母の心配 | 【実録】ネコ裁判  「ネコが訴えられました。」

母の心配

翌日の朝、母ヨシコに昨日の顛末を話す。


昨晩話そうとも思ったのであるが……どうにも鬼頭さんが離してくれなかったのでノビノビになってしまった。


ヨシコ     「大丈夫なのかい?」

タロウ     「なにが?」

ヨシコ     「いや……。」


と言葉を濁すヨシコ。


ヨシコ     「アンタがどうしても行かなきゃいけないのかい?」

タロウ     「と……言うと?」


腕を組んで悩むヨシコ。


ヨシコ     「例えば……斉木のおじさんに代理を頼むとか……。」


斉木さんとはウチの常連さんである。


タロウ     「どして?」

ヨシコ     「アンタが行って……また揉めたりしないかい?」


昨日の事の顛末を全て話した結果……川畑ワンルーム玄関前で第二ラウンドの匂いがしたのであろう。


タロウ     「大丈夫だよ。」

ヨシコ     「本当に?」


くどいヨシコ。


タロウ     「とりあえず裁判所が決めた20580円は払う意志があるみたいだし……。」

ヨシコ     「その他は?」


用件2と3の話である。


タロウ     「……いや……その他は……。」

ヨシコ     「いや~~~~~~~。」


首を大きく横に振るヨシコ……。


ヨシコ     「だから……そこでもう一回……揉めない?」

タロウ     「いや…大丈夫でしょ。」

ヨシコ     「いや~~~~~~~。」


いったい何がそこまで心配なのか……。


タロウ     「正直に言ってよ。なにが引っ掛かるのよ?」


ストレートに聞いた。


ヨシコ     「問題はアンタが殴らないかどうか。」

タロウ     「……………。」


あ~~~。母様。

大丈夫です。

ナイフみたいに尖ってた……そんな時代は終わりましたから……。


タロウ     「大丈夫だって……今は妻も子供二人もいるんだし……。」

ヨシコ     「……そうかい?」


……まだ納得していない様子。


ヨシコ     「昔みたいに、なんにでも噛み付くトキントキンじゃないにしても……

         鈍器で殴るような言葉のボディーブローは健在だろ?」

タロウ     「あ………う………。」


母は全てお見通しである。


タロウ     「まぁ……それも今日は封印していくから……。」

ヨシコ     「絶対だよっ!約束だよっ!」


もうこれ以上、事をややこしくしないでくれという母の精一杯のアドバイスであろう。






午後6時5分前……。


タロウ     「じゃ……ちょっと行って来るから……。」

ヨシコ     「約束だよっ!忘れるなよっ!!」


散々念を押すヨシコ。


「息子がそんなに信用できないのか!!」と腹が立ったので逆に聞いてみる。


タロウ     「あのさーーー『オレが殴られるかも』とか心配しないわけ?」

ヨシコ     「あ……。」


驚いた顔で……。


次の瞬間大口開けて……。


ヨシコ     「あっ……はっはははっははははは……そんなのありえないし……。」


失礼である。


タロウ     「どういう意味?」

ヨシコ     「いや~~~~~無理でしょ……物理的にホントにありえないし……。」


更に大口開けて大笑いである。

なので更に聞いてみる。


タロウ     「でも……今日びは……刺されるかもしれないよ……。」

ヨシコ     「いやいやいやいや………それもありえない……なんなら腹に週刊ジャビン巻いていけば?」


むぅ……。


タロウ     「ひょっとしたら撃たれるかも……。」

ヨシコ     「ま……それはそれで……ユミコちゃんもOKでない?

         保険が随分おりるから……。」


ああ……この母に「息子が心配」という文字は無いらしい……。



もう時間である……。


タロウ     「じゃ……ちょっと行ってくる。」

ヨシコ     「ああ……。」


実にあっさりの口調である。

これからワケノワカランチンの原告川畑と直接会うというのに……。


ドアを開けて店から出ようとするワタシに……。


ヨシコ     「ちょっとアンタ!!……これ持って行きなっ!!」

タロウ     「んあ?」


ちょっとは心配なのか?と思って振り返ったその目に映ったものは……。


保険証……。


タロウ     「なにこれ?」

ヨシコ     「や……もし……何かあったら……その足で…裏のカモメ外科に行けばいいかなっと……。」





以下次号。