やはり日銀金融緩和策はもう限界に | 太田忠の縦横無尽

やはり日銀金融緩和策はもう限界に

いよいよ夏休みも本番に入った。東京では長かった梅雨が明け、真夏の日差しが戻って来た。くれぐれも熱中症には気を付けていただきたいと思う。


さて、遅くなったが6月のモデルポートフォリオの状況ならびに近況について記したい。


6月のマーケットは米国が小幅高となったのに対して日本は急落の展開。


米国市場は5か月続伸。5月の雇用統計は予想の+15万人に対して+3.8万人と5年8か月ぶりの低水準。利上げ観測が大きく後退し、原油先物価格が51ドル台まで上昇したため6月上旬のNYダウは18000ドル台を回復。しかし、イギリスのEU離脱決定で6/24は610ドル安と急落したものの、その後欧州で買い戻しの動きが強まり月間損益はプラスをキープした。5月のNYダウは17929ドルと前月より142ドル上昇し月間騰落率は+0.8%。ナスダックは4842となり105ポイント下落の-2.1%となった。


東京市場は大幅反落。雇用統計を受けて短期的な米利上げの可能性がなくなったため、ドル売り円買いを引き起こし5月末の111.40円から円高方向に。日本の取引時間中にイギリスの国民投票の開票がおこなわれたため、離脱決定によって6/24の日経平均は1286円安と16年2か月ぶりの下げ幅を記録。加えて為替も99円ちょうどまで円高が進みパニック状態に。その後買い戻しが進んだものの非常に厳しいパフォーマンスに。売買代金は2兆円割れの日も多くみられ超閑散状態。6月の日経平均は15575円で取引を終え、5月末の17234円から1658円下落し月間騰落率は-9.6%、Topixは-9.7%となった。一方、小型株市場はジャスダック平均が-4.6%、マザーズ指数は-11.8%となった。


太田忠投資評価研究所のインターネットによる個人投資家向け「投資実践コース」 における6月のパフォーマンスは+2.7%となり、年初来-3.9%、累計では+143.3%(5月末+136.8%)と前進。6月末時点のポートフォリオの株式比率は47%で17銘柄を保有(5月末は51%で17銘柄を保有)。株式部分の含み益は+14.5%(5月末は+9.4%)。ただし、47%のうちダブルインバースETFの投資比率14%の実質ロング比率は-28%、純金ETFの10%は株式ではないため、純粋の株式のロングウェートは47%ではなく-15%である。5月末の-23%からショートポジションが減少した。


6月は2つの大きな外部要因によって大きな痛手を受ける展開となった。米国の利上げ観測後退による円高、そしてイギリスのまさかのEU離脱による経済減速懸念が引き起こした円高、ということで円高が加速する環境となり単月で10円も円高が進んだ。


イギリスのEU離脱はこれから2年の歳月をかけて話し合いが進められる。すでに急激なポンド安による「イギリスの不動産ファンドの解約増」、EU混乱によるユーロ安による「イタリアの銀行の不良債権問題」が表面化し、第2波としてのネガティブな動きが起こっている。今後とも難しい問題が出てくることは避けられないだろう。


ところが、7月に入り日経平均は急伸。急速な上昇の背景には「ヘリコプターマネーや永久国債」への期待による海外ヘッジファンドを中心とした投機的な買いがある。その照準は7/29に発表される日銀の金融政策決定会合であるが、結局その内容は「年間ETFの買い入れ枠を3.3兆円から6兆円に増額」というものだけであり、ほとんど中身のない内容である。そもそも私は中央銀行が自国の株式を買うのは弊害が大きいと考えているが、さらに間違った方向に突き進んでいるとしか思えない。自国の株式を一段と買い集める中央銀行が存在する国への投資など海外投資家は冷ややかな目で見ているに違いない。一方、注目されていた為替は再び103円台へと円高方向が顕著になっている。


1Qの決算発表がスタートした。確かに安川電機や日本電産などは買われる動きをしているが、「減収」という状況にあり、これからの景気減速の兆しを思わせる内容になっており、先行きに対する私の心配は増幅している。


引き続き、保守的なスタンスによる運用が賢明だと考える。





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太田忠の縦横無尽 2016.7.29

「やはり日銀金融緩和策はもう限界に」

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