パニックの米国vs冷静な日本 | 太田忠の縦横無尽

パニックの米国vs冷静な日本

このタイトルは通常ならば『パニックの日本vs冷静な米国』となるはずだが、今回は真逆である。というか、私が証券市場にかかわった23年間の中でも特殊なシチュエーションである。こんなタイトルで記事やコラムを書いた記憶がない。


それにしても、先週の米国マーケットのすごさといったらなかった。月曜日は634ドル安(史上6番目の下げ幅)、火曜日は429ドル高、水曜日は519ドル安、木曜日は423ドル高と4日連続でNYダウは終値ベースで400ドル以上の上げ下げを繰り返した。これは有史以来初めてのことだそうだ。終値ベースの値幅でこれだけ上下したということは日中ベースのボラティリティはもっと大きかったということである。とにかくマーケットはパニック状態となり、市場参加者の狼狽ぶりが目立った。


一方、日本市場はこうした急落に慣れているせいか、今回は米国国債の格下げが発表されようが、フランス国債の格下げ観測が出ようが、あまり反応することはなく、634ドル下げた翌日の日経平均は153円安にとどまり、その後は終値ベースで100円以上動いた日はなかったというのだから、そのボラティリティは平常時以下である。驚きである。


「アメリカがくしゃみをすれば、日本は風邪をひく」というのがお決まりのパターンで、米国の1.5倍くらいのベータ値があるのが普通だが、今回は0.5倍以下である。日本のマーケットは賢くなったのだろうか? いやいや、ひと足もふた足も先んじて日本マーケットは下がっていたため、今回の欧米の下げでさらに激下げするまでにはいかなかった、というべきだろう。


ところで、「ボラティリティが大きい」というのは「値動きが激しい」と同意であるため、リターンを上げるチャンスが増えると考えるのは早計である。いったん、大きな下げや大きなボラティリティを経験すると、落ち着くまでには時間を要する。株価の上昇でリターンを積み上げるのには長時間かかるが、急落で吹き飛ばされるのは一瞬の出来事である。


「今日の急騰」は「明日の急落」というまさに市場自体が鋭利なナイフを振り回している状況のため、くれぐれも用心しないといけないだろう。


太田忠の縦横無尽 2011.8.15

『パニックの米国vs冷静な日本』

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