今日はシルヴァン君と昼食。パリをぶらぶらした後、リュクサンブール公園でおしゃべり。話題はフランスと日本の就職事情、および職業観へ。なお、今日の会話はすべてフランス語でした。
1)フランスと日本の就職事情。日本のことを少し知っているフランス人と話すと大抵、「日本人の学生は大学で学んだこととまったく関係のない職業に就くらしいね」と、いかにも「それっておかしいよね」といった雰囲気を漂わせつつ指摘される。こういう風に言われると、「なるほど、フランスでは大学で学んだことと就職とがちゃんとリンクしているのか。なんて素晴らしいんだ」と思ってしまいがちである。だが、実はそうでもないようです。
大学で学んだことと就職とが一貫性を保っているということは、逆に言えば大学で学んだこと以外の職業に就くことができない、つまりディプロム(diplome, 大学の卒業証書)が職業の選択の幅を強力にしばってしまうということでもある。実際、例えばデザインを勉強した学生がデザイン事務所以外の面接に行くと、「きみは大学でデザインを勉強してたんだろ。うちでは採れないよ」と言われるし、だからと言ってデザイン事務所の面接に行くと「きみには経験がないからうちでは採れないよ」と言われてしまうらしい。それでは研修生(stagiaire)からはじめようとしても、給料は月に300~400ユーロ(四万五千~六万円)程度、しかも二年くらいで使い捨てにされてしまう。日本のように、文学部を出てからSEになるなんてことは、フランスではありえない。
2)フランスと日本の職業観の違い。フランス人と話していると、「ところで日本人はとてもよく働くらしいね。週末も働いてるんだろ」というようなことをよく言われる。その上で、「フランス人にとって大切なのは仕事以外の時間、つまり余暇なんだよ」と、少し自慢げに教えてくれる。それでは彼らが余暇、例えば週末に何をしているかというと、シルヴァン君いわく、金曜の夜は遊びに行き、土曜の昼間は寝ていて、土曜の夜はまた遊びに行き、日曜はずっと家か公園でぼんやりとしている、とのこと。素朴な疑問。そんなんでよく飽きないね?
「労働」、あるいは「仕事」はフランス語で「travail」(日本語風に発音すれば「トラバーユ」)と言う。「Travail」の語源を辿ると「torture」、つまり「拷問」や「苦しみ」といった言葉にたどり着く。アダムとイブが楽園を追い出されたときに課せられたのが「travail」だった、という考え方もそこには絡んでいるようです。
かなり乱暴な言い方をすれば、フランス人にとって仕事をしている時間は拷問以外の何ものでもない。彼らは、余暇という「本当の人生」のために仕方なく仕事をしている。ものすごく強引な断定だけど、彼らと話していると、どうしてもそういった考え方を感じてしまう。
しかし、仕事そのものに喜びを見出せればそれがいちばんハッピーなんじゃないの、と僕なんかは思ってしまう。身体的にはたしかにきついけど、ストレスがかかって胃だって痛いけど、「きょうも一日よく働いたな」と思いながらぐびっと飲み干すビールもなかなか悪くないものだよ、そういう充実感もあるんだよ、って。たしかに、働きすぎて体を壊したり、過労死してしまったら本末転倒。ただ、二日間の楽しみのために五日間も苦しむという考え方よりも、適度な休息をはさみながら一週間を通して充実感を求める、という考え方のほうが楽しい気がする。
その他、近況報告。サイードの『オリエンタリズム』を読み終える。