太田忠の縦横無尽 -181ページ目
2009年04月16日(木)

新築オフィス 空室率急上昇

テーマ:経済・社会

昨日の日経新聞夕刊のトップ記事の見出しである。思わず目を奪われてしまい、「いやーきてるねぇ」と呟いた。


開業1年未満の新築オフィスビルのテナントが埋まらず、空室率が一気に上昇。東京都心部のビルではオープン前にはほぼ満室というのが当たり前だったのが様変わりしている。日頃、都内のあちこちを歩いていてもそれは否応なく実感することができる。


東京都心5区の3月末の空室率34.3%(08年1月末4.6%)、大阪では32.5%(9.5%)、福岡では何と60.4%(26.6%)という有様である。福岡はそもそも需要が少ない中、いかに供給者側の楽観的論理で動いていたのかがこの数字からうかがえる。


昨秋に話題になったのが、今月末にオープンする丸の内パークビルに8万円/坪(!)という史上最高値の賃料でテナントがついたという話である。さる外資系金融機関がこの価格で契約したらしいのだが、半年前のこととはいえ信じられない変異である。


3月末現在でこの状況だと、半年後の今年の9月には空室率50%、来年3月末には70%程度にはなるのではないか。なぜならば、まだまだあちらこちらで新築ビルの建設ラッシュだからだ。この数ヶ月間ですら開業してもテナントが全くつかないビルが表参道、南青山、渋谷、品川、新宿と私の知る範囲でもいくつも数えることができる。


空室率が上下するのは株式相場が上下するのと同じなので今更驚いたりはしないが、このニュースをみてすぐに思い浮かんだのが六本木ヒルズである。


六本木ヒルズは「ヒルズ族」「ヒルズ経営者」というような華やかなイメージが常に先行しているのでもう誰も知らないような昔物語かもしれないが、実は2003年4月の開業当時は、全くテナントが埋まらない空室ビルの代表格だった。あまりにもテナントがつかないので、ビルの所有会社は慌てふためいて、テナントになってくれる企業の引越し代を肩代わりし、おまけに最初の6ヶ月間は「フリーレント」、すなわちタダでテナントを誘致したのだ。その恩恵にあずかった会社のIR担当者が自慢気に話していたのをよく覚えている。その会社は六本木の小さな雑居ビルから一気に破格の条件で「ヒルズ」のブランドを手に入れたのだった。華麗なる転身だった(本業につまづき、ただ今没落中)。


半年前までの空前の不動産市場の活況の中でプロジェクトされた新築ビルが続々とこれから完工し、供給されていく。あの六本木ヒルズの時代の比ではないだろう。六本木ヒルズの着工は2000年のITバブルのピークだったが(総事業費2700億円!)、不動産の世界は常に高値づかみでビジネスを仕掛けて、販売する頃には「叩き売る」という構図からは逃れられないようだ。


「引越し代は全額持ちます、賃料も1年間タダにします、ぜひ入って下さい、という時代が近々来るかもね。当社でも不動産リサーチを半年後からやろう」と今日、うちの取締役と話をした。借り手圧倒的優位のいびつな状況が起こることは間違いない。チャンスである。


2009年04月13日(月)

ハンコ屋のオヤジの嘆き

テーマ:仕事のこと

会社を設立するときに真っ先に決めなければならないのが、会社の名前である。


いざ自分が代表者となって会社を起業する時、社名に関してはひとつのこだわりがあった。それは、カタカナや英文字は決して使うまい、という他人からみれば妙に思われるかもしれないこだわりだった。また、社名を見て何をやっている会社かわからないのは絶対に避けようと考えた。


私は中小型株のエキスパートだが、新興企業における業種すら想像できないカタカナの社名の会社にはロクなものがなく、名は体を表すことを十二分に知っているからだ。もちろんダメ会社がすべてカタカナや英文字の会社とは言わないが、ダメ会社になってしまう「必要条件」の要素にはなりうると本気で考えている。そこで、漢字の社名を志向し、これに強くこだわった。しかも一目見てすべてが理解できる社名でなければならない。


こうして「太田忠投資評価研究所株式会社」が誕生した。


社名が決まれば、会社の印鑑を作らなければならない。実印、銀行印、角印を俗に法人三点セットと呼ぶのだが、担当の司法書士が紹介してくれたハンコ屋にツゲの木の印鑑を発注した。注文した翌日の夕方にはできているという。なかなかのスピード商売だ。 翌日さっそく受け取りに出かけた。そこは渋谷のガード下にある小さなハンコ屋だった。


