道草---その2--- | 【実録】ネコ裁判  「ネコが訴えられました。」

道草---その2---

翌朝、朝食の際にイチロウに尋ねてみる事にした。


今までの花と比べて、あのパンジーはおかしすぎる。

どうみても誰かが育てた花だろう。


タロウ     「なぁ……。」

イチロウ    「なに?」


と切り出したが聞きづらい……………。


タロウ     「学校帰りに、いつも母さんに花摘んできてるだろ。」

イチロウ    「うん。」


と照れ笑い。


タロウ     「あのさ……この昨日の花なんだけど……。」


とテーブルの上のパンジーを指す。


イチロウ    「うん。どうしたの?」

タロウ     「あのさ……。」


コーヒーを煎れていたユミコが……


ユミコ     「どこで取ってきたのかなーっと思ってさ。」


と助け舟を出す。


イチロウ    「ああ………あれねぇ………うんとねぇ……。」


と歯切れが悪い。


ユミコ     「お母さんに教えてくれるかな?」


優しくもう一度聞く。


イチロウ    「ええとねぇ……確かねぇ……。」

ユミコ     「うん……。」

イチロウ    「公園のぉ……。」

ユミコ     「公園の?」

イチロウ    「横の駐車場のぉ……。」

ユミコ     「駐車場の?」

イチロウ    「その隣の家の前。」


………やっぱり………。

どうやら人様の家の前の玄関先のパンジーだったらしい。


ユミコ     「あららぁ……。」


とワタシの顔を見る。


ユミコ     「あのね……イチロウ……。」

イチロウ    「うん?」

ユミコ     「この花はそこの家の人が育ててた物だったんだよ。」

イチロウ    「あ………うん………。」

ユミコ     「わかる?大事に育ててた物なんだよ。」

イチロウ    「……………。」


さて……どうしてものか……。

うなだれたイチロウの横で、ユミコと顔を見合わせる。


イチロウのした事はいけない事だ。

だが、母ユミコを想う気持ちもわからなくもない。


頭ごなしに怒るべきではないし、かといってこのままと言うわけにもいかない。

暫くの沈黙があった後、ユミコが切り出した。


ユミコ     「ねぇ……タロちゃん。」

タロウ     「ん?」

ユミコ     「イチロウが学校から帰って来る頃に、一旦家に帰ってこれない?」

タロウ     「あ……うん……昼が終わったら大丈夫だけど……。」

ユミコ     「じゃあそこのお家に3人で行ってみよう!」


「謝りにいこう」と言わない辺りがユミコらしい。

うなだれっぱなしのイチロウを気遣っての事だろう。


ユミコ     「そこの家は、花がいっぱいあるの?」

イチロウ    「うん……。」

ユミコ     「そりゃあ一回見に行かないと!!」


ニコニコ笑って返す。

まるでピクニックにでも行くような感覚だ。


ユミコ     「じゃあ2時半に出発ね。」

イチロウ    「うん……。」

タロウ     「じゃ……一旦帰って来るよ。」




時間になり、イチロウは学校に出掛けていった。

ワタシももう少ししたら店へと向かおう。


今日は遅番だが、昼の仕込みが少々気になる。

それに昼に一旦抜けるのであれば、少し早めに働いた方が言い易い。


笑顔で見送ってくれた身重のユミコだったが、心の中は昼過ぎの予定でいっぱいだ。





以下次号。