『マンガでわかる日本の食の危機』は、日本が直面する深刻な食料問題を、家族の物語を軸にマンガ形式でわかりやすく伝える一冊。
食の「量」と「質」両面の危機を浮き彫りにし、背景にある農政や国際情勢、そして企業の思惑までを解説している。
まず注目すべきは、日本の食料自給率の低さ。
カロリーベースで38%という数字は先進国で最低レベルだが、実際には種子、飼料、肥料などの多くを海外に依存しており、真の意味での自給率は10%にも満たない。
食料の供給網が国際的なショック──コロナ、気候変動、ロシア・ウクライナ戦争、中国の買い占めなど──で簡単に崩れることが明らかになった。輸入依存のままでは、危機時に国民が食べる物さえ手に入らなくなる可能性がある。
「質」の面でも日本は脆弱。
海外で禁止された農薬や添加物が、日本では規制緩和によって逆に拡大している。
農薬の残留基準を大幅に緩和し、遺伝子組み換えやゲノム編集食品の表示義務も極めて緩い。その結果、日本は“農薬・遺伝子操作食品の処分場”のような扱いを受けている。
食の安全が脅かされているにもかかわらず、国民の多くはその実態を知らされていない。
さらに、日本の農業や酪農を支える現場も限界を迎えている。
コスト高騰、買いたたき、価格競争により、酪農家は廃業を余儀なくされ、牛乳を捨てたり、飼っていた牛を手放す事態にまで追い込まれている。
政府の政策は輸出企業に有利な自由貿易路線を進める一方で、国内の小規模農家や自給的農業への支援は極めて乏しい。
儲からない農業を誰が継ぐのかという根本的な課題も放置されている。
千葉県の酪農家・金谷雅史氏のインタビューも盛り込まれており、現場のリアルな声が生々しく伝わる。
「牛を育てても赤字」「補助金があっても足りない」「搾った牛乳を捨てるほどの逆境」など、日本の酪農の崩壊寸前の現実を知ることができる。
この本が伝えるのは、「知らなかった」では済まされない現実。
食は命に直結する問題であり、国家の根幹。
海外から安い物を買えばよいという考えは、もはや通用しない。食料安全保障はエネルギーや防衛と同じレベルでの国家戦略であるべきだと訴えている。
では、個人にできることは何か。まず、国産・無農薬・顔の見える農家の食材を選ぶこと。
悪あがきではあるかもだけど、自宅の庭で少し野菜を作っている。
これはネギだが、ネギを食べた後の根っこが残っていたので、それを再び土に還した🍂
赤しそは去年買った種の余りを植えてみた。
次に、地元の農家を応援すること。さらには、食の安全に関する知識を学び、発信すること。
小さな行動でも積み重なれば社会を動かす力になる。
本書は、単なる問題提起にとどまらず、「行動につなげる」ことを目的としている。
深刻な現実を変えるのは、政策だけでなく、消費者一人ひとりの意識と行動であるというメッセージが強く込められている。
そして質素な食事もまた良かったりする。
日本人は粗食で十分なのかもしれない。




