余裕のなさ | Tempo rubato

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アニメーター・演出家 平松禎史のブログ

 

 

 京都アニメーションへの放火。入院中の男性が亡くなって死者34名になってしまった。

重篤な方の状況はわかならないが、どうか命をとりとめてほしい。他けがをされた多くのスタッフも一日も早く回復できるようお祈りします。

 亡くなられた方々の無念。大やけどを負って、アニメを続けられるか…これまでの生活を取り戻せるかも…わからなくなっている方々の無念。ご家族の心痛。京都アニメーションで育ち東京などで活躍しているスタッフの悲しみ。アニメ業界全体への打撃。当日来動悸がおさまらない。あまりのことに心の整理ができないでいる。

 

 事件のことを仕事仲間と話した。京都アニメーションには直接仕事でお付き合いした方はいないが、会社をまたいだ交流が多いため、同じ業界でアニメを作っている人たちには仲間意識がある。直接つながりはなくとも他人事に思えない。会社の上層部とは、何かできることはないか、業界としてできることはないか、と話した。

 

 人材育成に熱心取り組んでいて、スタッフのほとんどが社員。朝からそろって業務をおこなうアニメ会社としてはめずらしい優良な環境だった。第1スタジオには20代前半のとても若いスタッフが多く、指導するベテランスタッフと一緒にアニメ制作に携わっていたと聞いた。東京に出ていきがちな人材を理想的な環境を整えて地元で活躍できるよう確保してきた、長年の努力が失われてしまった。これまで積み重ねてきた仕事の成果も焼かれてしまった。八田社長の無念と悲しみも想像を絶します。

 亡くなられた方々のご冥福と、京都アニメーションの力強い再建を祈るしかありません。 

 

 

 

 報道を追ってきて、ずっと心に引っかかっていることがある。それは容疑者が事件数日前にアパートで起こしたトラブルで言ったとされることば、「こっちは余裕ないんだよ。」だ。

 

 会社には以前から脅迫が届いていたとそうだが関連性はまだわからない。容疑者のいう「小説」は受け取っていないという。

 今回の放火事件にかかわらず、一方的な恨みや怒りを内部に抱え肥大化させる状況があったのではないか。ボクもブログに「死ね」と書き込まれたことがある。過去席をおいた会社も脅迫を受けたことがある。思い通りにならないことに一方的な恨み怒りを肥大させる余裕のなさ。それが今回に事件の背後に横たわっているのではないか。それは一時的な局地的なものではなく、長く広く社会に横たわっているのではなかろうか。

 選挙が近いため、この事件を自身の政治的主張に絡める言論人もいる。「敵」を煽る発言もある。なぜそんな必要があるのか。

 

 「敵」をつくりだし「敵」に依存する主体性のなさ…を自覚する。

 

 「誰が」でなく「中身で」考える。

 

 政治・経済をめぐってはっきりしてきた問題意識ですが、考え方全般、広く社会問題にも当てはまると書いてきた。

 

 自分自身、余裕のなさを実感する時がある。

 窮屈な社会状況や晴らし難い鬱憤に直面した時、「敵」をつくりだし「誰が」で思考を固定させ、憤りや恨みや怒りを増幅させ一点へと向けていく。その過程にはいくらでも自問し心を鎮める機会があるはずなのに、目に入らない。目耳を塞いでしまう。心の余裕のなさ。

 

 

 放火犯が憎い。しかし、憎んでも憎んでも失われた命はかえってこない。

 

 どうすればよいのか。何を作ればよいのか。無力感に襲われる。まったくの無力だ。

 

 

 

 できるだけ話をしたほうがよいと思う。話題にしにくいことだけど、近くの人と話すのがよい。抱え込んでしまうとつらさに心が折れてしまう。受け止めて、それぞれなりの心の整理をするために。

 会社としてもスタッフに語りかけ、同じような事件や災害時のことも考えて、防止策や軽減策を施し周知して、話をし合う環境を作るのがよいと思う。抱え込んでしまわないように。

 

 インターネット、SNSは一方的なぶつけ合いになりがちです。

 現実の人と話すことをおすすめします。