「ドレミの歌」が引き起こす混乱の原因が判明
「ドレミの歌」 ―
そう、誰もが子供の時に覚えて知っている曲である。私も小学生の時に音楽の授業で習った。
「ドレミの歌」は音楽の基本中の基本である「「ドレミファソラシド」を身につけることを目的として作曲されたものであり(作曲はかのリチャード・ロジャースである)、原曲が出てくるミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』において、ヒロインのマリア・トラップがトラップ一家の子供達に音階を教える場面で、マリアと子供達によって実に楽しそうに歌われる。
「ドはドーナツのド」という歌詩はペギー葉山によるものであり(英語の原曲はドーナツのドではなく、メスの鹿:female deer。続く歌詞も全く異なるため、葉山版は訳詩ではなく完全な創作である)、これが音楽の教科書に採用され、現在に至っている。
ドは ドーナツのド
レは レモンのレ
ミは みんなのミ
ファは ファイトのファ
ソは あおいそら
ラは ラッパのラ
シは しあわせよ
さあうたいましょう
とてもわかりやすくて親しみがもてる詩のため、どんな子供にも受け入れやすい曲だが、子供の私はなぜか好きになれず、歌うたびにいつも違和感みたいなものを感じていた。
実は、その理由が突然、3日前にこの曲をピアノで弾いた時にわかったのである。大発見だった。
上記の詩の冒頭の「ド」「レ」「ミ」「ファ」「ソ」「ラ」「シ」は、そのまま音階の「ド」「レ」「ミ」「ファ」「ソ」「ラ」「シ」と一致する。これは当たり前のことだが、私はドーナツの「ド」もレモンの「レ」もみんなの「ミ」も音名=音階の音だと子供心に勝手に思っていた。それが実は違う音であることをこの歳になって今さらながらに発見し、「違和感」の根本原因が判明したからである。正確に音名で記すと、「ドレミの歌」は以下のようになる。
ドは ドーナツのミ
レは レモンのファ
ミは みんなのソ
ファは ファイトのラ
ソは あおいソラ ⇒ここだけ「空」はソ・ラと正確
ラは ラッパのシ
シは しあわせド ⇒「よ」はそもそも音名にあらず
さあうたいましょう
何ともおかしな歌詞になるが、こうしないとせっかく2回も強調された言葉の「ド」が音階の「ド」であったり「ミ」であったり、役割が分散して非常に中途半端なものとなってしまうのだ。音名にてきちんとした音階を身に着ける妨げとなり、私のような混乱を引き起こす。
ところで、「ドーナツのド」「レモンのレ」「みんなのミ」…をそのまま「ド」「レ」「ミ」と正しい音で弾いてみると、なんとも間抜けでいじけた曲になってしまう。が、音名=音階を身につけるためには、上記の替え歌と同様にこちらの新作「ドレミの歌」を歌うのも非常に効果的なように思う。
ということで、「ドレミの歌」を歌う際は、こうした点をわきまえた上で、これら2つのバージョンでやるのがベストだという結論に達した。何も知らないで歌だけ覚えてしまうと、私のように音楽の基本的能力を損ねる原因になりかねない。それほど危険な曲なのである(笑)。
興味のある方は、どうぞ自分で一度確かめて下さい。
太田忠の縦横無尽 2011.6.14
『「ドレミの歌」が引き起こす混乱の原因が判明』