「おたくの会社は珍しいね」と唐突にハンコ屋のオヤジが私に向かって言った。別にこちらから会社の内容を話したわけではないので「なんでこの人はそんなことを聞くのだろう」と思った。突然突飛でサプライズなことを言い出しはしないだろうか、と思って少しだけ緊張した。ふと横に目をやると旋盤のような機械を回しながら、二人の職人が手作業で彫っていた。作業台の上には木の屑が大量に散らばっている。「家内制手工業」という昔小学生の頃に習った言葉が、突然ひょっこりと頭の中に浮かんできた。


「いやー、今時、会社の名前が全部漢字なんて珍しいよ。しかも、10文字。株式会社を入れると全部で14文字。印鑑に入るスペースとしてはぎりぎりだったよ」とちょっとにらみをきかせていた(ように見えた)。


確かにそうだ。今の時代、カタカナ3文字とか5文字の会社が大はやりだ。これなら彫る手間はほとんどかからない。ところが、漢字14文字は、おそらく通常の印鑑に比べて3倍くらいの手間がかかっているはずなのだ。しかも料金は同じ。そうか、これを言いたかったのか、と合点がいった。


漢字14文字の印鑑はちょっとカッコイイ。実際に押してみると、ずらっと象形文字のごとく難しい書体で彫られた美しい文字が並び、芸術品のように見える。オヤジの苦労と引き換えにすばらしいものを格安で手に入れた。


ところで、もしあなたが自分で起業するとして、会社名をつけるとすれば、どんな社名にするだろうか。ワクワクする反面、非常に難しい作業であることがおわかりになるかと思う。


2009年04月10日(金)

勝間和代の『お金の学校』-まもなく発売

テーマ:仕事のこと

勝間和代の『お金の学校-サブプライムに負けない金融リテラシー』の見本が今日私の手元に届いた。本書は勝間さんがインタビューアーとなり、金融のプロフェッショナル4名との対談形式で進められる個人投資家向けの啓蒙書で、日本経済新聞出版社が昨年の秋から企画していたものがようやく出来上がった。私も4名のうちの先生の1人として借り出されることになったのだが、内容は次のようになっている。


1時間目 竹中平蔵(金融とリスク)

   世の中の大きな動きの中で金融をとらえる

2時間目 竹川美奈子(投資信託)

   投資信託を使って資産運用の「仕組み」をつくる

3時間目 太田忠(株式投資)

   金融危機に打ち勝つ株式投資術

4時間目 河口真理子(社会的責任投資)

   金融から未来を変える

ホームルーム 

   読者からの三つの質問と、勝間からのメッセージ


「バブルの時は悪者扱いにされ、相場暴落の時は信用を失ってしまう金融とは、果たしてずるくて、わかりにくくて、我々の生活に縁遠いものなのか」と一般人に根ざした感覚に問いかけを発し、金融の役割をさまざまな角度から問い直し、金融を通じて社会参加し、ひいては金融で自分の未来も変えてしまおう、というのが本書のメッセージである。興味のある方はぜひ、手にとってもらいたい(アマゾンによる本書のリンクはこちら )。来週あたりから書店でも並ぶはずである。


「太田さんて、勝間さんの面接官だったんですってね」


最近何人かの人から同じ言葉を掛けられたので、不思議に思って訊ねてみると、彼女が私を紹介する時にそういうセリフを使っていることが判明。今となっては、恐れ多くも「やめてくれー」という感じなのだが、実は勝間さんとはJPモルガン証券時代、同じ部署の同僚で先輩、後輩の仲であった。


今や飛ぶ鳥を全部落とす活躍ぶりで、メディアにも連日登場しており、「カツマー」とよばれる現象さえ起こっている。その稀有な存在に、同性からの支持が多いのもうなずける。最初に会った時にももちろん鮮烈なる印象を受けたが、「自分の意思や考えを自分の責任において正々堂々と主張し貫き通す」という、なかなか大の男でも実践できないことをすんなりとやってのけるところは全く変わっていない。社会で活躍する女性のひとつのあり方として、頑張ってもらいたいものだ。