理解力 | 【実録】ネコ裁判  「ネコが訴えられました。」

理解力

川畑      「回覧に回す時……判決文は勿論全文つけるんですよね?」


何を聞いてくるかと思えばそんな事か……


タロウ     「勿論、全文つけますよ。読むかどうかは読む人の判断ですが……。」

川畑      「絶対ですよっ!絶対全文つけて下さいよっ!!」


勝ち誇ったように「全文掲載」を主張する川畑。


川畑      「ハハ……ハハハハハ……。」


少々卑屈に電話の向こうで笑い声を上げる川畑。


川畑      「あなた……本当に判決文を理解してますか?」


お……またまた急に強気に出た。


タロウ     「ええ……勿論理解していますが……。」

川畑      「ふぅ…………。」


溜め息をひとつつくと……。


川畑      「あの判決文には、ワタシの主張が正しかった事がしっかり書かれてますよ!!

         それを公開するって事ですよ!!

         良いんですね!!?」


「ブッ………!!」

思わず噴き出してしまった。


多分あの事をクローズアップして言っているのであろう……

あろう……が……わざと分からないフリして聞いてみた。


タロウ     「え……???………どこにですか?」

川畑      「あなた全文キチンと読んでないんですか???」


即答で返す川畑……。


物凄い強気である。

ビックリするくらいの強気である。


タロウ     「え?読みましたけど……。」

川畑      「ふぅ………。」


またひとつ溜め息をつく川畑。

どうやら強気になると「溜め息」で余裕を演出する癖らしい。


川畑      「いいですか?ちゃんと聞いてくださいよ!」

タロウ     「ええ……。」

川畑      「『ネコが車の上に乗っていた事実』があると判決文では明記されてます。」

タロウ     「ええ……。」

川畑      「『ネコが山田家の中でエサを食べていた事実』もあると判決文では明記されています。」

タロウ     「ええ……。」

川畑      「『首輪をしていて飼いネコの振る舞い』とも明記されています。」

タロウ     「ええ……。」

川畑      「そして……アナタがエサを食べられる環境を作っていながら……

         その防御措置を充分にとっていなかった事は……明らかなマナー違反であると

         書かれているじゃないですか!!!」


ああ……やっぱりそうきたか……

まさに予想通りのドンピシャリである。

久しぶりに聞いたなー「食べてます理論」……。


頭の中を全3回の口頭弁論が昔見た映画のように思い出される……。


タロウ     「あの……判決文読みました???……全部……???」


とりあえず基本どおりにツッコんでみた。


川畑      「ええっ!!勿論っ!!!」


即答……。


ここまで見事に「読み飛ばし」をしてくれるとコチラとしてはもう手の施しようが無い……。

天晴れである。……………。


タロウ     「2ページ目と3ページ目が御飯粒でくっついてて読み飛ばしたとか無いですか?

         ………大丈夫ですか???」


ちょっと皮肉ってツッコんでみた。


川畑      「当たり前ですっ!!!……何言ってるんですか!!!」


またも即答……。

コチラとしてはもう……笑いを堪えるのに必死である。


タロウ     「いいですか……アナタが今主張した部分の間に『しかしながら……』で始まるワタシの

         反論事実が認定されていたはずなんですが……。」

川畑      「それがどうしたって言うんですか!!!?」


いや……それがどうする。

一番どうする。


タロウ     「その中には、ワタシが他のネコを飼っていて……そのネコの為のエサであり……

         該当ネコに関しては保健所に届け出ているって書いてませんでしたか?」

川畑      「書いてありましたかね?」


「全部読んだ」と言ったばかりで……とぼけてどうする。


タロウ     「それらの事実を踏まえた上で『該当ネコはワタシの物とは言えない』と書いてありますが?」

川畑      「……………。」

タロウ     「……まだ何か?」


軽くカウンターのジャブを顎に当ててみる。


川畑      「『確かに被告の行動はマナー違反と言える』とあるでしょうっ!!」

タロウ     「え~っと……『善解すれば』の後ですか?」

川畑      「そうですよっ!!!」


必死の反撃である。


……………。


タロウ     「ふぷっ!……アナタ……アナタの方こそ……ちゃんと全文読みましょうよ。」

川畑      「なにがですか!!!?」

タロウ     「『善解』の意味……分かってますか?」

川畑      「どういう事ですか?」

タロウ     「説明しましょうか?……用語説明……。」

川畑      「分かってますっ!!そんな事くらい!!」

タロウ     「本当にいいですか?……ねぇ……本当にいいですか???」


さらにワン・ツー。


川畑      「まぁいいです……まぁ……そんな事はいいです。」


まぁ良くないが……何とかクリンチでこの場を脱したい様子の川畑。

必死で論点を変えようとしているので、笑いを堪えて黙って聞く事にする。


タロウ     「他に何か?」

川畑      「判決文の『アナタの主張の部分』です。」

タロウ     「はぁ……。」

川畑      「いいですか?……『保健所に届け出た』って項目もアナタがうまく

         ごまかしただけで……ワタシの推測が間違っていたとは書いてありませんよっ!!」

タロウ     「……………。」


もう……どうしよう……どうしよう……。


「間違っている」とは書いてないけど「あっている」とも書いていない。

「ネコ摩り替え論」は、あまりの大技ぶりに……裁判官も無視したのであろう……。


タロウ     「だったら推測を裏付ける証拠を出さないと………。」

川畑      「………ですが……そんな時間の余裕が無かったんですから……!!」

タロウ     「判決に不満だったら控訴すればいいでしょう………。」

川畑      「ワタシはアナタと違って『暇』じゃありませんからっ!!!」


………『暇』………???


「今、『ヒマ』って言いましたか?」


この言葉がカチンと来た。

いや……ガチンと来た。


今の話は半分笑いながら余裕を持って聞いていたが……この一言は許せない。

まるでワタシが暇つぶしの為に出廷してたようなものの言い方である。


そして裁判官も書記官も司法委員のおじさんも……

ウチの家族も……浦野さんまで「暇人」扱いされたかの様な言い方である。


タロウ     「『暇』って……あんた……いきなり訴えて……法廷に引っ張り出しといて……よくそんな事

         ……言えますね……。」

川畑      「だって……訴えるしかないじゃないですかっ!!」


すごい論理だ。

だがコッチも『暇』発言でガチンと来ている。


火がついている。


タロウ     「その『訴えるしかない』って発想がどうかしてるんじゃないですかっ!!」





以下次号。