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2009年09月23日(水)

西本智実 『マーラー交響曲第5番』を聴く

テーマ:音楽

9月21日(月)にサントリーホールで西本智実指揮によるロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団のコンサートに出かけた。曲目はワーグナーの『トリスタンとイゾルデ~前奏曲と愛の死~』とマーラーの『交響曲第5番』である。


西本さんは指揮者の世界には珍しい女性指揮者であり、その立居振る舞いは実に颯爽としており、初めてテレビで見た時に思わずタカラヅカの男役「オスカル」か、と思ったほどである。


マーラーの交響曲はほとんどが大作であり、演奏者および指揮者には相当のエネルギーが要求されるため、交響曲のみがプログラムとして組まれる場合が多く、かつアンコールも一切無しというケースがほとんどである。『交響曲第5番』は通常の交響曲とは異なり5つの楽章から成り立っており、かつ金管奏者には相当の無理強いがなされるため、その前に『トリスタンとイゾルデ』を持ってきていること自体、非常に意欲的なプログラムであることがよくわかる。普通はせいぜい、金管楽器がほとんど入らないモーツアルトの交響曲などを持ってくるのが定番というものだ。


さて、そのマーラーの交響曲であるが、今回の演奏は何とも評価が難しい。楽章によってこれだけ不出来と出来の良い部分が分かれるのを聴いたのは初めてだったからである。


第1楽章から第3楽章までは、まるで「音楽」になっていなかった。マーラーの交響曲は曲が進行していくと各パートがめまぐるしく入れ替わり立ち代りそれぞれの「主張」を繰り広げつつ、時には「豪快」、時には「鮮烈」、時には「苦悩」、時には「清楚」、時には「叙情」、そして時には「ユーモア」がオーケストラ全体のサウンドとして浮かび上がってくる。しかしながら、今回の演奏はまるでゲネプロの時間に「パート練習」をしているかのごとく、サウンドが融合せずに「音楽」にはなっていなかった。すなわち指揮者の仕事がまるでなっておらず、これには驚き痛く失望させられたのである。


彼女はもちろんロイヤル・フィルの常任指揮者ではないため、今回のツアーにあたって十分な練習時間と十分な意思疎通がないことが明らかだった。「いや、これはひょっとして楽団員が指揮者のいうことを聞かない演奏をわざとしているのではないか」と思ったくらいだった。また、要となるべき金管奏者のフレーズの吹き方が甘いのが気になった。これじゃマーラーの音楽ではないだろう。加えて、指揮者が出すテンポで非常に不自然なところが不連続に何箇所もあり、「何でこうなるの?」という感じだった。それを見かねてか、3楽章の途中で退席してしまう客が数名いた(咳が止まらずに退席する人もいたが、それ以外の人たちである)。とにかく「不自然な音楽」を聞かされるのは大変苦痛であった。


「これはまずいものを見てしまった」と思いつつ、第4楽章の有名な「アダージェット」が始まると、さらに耳を疑ったのである。なぜならば、それまでの状況とは打って変わって、実に自然なマーラーのサウンドに突然変異したからだ。そして第5楽章は途中で指揮棒を落としながらも、それに動じず、見事にマーラーの音楽を演じ切った。最後の大迫力で終わるエンディングは、まさに彼女が指揮するために作曲されたのではないか、と思うほどマッチしていた。圧倒された聴衆は終わったとたんに、「ブラボー」の掛け声、そしてスタンディングオーベーション。


西本さんの音楽を今回初めて生で聴いたので、あまり多くのことは語れないが、良い部分と悪い部分がまだかなりはっきりと出る指揮者とお見受けした。今度はぜひ、彼女のベースとしてきたロシアの楽団で一度聴いてみたいものだ。ぜひ、これから本格的に世界を舞台に活躍してほしい。


太田忠の縦横無尽 2009.9.23
『西本智実 「マーラー交響曲第5番」を聴く』

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2009年09月20日(日)

ついにここまできた不動産市況

テーマ:経済・社会

毎週、週末になると配達される新聞の朝刊にはさまれている折込みちらしの量が膨張し、新聞そのものの厚さよりもボリュームが勝っていることも少なくない。その主役となっているのがマンションや戸建ての不動産広告である。


