「インボイス」を止めるには・財政拡大を求めない3つの理由 | Tempo rubato

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お楽しみに!

 

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適格請求等保存方式、通称インボイス制度の是非が問われています。

 

事業者が消費税の仕入税額控除を受けるために、現在の制度に加え、「インボイス制度への登録」「適用税率」「消費税等の額」を記載した適格請求書の受け取りを義務付けるもの。

より正確な消費税収を把握する名目でしょうが、これまで免税事業事業者だった売上1,000万円未満の小規模・個人の事業者を「消費税の課税事業者」にする目的。

つまり、免税されている小さな会社やフリーランスにも収入から消費税を払わせる制度です。

 

まずは、どんな制度なのか基本情報を知っておきましょう。

端的にまとめられています。

 

元請け企業は、消費税の仕入額控除を受けるために、課税事業者との取引を優先することになります。小さな会社やフリーランスは、消費税を払って収入を減らすか、仕事を失う可能性を選ばざるを得なくなる。

自民党公明党が参院選で無風的勝利をおさめれば、来年10月から実施されることになります。

 

わかり易く説明したアニメがTwitterでシェアされていました。こちらもどうぞ。

 

 

さて、消費税というものは、害悪以外ありませんので廃止が適当です。

そもそも「税は財源ではない」のですから。

 

…結論を急ぐ前に、「税とは何か」を再確認しましょう。何事も基本が大事です。

 

税は貨幣価値の担保と景気の調整手段です。

 

税の役割

税は、古くギリシャ時代には「塩」に課税されていました。生活必需品で、一般人が生産できない特別なものだったため、支配者の権力を維持するために導入されたそうだ。支配者が発行する貨幣を、納税義務によって価値付け、支配領域で決まった貨幣を流通させるよう仕向けたわけです。

現代では、国家の枠組みを維持すると同時に政府・中央銀行が発行する貨幣の価値を担保し、国内でひとつの貨幣が流通する経済を維持するためのもの。これが税の役割であり本質です。

 

税の機能

税は所得を削ります。なるべく納めたくありません。その効果を利用して、あまり流通してほしくないものを抑えるためにも使われます。

環境保全のために、ガソリンの使いすぎを抑える税や、酒や煙草など嗜好品が氾濫するのを防ぐ目的でも、課税されています。

景気が良すぎて高インフレになるのを防ぐにも、所得税や法人税には高額になるほど税率が高くなる累進課税があります。

というわけで、税を課すと、消費や経済活動を減らすことができ、インフレ率の高進を抑えることができます。

 

消費税とは

消費税は、消費をすると所得が削られるため「消費を減らす」効果があります。

消費税は、消費を減らし、景気を冷やすためのものです。

消費増税は、より一層消費を減らし、景気を悪化させるものです。

インボイス制度は、更に一層消費を減らし景気を悪化させるでしょう。

誰かの消費が減れば、他の誰かの収入を減らします。

消費税には、良いことがひとつもありません。

デフレで景気が悪い時にこんなことをつづけるのは愚かにもほどがあります。

 

ちなみに、デフレーションとは、需要より供給が大きい経済状態で、物価の下落が2年以上継続すると「デフレになった」と言います。

所得が減って需要が減ると、供給過剰でモノが余ってしまい価格を下げざるを得なくなる。その合理的な行動が収益を減らし、賃金低下を招き、需要の縮小と賃金低下のループを引き起こします。

モノよりお金の価値が高まるので、使わずに溜め込むほうが合理的になります。

この状態が続くと貧困化が進み、デフレに強い分野との格差が拡大する。

そうなっているでしょう?

 

 

さて、税の目的や機能には、どこにも「財源」要素はありません。なぜでしょう。

 

政府は政策を実施するために先に支出をおこなう。スペンディングファーストです。

は国民の所得など経済活動の結果、あとから支払われる

 

政府支出をおこなう時には、まだ徴税していないので、財源にできません

前年分のプールでまかなえるわけもありませんし、不足分を赤字国債で賄うくらいなので、財源などどこにもありやしません。

「税が財源である」は事実無根の幻想に過ぎません。

 

税とは、国家の貨幣価値を担保し、景気や経済の方向性を調整する手段である。

税は財源ではありません。

 

では、政府はどうやって社会保障や経済政策をやっているのか。

 

