(今度こそ)海外経済学者の提言・その1 | Tempo rubato

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アニメーター・演出家 平松禎史のブログ



前回と同じところからスタートします(^_^;)

3月半ば、政府は「国際金融経済分析会合」を開き、海外の経済学者を招いてお話を聞きました。
16日にジョセフ・スティグリッツ氏
18日にデール・ジョルゲンソン氏
22日にポール・クルーグマン氏
・・・でした。

日本の経済学者や評論家も3氏と共通する提言をしていました。
特に、安倍政権の政策に(内政干渉にならないよう配慮しながらも)批判的なスティグリッツ氏、クルーグマン氏と共通する、宍戸駿太郎氏、青木泰樹氏、三橋貴明氏、藤井聡氏、島倉原氏などが、繰り返し警鐘を鳴らし、前向きな提言を繰り返してきたにも関わらず、なぜに外国人に意見を聞くのか?
あいかわらず外圧がないと方針を変えられないんでしょうか・・・。

などとグチっている場合ではありません。
嫌味でも何でもなく、敬意をはらいつつうかがいましょう。
考える機会を頂いたのですから。

いつものように 太字イタリック体 が記事や資料からの引用です。

ジョルゲンソン氏の提言
ジョルゲンソン氏のニュースが目立たないのは日本での知名度が高くないからでしょうか?
分析会合より前の日本への提言はこちらで記事になっていました。
日本経済の「3つの大きな命題」=デール・ジョルゲンソン教授 ロイター
http://jp.reuters.com/article/tk0732778-teigen-jorgenson-idJPTYE81S02F20120301
・規制改革で生産性を上げ潜在成長率を高めよ
・エネルギー関連諸税、消費税の比重を上げよ


見出しになっている文言です。
もう一つ、電力市場についてありますが、一つ目の規制改革とおおむね同じで弊害のほうが大きいのも同じなので割愛します。

正直言って
ジョルゲンソン氏の言っていることを20年やってきた結果が今の日本経済なんですよね。

良くなってますか?

悪くなっているから、政府は諸外国の叡智にたずねているわけですが・・・。
賛同できるのは
投資にかかる税負担を軽減すること
くらいでした。

ジョルゲンソン氏の提出資料です。当然ですが上記の記事とも重なっています。
資料(1)https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kokusaikinyu/dai2/siryou2.pdf
資料(2)https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kokusaikinyu/dai2/siryou4.pdf

もっと詳しくとりあげたほうが良いかと思いましたが、今更感がありすぎて資料を読むだけで十分かな、と思いました。
中国経済の見方はホントにこれで大丈夫なんでしょうか。
この20年間の日本の状況とも齟齬がありすぎるし、どうにも頷けない内容でした。

まぁ、財務省さんはジョルゲンソン氏の意見がありがたいんでしょうけどね。(´・ω・`)

スティグリッツ氏の提言
3氏とも議事録がまだないんですが、内容はPDF資料でうかがい知ることができます。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kokusaikinyu/dai1/siryou2.pdf

1~12ページまでは世界経済の状況分析。
日本だけでなく、アメリカもヨーロッパも中国も、低迷期にある。

以下、重要と思うものをとりあげます。

中心的課題の診断
• 世界的な総需要の不足。
• それと相まって、各国において、非貿易セクターへの支援は不十分。
• 債務・金融化への過度の依存。
• さらに広くみれば、約30年前に市場経済のルールの転換
(税制の再設計、ずさんな自由化)のプロセスが多くの
先進国で始まった。これらは、当初の目論見に反して、
更なる経済成長率の低下、不安定化、不平等化を招いた。


総需要の不足とは、「消費・投資の縮小」と言い換えても良いと思います。
最新の経済統計を見ても、日本経済は総需要の不足で経済が停滞していることがわかります。

その状況下で「やるべきでないこと」「積極的にやるべきこと」が提言されています。

• 深刻な停滞時において、金融政策が極めて有効だったことはこれまでにない。
唯一の効果的な手段は財政政策


政府支出の増加。部分的に税で賄われたものでも経済を刺激する。
・教育、若者の健康への支出は投資
・インフラとテクノロジーへの投資


資産効果に注目せよ、ということですね。
負債つまり「借金」にばかり目が行きがちですが、政府支出の増加は資産効果とともに経済に良い刺激をもたらす、ということです。

緊縮財政をやめる
債務が一定の閾値を超えると経済成長が低下する、といった考えの正しさは否定されている。

ラインハート&ロゴス論文が誤りだったという「事件」を指していますね。
「国の借金で破綻する!」説は間違いでした。

法人税減税は投資拡大には寄与しない。

• TPPは悪い貿易協定であるというコンセンサスが広がりつつあり、米国議会で批准されないであろう

印象的なのは、安倍首相のポスターで使用された「この道しかない」を用いた最終章。
この道しかない
緊縮財政をやめる。

他にもいろいろありますが、全文において、「緊縮財政をやめる」と、かなりしつこく繰り返されているのがわかります。
それほど、アメリカや欧州や日本(通貨発行権を持つ国)にとって「緊縮財政をやめる」ことが重要だということですね。

負債が増えると経済成長が低下するという説(「国の借金で破綻」)も学術的に否定されています。
経済停滞(デフレ)期に供給力を高める(成長戦略を推進する)と逆効果になることも指摘しています。
政府支出を増加(財政出動)することが重要なのです。

TPPへの似て非なる提言

大手新聞では、スティグリッツ氏のTPP批判がほとんど無視されているようです。書いてたのは日本農業新聞と現代ビジネスくらいですかね。なぜなんでしょうねぇ・・・。

ジョルゲンソン氏もスティグリッツ氏も、農業から他の製造業などへの転換を促すことを提言しています。
しかし、決定的な違いがあります。
ジョルゲンソン氏は、TPPなど規制改革によって「岩盤規制」を壊すことを言い
スティグリッツ氏は、国内で移行を促す方向で言っている。
ジョルゲンソン氏のやり方では海外企業が入ってきて国内の需要や雇用が奪われる可能性があるのです。
なので、スティグリッツ氏はTPPに反対なのですよね。

とはいえ、日本の農業、特に稲作についてスティグリッツ氏の提言にそのまま頷くことはしかねます。
確かに、食生活は多様化して以前ほど米に頼ってはいないものの、日本人にとって米は(稲作を通じた宗教観など)文化の根幹ですからね。
食用米だけでなく、お酒のお米もものすごく大切。

もし、他製造業への移行を促す(選択肢を増やせる)としたら経済の底上げが叶ってからで良いと思います。


スティグリッツ氏は、以前から格差の解消を訴えていました。
雇用問題についても多く提言されていました。
上記の資料では、世界同時経済停滞を先進諸国が協力して乗り越えていこう、という意志が強く表現されています。

この考え方は、アメリカ大統領候補ではサンダース氏に近い。
トランプ氏もかなり重なっています。
トランプ氏は過激な物言いで賛否両論あります。政治の経験もないですが、ビジネスマンとしての嗅覚は鋭いのだろうと思います。支持を集めているのは話題性だけではないのですよね。


日本のマスメディアは夏の選挙を絡めた政局的な報道に偏っているようです。いつものことですが…。消費税増税がどうなるかは確かに重要ですが、経済問題はそれだけではありません。
TPPもいまだに重大問題ですから、今回とりあげたジョルゲンソン、スティグリッ両氏のTPPに対するスタンスの違いを観察し、日本国民自身が考える必要があると思いました。


クルーグマン氏については次回。



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