とか5文字の会社が大はやりだ。これなら彫る手間はほとんどかからない。ところが、漢字14文字は、おそらく通常の印鑑に比べて3倍くらいの手間がかかっているはずなのだ。しかも料金は同じ。そうか、これを言いたかったのか、と合点がいった。


漢字14文字の印鑑はちょっとカッコイイ。実際に押してみると、ずらっと象形文字のごとく難しい書体で彫られた美しい文字が並び、芸術品のように見える。オヤジの苦労と引き換えにすばらしいものを格安で手に入れた。


ところで、もしあなたが自分で起業するとして、会社名をつけるとすれば、どんな社名にするだろうか。ワクワクする反面、非常に難しい作業であることがおわかりになるかと思う。


2009年04月10日(金)

勝間和代の『お金の学校』-まもなく発売

テーマ:仕事のこと

勝間和代の『お金の学校-サブプライムに負けない金融リテラシー』の見本が今日私の手元に届いた。本書は勝間さんがインタビューアーとなり、金融のプロフェッショナル4名との対談形式で進められる個人投資家向けの啓蒙書で、日本経済新聞出版社が昨年の秋から企画していたものがようやく出来上がった。私も4名のうちの先生の1人として借り出されることになったのだが、内容は次のようになっている。


1時間目 竹中平蔵(金融とリスク)

   世の中の大きな動きの中で金融をとらえる

2時間目 竹川美奈子(投資信託)

   投資信託を使って資産運用の「仕組み」をつくる

3時間目 太田忠(株式投資)

   金融危機に打ち勝つ株式投資術

4時間目 河口真理子(社会的責任投資)

   金融から未来を変える

ホームルーム 

   読者からの三つの質問と、勝間からのメッセージ


「バブルの時は悪者扱いにされ、相場暴落の時は信用を失ってしまう金融とは、果たしてずるくて、わかりにくくて、我々の生活に縁遠いものなのか」と一般人に根ざした感覚に問いかけを発し、金融の役割をさまざまな角度から問い直し、金融を通じて社会参加し、ひいては金融で自分の未来も変えてしまおう、というのが本書のメッセージである。興味のある方はぜひ、手にとってもらいたい(アマゾンによる本書のリンクはこちら )。来週あたりから書店でも並ぶはずである。


「太田さんて、勝間さんの面接官だったんですってね」


最近何人かの人から同じ言葉を掛けられたので、不思議に思って訊ねてみると、彼女が私を紹介する時にそういうセリフを使っていることが判明。今となっては、恐れ多くも「やめてくれー」という感じなのだが、実は勝間さんとはJPモルガン証券時代、同じ部署の同僚で先輩、後輩の仲であった。


今や飛ぶ鳥を全部落とす活躍ぶりで、メディアにも連日登場しており、「カツマー」とよばれる現象さえ起こっている。その稀有な存在に、同性からの支持が多いのもうなずける。最初に会った時にももちろん鮮烈なる印象を受けたが、「自分の意思や考えを自分の責任において正々堂々と主張し貫き通す」という、なかなか大の男でも実践できないことをすんなりとやってのけるところは全く変わっていない。社会で活躍する女性のひとつのあり方として、頑張ってもらいたいものだ。



2009年04月08日(水)

最後のブルームバーグTV出演

テーマ:仕事のこと

本日、ブルームバーグTVに出演した。4月末をもってTV放送が終了するため、私にとっても今回が最後の出演となった。インタビューアーは吉川淳子さんで、会社設立の目的や事業内容が前半の5分、経済、株式市場、投資全般についてが後半の15分の合計20分で、1対1形式の出演としては盛りだくさんな内容だった。


ブルームバーグのTV放送が終わることは、2月の初めに「日本語放送を廃止する」というニュースが報じられていたので知っていた。日本語で制作されるコンテンツのみがなくなると私は思っていたのだが、スカパーやケーブルテレビなどで放映されている番組そのものがなくなると知り非常に驚いた。


ブルームバーグには妙な思い出がある。まだ私が新入社員の頃だ。証券会社の国際部というところに所属をしていたため、ビジネス上さまざまな業者との付き合いがあった。下っ端の私にも仕事が割り振られていたが、それは売り込みセールスを断るという役目だった。誰もがイヤがる仕事が新人に押し付けられるのだ。


その断り先の一つがブルームバーグだった。「まだ日本ではほとんど知られていませんが、グローバルの金融情報を提供している外資系の会社です。ぜひ、弊社のサービスを導入させてください」。個人的にはなかなか好感度のもてる営業マンが何度も足しげく通ってくれるのだが、私の役割は「断る」ことだけだ。「申し訳ございませんが…」と毎度毎度立派に自分の任務を遂行した。気の毒だった。


あれから20年以上経つ。もはや金融機関でブルームバーグを導入していない会社はないだろう。隔世の感がある。個人投資家でブルームバーグTVの存在を知らない人は少数派だろう。それくらい世の中は変わってしまった。


だが、今回の決定措置。メディア業界もご多分にもれず、非常に厳しい状況に置かれている。必要に迫られての決断であることは理解できるが、非常に残念である。またいずれの日にかTV番組を復活させてほしい。日本における良質な経済専門番組はブルームバーグと日経CNBC以外にないのが現状であり、その一つがなくなるのは寂しい限りである。


TV放送ははなくなるが、ブルームバーグによる情報サービス提供はもちろん続く。念のため。