想像以上に現実となって襲いかかってくる「まさか」
4/30のブログの最後にこう書いた。
「(株式市場が)ゴールデンウィーク明けからどのような展開になるのかが楽しみである」、と。
そして、5月6日(木)の日経平均361円安に続いて、5月7日(金)の331円安。2日間で700円も日経平均が下げるという、実に過激で楽しくない展開となっている。
4月以降、調整色の濃くなる世界マーケットの中にあって、唯一高値を更新し続けていた米国市場は、それまでの反動が一番大きく出るという結果になっている。5月6日の日中取引時間にNYダウは998ドルも下げるという、普通は考えられない展開となった。そう、今の時代は「まさか」ということが人々の想像以上に現実となって襲い掛かってくるのだ。米国市場のように取引銘柄に値幅制限がないルールならば、売り注文が殺到し、買い注文がわずかの場合には株価が99%以上下がる銘柄も出現する始末である。こうした極端な価格での取引は結局のところ無効になったが、日本では考えられない出来事だ。ルールもなく、最高級のシステムで高速処理をする仕組みは「有事」にはとんでもないことを引き起こすことが露呈した。
さて、このブログを読んでいる個人投資家の方は、きちんと「リスク管理」をおこなっているだろうか。何もやっていなければ、悲痛な状況になっているはずである。こういう時になって私がいつも言っている「含み益は幻、含み損は現実」を認識しても、時計の針は戻せない。学ぶべき教訓は忘れることなく学習効果として次回に生かすしかない。
弊社のモデルポートフォリオ では「まさかのためのヘッジ戦略」を4月より実行しているが、効率的にワークしている。保有銘柄においては逆指値位置を大幅に飛び越えて下落する銘柄もあるため、含み益の縮小や含み損の発生という問題が出ているが、先物のショートにて現物株のポジションを大部分カバーして資産の目減りを阻止している。そして、急落するごとにショートポジションを買い戻して「利益確定」をおこないつつ、また日中の小反発したところでショートを振るという形での非常に単純な対処法である。
ギリシャ問題は容易に収まりそうにもない構造的問題である。これまでに何度「問題解決へ」というセリフを聞いたかわからないが、何も変わっていない。要するにEU諸国は単なる形だけの国の寄せ集まりに過ぎず、全く解決能力がないのは明白である。ギリシャ国債を保有する金融機関の恐怖、財政問題を抱えている他国における金融リスクの拡大、ユーロという仕組み自体への疑念などが噴出すれば、状況はさらに目も当てられないだろう。「そういうことは起こらない」というマーケット関係者のコメントを多く目にするが、想像以上の「まさか」はいつでも起こりうる。すでに日経平均は通常ありえないはずの-3σを超えているではないか。その時になって「備え」がなければ「憂い」に沈むばかりだ。
さあ、来週からの展開も楽しみにしよう。
太田忠の縦横無尽 2010.5.8
想像以上に現実となって襲いかかってくる「まさか」