ハイリスク・ハイリターンの正しい意味
1月中旬から大きく崩れた株式市場も2月いっぱいまでの低空飛行から抜け出し、3月よりようやく上昇基調入りしている。弊社の投資実践コース におけるモデルポートフォリオは1月+0.3%、2月+0.1%と何とかマイナスにならずに推移していたが、3月からは好調になってきた。低空飛行の局面で叩き売られた優良銘柄への投資を積極化し、ロングポジションを積み増したのがじわじわと効果を発揮している。
さて、2月21日のブログで「含み益は幻、含み損は現実」という話を述べたが
、今回は「リスク」がテーマである。「リスク」という言葉を聞くと、たいていの人は「危険」「損失」という言葉を思い浮かべるようだが、それは証券市場においては誤った認識である。証券市場におけるリスクとは「危ない」とか「損」というマイナスの概念だけを表す言葉ではない。
「リスク」は一言で言うと、「不確実性」のことである。簡単に言うと、「どうなるかわからない」ということだ。ハイリスクは「どうなるか分からない度合いが大きい」、ローリスクは「どうなるか分からない度合いが小さい」ことを示している。
そこで、日常でもよく使われる「ハイリスク・ハイリターン」について考えよう。これも「リスク」と同じように誤解されやすいのだが、「リターン」という言葉を聞くと、たいていの人は「利益」「報酬」というイメージを抱く。しかし、それも間違いである。証券市場におけるリターンは「投資収益率」のことを指し、「投資した結果、どれくらいの収益となるのか」について言っており、そこには利益も損失も平等に含まれる。
そうすると、「ハイリスク・ハイリターン」の意味するところが明快になると思う。すなわち、「どうなるか分からない度合いが大きければ、リターンは利益および損失のいずれの面においても大きくなる」ということであり、この対義語である「ローリスク・ローリターン」は「どうなるか分からない度合いが小さければ、リターンは利益および損失のいずれの面においても小さくなる」ということである。「不確実性」といっても、「良い方向が実現する」「悪い方向が実現する」の両面のことを言っているわけである。
さて、株式投資は「ハイリスク・ハイリターン」の代表選手である。個別銘柄への投資にしても、インデックスへの投資にしても、投資した途端に投資家はその投資対象の「不確実性」と付き合わねばならない。これは絶対に避けられないことだ。株価の不確実性、ファンダメンタルズの不確実性、さらに為替や景気動向にとどまらず政治や天変地異までありとあらゆる要素の不確実性が束になって襲いかかってくる。
「どうなるか分からないこと」がこんなにも多ければ、やはり株式投資というのは基本的には困難を伴うものであり、「忍耐」や「苦痛」とも付き合っていかねばならない。それは皆さんも日頃十分に経験していることだと思う。
ところで、今までのブログで何度も触れたように、今や株式投資は「リスク管理」ができるようになったおかげで、ハイリターンにおける「利益面の大きさはそのまままに」、一方ハイリスクにおける「損失面の大きさは阻止する」といった予防線を張ることができるようになったおかげで、「損小利大」の優位な枠組みを持つことができるようになった。利益はコントロールできないが、損失はコントロールできるのである。
先日、さる株式投資のセミナーにて話す機会があったのだが、こういう「リスク管理」の話をしても毎度のことながらあまり興味がなさそうだった。「これから期待できる投資テーマは……」などと話し始めると、今まで居眠りしていた人もパッと目覚めて、ペンを走らせて書きとめるくせに、肝心カナメの話には残念ながら無関心である。
太田忠の縦横無尽 2010.3.16
「ハイリスク・ハイリターンの正しい意味」