円高に阻まれて動けない株式市場
7月もいよいよ残すところあとわずかとなった。この夏も全国的に大きな自然災害が発生している。「自然さえもコントロールできる」などというのは、人間の幻想、浅はかな考えに過ぎず、自然の脅威にはまだまだ無力であることをまざまざと思い知らされる。
さて、遅くなったが6月のモデルポートフォリオの状況ならびに近況について記したい。
6月のマーケットは日米市場ともに上昇する展開となった。
米国市場は3か月続伸し、NYダウは過去最高値を更新。5月の雇用統計は+13.8万人と予想の+18.5万人を下回ったものの失業率は4.3%と16年ぶりの低水準。FRBが3月に続いて4度目となる0.25%の利上げを決定。5月の小売売上高は-0.3%と予想を下回り、消費者物価指数も下落に転じる。長期国債は2.10%まで低下して7か月ぶりの低水準。原油先物価格も42ドル台まで下げて7か月ぶりの安値に。6月29日時点のNYダウは21287ドルと前月より279ドル上昇し月間騰落率は+1.3%。ナスダックは6144となり54ポイント下落の-0.9%となった。
東京市場も3か月続伸。米国高や米経済の好調、また円高に歯止めがかかったことで日経平均は2万円の大台を突破し2015/8/19以来、1年9か月ぶりの高値に。ジャスダックも26年ぶりの高値を記録。円高が進まなかったことで投資家心理が改善し、ハイテク株や輸出関連が買われる。ただし、材料に乏しく上値は重い。売買代金は2.6兆円程度で推移。為替は先月末の111.00円から今月末は112.05円へ。6月の日経平均は20033円で取引を終え、5月末の19650円から382円上昇し月間騰落率は+1.9%、Topixは+2.8%となった。一方、小型株市場はジャスダック平均が+2.6%、マザーズ指数は+7.0%となった。
太田忠投資評価研究所のインターネットによる個人投資家向け「投資実践コース」 における6月のパフォーマンスは+1.5%となり、年初来+3.2%、累計では+144.3%(5月末+140.6%)と前進。6月末時点のポートフォリオの株式比率は70%で19銘柄を保有(5月末は67%で19銘柄を保有)。株式部分の含み益は+14.6%(5月末は+12.4%)。70%のうち現物株のウェートは30%、日経レバレッジETFの保有比率20%の実質ロング比率は40%でロングは合計70%。これに対し日経ダブルインバースETFの保有比率15%の実質ロング比率は-30%、純金ETF5%は株式とは逆の動きをするため、これらのロング比率は-35%。トータルでは35%のロングポジションとなり、4月末の32%から上昇した。
6月の世界の株式市場は上昇基調を維持したが、後半にかけて上値が重くなった。FRBの金利引き上げ後、米国の長期金利は2.2%程度でへばりついており、為替も111円を軸にして上下1円値幅にとどまる形となった。米国市場は過去最高値の更新、日本市場も年初来高値の更新を見せたが、全般的に非常に膠着感の強いマーケットの様相となった。
7月に入っても米国市場は過去最高値を更新。利上げペースが緩やかになるとの見通しからドル売り・円買いが継続する一方、4-6月期の四半期決算見通しが8%の増益見通しと伝わって楽観ムードが漂っている。一方、為替は一時114.50円レベルを付けたものの110円台後半へと5円近くもの円高が進んだことで日本株にとっては逆風となっており、日経平均が上がらない状況を引き起こしている。
FRBが早ければ9月にも金融引き締めを開始する可能性が出てきた。ECBもこの秋に金融緩和策を転換する可能性があり、世界的な金融緩和が終局を迎える可能性がある。テーパリングの影響が今後の株式市場にとって最大のポイントになるだろう。今のところ目立ってネガティブな反応はないものの、世界的な金利上昇は株式市場にとってはマイナス要因となるため注意が必要である。
日本企業の1Q決算が本格化始めている。決算動向をチェックしながらポートフォリオをさらに強くする戦略を取っていきたい。
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太田忠の縦横無尽 2017.7.28
「円高に阻まれて動けない株式市場」