どうして日本政府はこんなにも無策なのか? | 太田忠の縦横無尽

どうして日本政府はこんなにも無策なのか?

さて、9月である。猛暑は一向に鳴りを静める気配はないが、いよいよ9月である。おいしい食材が多く出てくる食欲の秋、感受性が敏感になりやすくなる芸術の秋、ということで魅力的なシーズンの到来である。いいねえ。


8月の弊社の個人投資家向け投資講座の「投資実践コース」 におけるモデルポートフォリオのパフォーマンスは-1.3%で終了した。昨年からの累計では+22.9%、今年からの年初来では+8.5%である。8月は景気減速への懸念および異常なレベルで円高が常態化したことでマーケットは年初来安値を更新。日経平均は-7.5%、Topixは-5.3%、ジャスダック平均は-4.1%と5月の急落局面に次ぐパフォーマンスの悪さだ。


モデルポートフォリオがマーケットに対して優位に立っているのは、何度も指摘しているように「リスク管理」を徹底し、フルインベストメントをせずに時間的分散投資を実行しているためである。マーケットと一緒になってプカプカ浮いたり沈んだりしていても運用資産は増えない。ちなみに年初来で市場ごとのパフォーマンスを見ると日経平均-16.3%、Topix-11.3%、ジャスダック平均-0.4%である。小型株優位の展開だが、小型株は一向に盛り上がる気配はなく、大型株比較でのパフォーマンスの差はちょっと私自身違和感を感じる。


それにしても日本政府は一体どうなっているのだろうか?


政治を見れば、与党が変わっても相変わらずの権力抗争(永遠にこの体質は変わらない。ようするに政治の世界は権力の陣取り合戦に明け暮れているということである。政策は二の次、三の次だ)がなされ、異常な円高が定着しているにもかかわらず、財務相は「一方的に偏りすぎている」「必要な時は断固とした措置を取る」という口先介入を繰り返すばかり。為替という国益そのものに関する事象について戦略的プランもなければ、非常時になっても行動すらしない(日銀も同じ)。


対ドルで83円台、対ユーロで106円台まで突っ込んでいる円高は「異常」である。外貨を稼いで収入を得ている日本にとっては、これだけ円高が進むと「働けど働けど、稼げない」という状況に置かれているのと同じである。一方、米国やユーロ圏諸国は自国通貨が安くなっていることを積極的に放置している。本来ならば、通貨価値が下がっているので、何らかの対策を打ってもよさそうなものだが、「外貨獲得」という視点で見れば、有利な立場にあるため景気減速感漂う現況では、この状況を戦略的に活用している、というふうに私には見える。


「円高、円高と騒ぐのはおかしい。こういう状況ならば内需を活性化させるべきだ」と、さる経済評論家が先日TVで発言していたのを見たのだが、内需が活性化しない構造になっている日本をあまりにも無視している口先ばかりの理想論としか思えなかった。「海外旅行は安くなるし、ブランド物は安く買える」―。たしかにそうだが、これはあくまでも「支出」面での安上がり効果であるだけで、結局は支出することで日本円が吸い上げられるのだ。とにかく国全体の「収入」をきちんと確保する、という視点をドンと持たないと現在の日本政府のように円高に対する対応策が何もないということになる。


「必要な時は断固とした措置」の「必要な時」はすでにもう1ヵ月以上前からその局面になっているのではないか?


太田忠の縦横無尽 2010.9.1

「どうして日本政府はこんなにも無策なのか?」

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