財源はどこにあるのか

政府が国債発行すると(借金すると)、貨幣が生まれます。

財源は政府の借金、負債です。

 

以上。

 

そもそも、我々が納税するお金は政府の国債発行で生まれています。

国債という政府の負債がすべての源、財源なのです。

 

我々が銀行から融資を受けるの同じです。

我々が持っているお金は日銀の負債です。バランスシートには負債計上されてます。

我々が持っているお金…資産は、政府・日銀の負債…借金なのです。

 

国債(負債)は、次年度の借り換えでチャラになりますので、税で返す必要はありません。

自国通貨建ての国債は債務不履行(デフォルト)になりません。すなわち、日本は財政破綻しません。財務省も認めています。

 

もう一度書きましょう。

政府が国債発行すると(借金すると)、貨幣が生まれます。

政府の借金は、我々国民の資産です。

別の言い方をすれば

政府の赤字は、国民の黒字です。

 

単なる会計上の事実です。

 

イングランド銀行の説明はこうです。

商業銀行は、新規融資をおこなうことで、銀行預金の形式の貨幣を創造する。

 

全国銀行協会はこのように説明しています。

銀行は、現金を交付するのではなく、相手の口座に記帳する。貸出の段階で預金は創造される仕組みです。

 

同じことを言っています。

 

つまり、銀行は手元資金ゼロから貨幣を生み出せる、ていうかずっとそうしています。

政府が国債発行すれば、同額のお金が生まれます。財源なしで。

国債発行は同額の民間預金を創造します。定額給付金で10万円口座残高が増えたでしょう?

そういうことです。

 

さて、「税は財源ではない」となると、いろいろな疑問が生まれるでしょう。

 

Q:財源いらずなら好きなだけ財政拡大できるのか?

A:できません。

個人や企業の場合は、返済能力(供給力)が制約になります。

政府の場合は、財政拡大すれば景気は良くなりますが、加熱しすぎると悪いインフレになるので、そうならない程度に抑える必要があります。インフレ率つまり供給力が財政拡大の制約になります。

 

Q:インフレが止まらなくなったらどうするんだ?

A:インフレ抑制にはいろいろな方法があり、経済学の得意分野です。財政政策では、生産性向上への投資をおこなえば供給力が増して、インフレを抑えることができます。

また、財政支出を絞ることでも、インフレ加熱を抑えられます。

所得税や法人税の累進課税には、元々加熱抑制効果があります。これを強化すれば加熱を抑えられます。

 

Q:そんな良いことづくめの財政拡大なのに、どうして実行されないの?

A:わかりません。

 

そこが問題です。

財政拡大は確実に景気を改善しますが、30年近く忌避されてきました。

 

まず、財政拡大の否定、緊縮財政が何をもたらしたか書いておきます。

 

緊縮財政の弊害

緊縮財政を前提にした政策方針では、どこかの予算を増やせば他のどこかを削る。したがって、緊縮前提の方針は、様々な格差拡大を起こし、経済全体を衰退させ、貧困化させます。

消費税も緊縮財政の前提で導入され、増税されてきました。

 

・人口の多い都市部の開発を優先して、人口の少ない地方の予算が削られる。

   地方交付金が削られて地域格差が拡大しました。

・儲けやすい産業分野に予算を増やすため、そうではない産業分野への予算は削られる。

   経済環境が偏り、市場競争の激化やグローバル化で昔ながらの中小企業は衰退しました。

・人材育成予算は、政府が優遇したい産業分野に集中し、そうでない者は不遇になる。

・社会保障を維持するために、税負担を重くするか、社会保障の支給を制限することになる。

・予算の恩恵を受けられない者や企業は努力不足である、という自己責任社会。

・社会保障や老後の生活は、個人が努力して確保せよ、という自己責任社会。

・低所得者や若者のルサンチマンが高まって、所得間闘争や世代間闘争など社会が荒廃する。

などなど、悪いことのほぼ全ての原因は、緊縮財政に行き着きます。

 