2年ほど前には、その不動産広告の数たるや半端ではなかったが、不動産市場の崩壊とともに着工される住宅戸数も急激に減ったことからこの1年では広告も次第に減少していった。ところが、最近になってまた増えている。それは、不動産各社が手持ち物件の在庫圧縮のための値引き販売に走らざるをえなくなっており、「値下げしました、買いませんか」という広告が勢いを増しているからだ。


昨日、過激な広告を見た。


「目黒区八雲、永住の名品、八雲ハウス。新価格発表」

と銘打った広告で、「販売住宅5戸、先着順受付/現地内覧会実施」とあり、2008年2月に竣工した売れ残り物件が紹介されているのだ。


Btype(242.47㎡):39,800万円→19,950万円

Ctype(193.26㎡):28,300万円→14,150万円

とある。いきなり半額である。


もともとこの物件は上場不動産企業によって販売されていたのだが、倒産したためにさる日系証券会社の不動産部が再販売していると説明されている。


都内の新築マンション価格は不動産バブルの前は、70万円/㎡程度であったのが、あっと言う間に100万円/㎡となってしまい、それが最低レベルの価格になった。すなわち、70㎡のマンションでも7000万円(!)もするのである。ところが、この八雲のBtypeの旧価格での単価は164万円もの破格の値段である。たしかに麻布あたりの超高級住宅地域では、これくらいが普通なのだろうが、八雲はオフィス街から離れた世田谷の住宅地である。もちろん世田谷は一般的には不動産価格は高いのは知っているが、この物件の価格設定を見れば、いかに不動産が高騰し、強気の商売をしていたか、というのがよくわかる。


見かけ上は、ちょうど半値に価格改定されたこれらの物件は即完売するのだろうか? なお、裏面にも「伝統の別荘地ブランシャールの森」と題された、軽井沢の別荘用の住宅地が半値で売られており、

2012㎡:10,958万円→5,479万円

1639㎡:7,450万円→3,725万円

となっていた。暴落現象は都心だけではないらしい。


いったんこのような形で、売り手と買い手の立場が入れ替わる局面が出てこないと不動産市場の底入れは起こらない、というのが不動産業界の毎度のパターンである。


太田忠の縦横無尽 2009.9.20

「ついにここまできた不動産市況」

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2009年09月16日(水)

9月は株式市場にとって鬼門の月

テーマ:金融・マーケット・資産運用

昨日の9月15日は奇しくもリーマンショックからちょうど1年が経過した日であったが、その1年前の騒然とした日において、1年後の9月16日にこのような大々的な政権交代を迎えることなど誰が想像しただろうか。やはり、今は激動の時代の最中なのだと思う。それを実感させられる日々である。


さて、株式市場であるが、8月の半ばあたりから急速にトレンドが消滅した。米国市場を見ていると、ちょうどその頃を境にマクロ経済のデータはポジティブなものばかりが目立つようになっているにも関わらず、株価の上昇力がほとんどなくなっているのである。昨日発表された8月の米小売売上高や9月の景気指数はマーケットコンセンサスを上回るものであり、本来ならばNYダウは軽く1%を超える上昇があってもおかしくないはずなのだが、期待値のわずか半分程度にとどまった。日本市場は企業業績に関するニュースも1Qの決算発表が終了したためほとんどなくなってしまい、自家発電のエンジンは作動しておらず、海外マーケットや為替、商品先物市場などの外部要因に左右される展開が続いている。


この数年の動きを見ていると、株式市場にとって9月は鬼門の月である。下落するケースが多く、パフォーマンスが悪い。今年の場合、春先からの一貫した上昇トレンドに明らかな一巡感が見られ、ポジティブなニュースにも感応度が鈍ってくると・・・。これはあまりよろしくない兆候である。


トレンドが消滅し誰もが上値を積極的に追うことに躊躇するような局面では、あまりべったりとマーケットにへばりついていても仕方がない。リスクアセットへのエクスポージャーを低めに保ち、個別で株価の調整が起こっている銘柄の調査、一段安になったら投資ウエートを引き上げる銘柄といった次の一手を積極的に指せる準備をしておくに限る。


太田忠の縦横無尽 2009.9.16

「9月は株式市場にとって鬼門の月」

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