7月4日-不覚にも自分の誕生日を忘れた日
今日は不覚にも大恥をかいてしまった。全く不覚にも、だ。
今日7月4日は実は私の誕生日なのであるが、すっかり忘れてしまっており言われるまで全く気がつかなかったのである。さすがに、こういう経験は初めてである。40歳くらいまでは自分の年齢が現在何歳であるかはもちろん自覚していたが、42歳を超えたあたりから「あれ、今41歳だっけ、42歳だっけ?」とあやふやになり、自分の年齢に対して敏感ではなくなっていたことは確かである。10代や20代における1歳あるいは2歳の違いは大きいが、さすがに40歳を超えるとあまりそういうことは大した違いとして認識しなくなる。そういうこともあってだろうか、「あれ、今、45歳で次は46歳だったかな」などとちょっと前まで呑気に考えていたのだが、その肝心な日を完全にスルーしていた。いやはや、全くどうしたものか、という感じである。
毎週日曜日の午後は私はピアノのレッスンを受けており、それが終わると表参道にあるスポーツクラブに行く。スポーツクラブでは終了時間を妻と待ち合わせ(私は筋トレ、彼女は水泳)、終わった後は一緒にどこかへ外食に出かけるのだが、今日は見慣れない紙袋を提げていた。
「あれ、珍しいね。買い物にでも行ったの?」
「そうよ」
ということで、全く気にも留めていなかったのだが、いつもの行きつけである下北沢の「さわ」 という鉄板焼きの店(コストパフォーマンスが抜群のすばらしいお店。鉄板焼きであるが、おいしい泡盛が飲めて、絶品の大阪風お好み焼きも出してくれる)へ行った。最初に出されたビールを飲んでいるところで、
「お誕生日のプレゼントに買ったのよ」と先ほどの紙袋を差し出されたのだが、「へえ、友達に買ってあげたの?」と私がトンチンカンな返事をしたために、彼女は突然噴出してしまったのだ。「え、何がおかしいのか?」と一瞬思っていたのだが、「誕生日でしょ」と言われて、初めて気がついたという次第である。このやり取りを見ていた店の人たちは「え、自分の誕生日を忘れるなんて…本当ですか?」と大笑いしていた。
うーん、どうしたことか。なぜか自分の頭の中でも今日の日は真空地帯のようになっていたようだ。ただ、その理由が分からない。年を取ったということか。
「朝、デザート食べていたときに、今日はアイスクリームだけ?と言ったでしょ。ケーキがないと催促されているのかと思っていた」。
確かに、朝食後にコーヒーとデザートを食べるとき、必ずデザートにはアイスクリームにクッキーとかマカロンとか何か付いてくるのだが、それがたまたま今日はなかったのだ。「あれ、珍しいな」くらいの感覚で言ったのだが、妻は遠まわしに「誕生日のケーキはないのか」と言われていると思っていたようだ。でも、私の性格だとそんな遠まわしには言わないので、よけいに変に思っていたらしい。「大阪人だから、自分の誕生日にわざわざお好み焼きを食べに行くのかと思ったのよ」とも。別にそういうわけではない。それは変な理屈である。大阪人に対する誤解である。いやー、感覚のずれは知らないところで起こっているわけだね。
それでも、バカバカしい笑い話ですんだぐらいで別に困ったことではない(と気を取り直す)。今でも思い出すのは元会社の先輩の大失態である。大きなプロジェクトの終了日に「よし、今日は打ち上げでも行くか」ということで私たち後輩を引き連れて打ち上げに行ったのは良かったが、途中で「しまった」と血相を変えて見る見る青ざめていったのである。我々は心配になって「一体どうしたんですか?」と問うと、「今日はうちの奥さんの誕生日だった。すっかり忘れていた。今頃、家でカンカンに怒っているだろうな。こんなことは初めてだよ」とポツリと言ったのである。あの後、どうなったんだろうか?
それに比べると我が家はマシだ。自分の誕生日は忘れても少なくとも妻の誕生日は忘れていない。それにしても、昨年の7月4日はこのブログに「7月4日に生まれて」 という文章を書き、7月3日生まれのトム・クルーズが1日違いの映画に主演をしたが、さぞ7月4日に生まれてこなかった自分を後悔しているだろう、ということを述べていたのだが、いや、私の面目は完全に丸つぶれである。
太田忠の縦横無尽 2010.7.4
「7月4日-不覚にも自分の誕生日を忘れた日」