緊縮財政路線は、簡単に言うと「こちらを立てて・あちらを潰す」路線です。

社会保障を立てて・消費税で所得を削り生活を潰した。

高齢者を保護しようとして・若者の負担を増やした。

若者の雇用を増やそうとして・賃金水準を低下させた。

生産性向上のため・中小企業は淘汰されるべしと見捨てた。

企業を合理化・効率化しようとして・統廃合や外国による買収を進めた。

成長戦略を立てて・成長しにくい分野を潰した。

などなどなど…

緊縮財政路線を変えない個別の改善策は、巡り巡って全体を潰しまくる悪化策になったのです。

 

 

税と財源のこと、緊縮財政とデフレ不況の弊害。

ここまであげた事柄は、公開データや事例に基づく客観的事実であってボクの考えや感想ではありません。

 

こんなに悪い事だらけの緊縮財政なのに、なぜ財政拡大への要求が広がらないのか。

ここからはボクの考えを書きます。

 

 

財政拡大を求めない理由

緊縮財政やデフレ不況を真剣に問題視しないのは、以下の理由が考えられます。

・浮かれたバブル景気の反動で、倹約節約こそ善であるという意識が広がった。

・デフレ不況の長期化で、賃金が上がらないことも物価が上がらないことも慣れてしまった。

・財政への誤解。「国の借金」や「財政破綻」を真に受けて緊縮財政は善であると誤解した。

 

コロナ禍のおかげか、緊縮財政は良くないという意識は高まっていると思います。

しかし、緊縮を問題視しても、財政拡大を忌避する心理は根深く存在し、改善策が表面的になっています。(くどいようですが、20数年間そのせいで何も改善できていない。)

 

考えられる理由は3つ。プラスひとつ。

1:貨幣と財政の仕組みを知らない。間違えている。

2:支持した政党や政治家がやらない財政拡大を推したくない。

3:財政拡大は政府の権力を強めてしまうから嫌だ。

+1:上記3つのどれかが思い当たっても、間違いを認めたくない。

 

1が大多数。2と3にも重なります。仕組みのことは専門的で関心を持ちにくいので間違ったまま固定化している人が多い。

2が、小泉-安倍路線の支持者で財政拡大を推さない、または関心がない層。

3が、リベラルで政治権力を嫌う層。国債発行で戦争をする国になるという直線的イデオロギーを持つ(日本共産党に顕著)。

+1は、3つのどれかに属し、間違いを指摘されても認めない頑迷な人…。

 

1の間違いを知っていて、2でもなく3でもない人というのは、物凄く少数派なんじゃないでしょうか。テレビや新聞の解説は間違っているのですが、そこに関心を持つ人はアマノジャク気質か経済オタクです。少数派が偉いとか言いたいわけではありませんが、実際に少数派ですよね。

 

+1が厄介なのは、信じてきたものが間違っていたと認めるのは、誰しも非常に難しいからです。ボクは、特定の政治経済思想で立場を作る必要がないですし、事実確認をして間違いを認めざるを得なかったのが割と早かっただけです。

1〜3のどれか+1は、Twitterなどで特定の政党や政治家や言論人を強く支持表明した人や、YouTubeで政治運動をしている人に多いでしょう。

公に持論を発信して立場を作っている人ほど、間違いを指摘されても認めることができなくなります。存在意義を否定されると思ってしまうからでしょう。ビジネスにしてる人はさらに認められなくなります。

(先日、デービッド・アトキンソン氏とプチ論争になりましたが、氏はまともな反論ができないままボクをブロックしました。)

 

しかしですよ。

悪弊しかない消費税を改めるには、導入と増税の前提である緊縮財政を改めないといけないのです。

政治権力の強化(大きな政府)自体が間違っているのではなく、権力の目的を間違えることが悪いのです。それを防ぐために憲法や民主主義があり、選挙があるのです。

たとえ、その人が良心の塊で主張が正しくとも、財政拡大を前提にしなければ、その主張は通らないか、(上に列挙した事例のように)悪化を呼び込むことになります。もう20数年ずっとそうでした。認めましょう。

 

財政拡大を主張し、消費税を廃止する政党や候補をひとりでも多く当選させ

選挙のない3年間で、財政拡大要求を強めなければいけないのです。

でなければ、個々の関心事はどれひとつ改善されません。

失敗の20数年が、30年、50年になるだけです。

 

事実に基づいて考え方を鍛えましょう。

 

国民を救うために財政拡大路線に転換せよ!

財政拡大は目的ではなく、すべての改善への第一歩です。

 

 

 

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