さわやかな春の風:あなたの心に【中山千夏】-太田忠(ピアノ) | 太田忠の縦横無尽

さわやかな春の風:あなたの心に【中山千夏】-太田忠(ピアノ)

あなたの心に風があるなら
そしてそれが春の風なら
私一人で吹かれてみたいな
いつまでも いつまでも


中山千夏、と言っても今の若い人はほとんど知らないと思うが、私が小さかった頃から「才媛」としてその名を馳せ、「聡明で(若い女性としては珍しく)自分の意見をはっきりと言う人」という印象が強かった。女優、声優、テレビタレント、作家、参議院議員など多面的活躍をした人である。現在は、市民活動を中心に軸足を移されているようで、メディアでお目にかかる機会がほとんどなくなってしまったが、とにかく、「中山千夏」は子供の頃から忘れられない名前である。


その千夏さんが歌手だった、というのを知ったのは昨年の終わり頃である。都倉俊一が初めて作曲家としてヒットを飛ばしたのが「あなたの心に」という曲であったことを知り、それを作詞し、かつ歌ったのが中山千夏であったのだ。冒頭に記した詩は、この曲の1番の歌詞である。




学生運動がまだ盛んであった1969年。当時、学習院大学法学部の三年生だった都倉俊一はアルバイトとして作曲や編曲を手掛けていた。この頃はちょうどレコード業界が変革の時期に入っており、レコードだけではなくカセットテープが普及し始め、業界各社は音楽作品作りに奔走していた。


「プロの作曲家やアレンジャーに頼めば、1曲1万円もするものが、学生アルバイトだと3千円ですむ。だから私のような存在は重宝され、私も実践的な訓練だと考えて無理なスケジュールをこなしていた」とは都倉俊一は述べている。


ある日、彼のもとに作曲の依頼が来た。カセットテープの制作会社から中山千夏という歌手に曲を作ってほしいというものだった。しばらくして本人の自作の詞が届けられ、そこには「あなたの心に」というタイトルがついていた。
「暗めのメッセージフォークに飽き飽きしていた私に、このシンプルな詞はなんともさわやかですがすがしく感じられた」


レコーディングは7月におこなわれ、発売は9月に決定。たちまちヒットチャートのベストテン入りを果たし、1969年のオリコンシングルチャートで堂々の第2位を獲得。
「印税ってこんなにすごいのか」と都倉俊一は驚き、真っ赤なフェアレディZを買ったそうだ。何とも古き良き時代の話である。


ところで、1969年のオリコンシングルチャート1位の曲はご存じだろうか。何と「黒ネコのタンゴ」である。いやはや、時代を感じるね、これは。なお、以前に取り上げた「夜明けのスキャット」も1969年である。(訂正:「黒ネコのタンゴ」は1969年は第5位、1970年に第1位獲得。「夜明けのスキャット」は1969年において第1位)


ソロピアノの「あなたの心に」はこんな感じになった。


オリジナルはこちら:あなたの心に【中山千夏】-太田忠(ピアノ)


太田忠の縦横無尽 2012.4.14

『さわやかな春の風:あなたの心に【中山千夏】-太田忠(ピアノ)』

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