愛想笑い | 【実録】ネコ裁判  「ネコが訴えられました。」

愛想笑い

「………あ………」ではない。
こっちは既に30分近くも待っている。


ご自慢のBMでかっ跳んで来ればいいではないか……。


タロウ     「なにやってんですか?」
川畑      「あ……いや……その……ワタシのやらなきゃいけない事……

         やってからでもいいですか?」
タロウ     「………………。」


「はぁ?」


「事情を話してすぐに行く」と言うからワタシもワザワザ車を出してガヌトまで来たというのに……

いったいどういう了見だろう。


川畑      「だいたい……どうしても行かなきゃならないですか?」
タロウ     「………………。」


「はぁ?」


「場所を変えてくれ」と言うからワタシもワザワザ車を出してガヌトまで来たというのに……

いったいどういう了見だろう。


川畑      「話だったら……電話でいいじゃないですか?……そうでしょ?……ハハ……」
タロウ     「………………。」


最後が「付加疑問文」である。
英語で言うところの「aren't you?」ってやつだ。
しかも「ハハ……」という人を小馬鹿にしたような含み笑いのオマケつきである。


「殴っていい?……ねぇ……殴っていい???」
心の中で自問自答した……何回も何回も……。


「黙って聞いてりゃ漬け上がりやがって………っ!!!!!!!」

そんな思いをキュウキュウに押し殺して……こう聞き返した。


タロウ     「あのさ………それ……マジで言ってんの…………ねぇ?」
川畑      「………………。」


………………。

………………。

………………。


タロウ     「こっちは既に30分近くも待ってるんですけど……ねぇ?」
川畑      「………………。」


………………。

………………。

………………。


タロウ     「まぁ……いいですわ……だったら電話で話しますわ……。」
川畑      「………………。」


最大限の譲歩である。


タロウ     「とりあえず……さっきの話の続きですが……営業妨害と威力業務妨害についても

         説明を聞きたいですか?」
川畑      「あ……いえ……まぁ……いいです……はい……。」


コチラの怒り具合が電話を通じて伝わったのであろうか……少々自分の態度に問題があった事を

自覚しているかの様子である。

「すいません」の一言が無いのはタチであろう。


タロウ     「じゃ……用件を伝えます。」
川畑      「………はい……。」


さて……仕方が無いのでミッションQの内容を電話で話す事にする。


タロウ     「まず用件1……訴訟費用の負担……裁判所が定めた20580円の支払い。」
川畑      「………………。」
タロウ     「この申立書も同封したんですけど……どうして本人限定の書留を

         受け取らなかったんですか?」
川畑      「いや………そんな書類が着てた事……知らなかったんですよ~~~ハハ……。」
タロウ     「あ……そう……。」


愛想笑いには誤魔化されない……。
それに「来た来ない」で水掛け論を展開するつもりも甚だ無い。


タロウ     「まぁ……いいです……裁判所からの訴訟費用確定の特別送達は

         受け取っているんですよね?」
川畑      「ええ……それはキチンと届きましたから……あなたからの書留は知らないですよ~~~

         ハハ……。ちゃんと住所間違いないですか?……ハハ……。」


だからその愛想笑いはやめろ……。
それに水掛け論を誘うな………。

魂胆は丸見えである。


ワタシを少しでも怒らせて「だったら訴える」と言わせ……話を早く終わらせるつもりであろう。
残念だが、その手には乗らない。


タロウ     「知らないなら知らないで結構です。今からその内容を説明申し上げますから。」
川畑      「………………。」


手の内を悟ってしまえばこっちのものである。


タロウ     「この用件1は裁判所が定めた時点であなたの債務ですから……

         これはキッチリ払っていただきます。」
川畑      「あ……はい……これは……もちろん……ハハ……。」


とりあえず事務的に進める。


タロウ     「あと2件……計3件ありますから……。」
川畑      「あ……はい……。」
タロウ     「用件2……。あなたの起こした平成17年(ハ)1345号の為に、

         ワタシが実際に被った金銭的費用の請求です。」
川畑      「………………。」
タロウ     「弁護士さんへの相談費用……書類作成に掛かったコピーや事務用品の購入費……
         出廷並びに書類作成の時間的負担……ワタシの抜けた穴を埋めるためのバイト代……。」
川畑      「………………。」
タロウ     「全部で14万ちょっとですが……裁判所の定めた分を相殺して12万とちょっとです。

         この分を請求します。」
川畑      「……は………でも……それは……。」


何か口を挟もうとした様子である。


タロウ     「何か言いたい事がありますか?……まぁ……いいです……言いたい事は、コチラの話を

         全部聞いてからにして下さい。まだワタシの言いたい事は終わってませんから……。」
川畑      「だからっ!!……それはっ!!」


挟むタイミングで挟ませてもらえないのがストレスだったのであろう。

語尾が若干キレてきた。


タロウ     「だから……あとで聞きますからっ!!

         ……人の話を最後まで聞いてからにして下さいっ!!」
川畑      「………………。」


黙った。


タロウ     「これはあくまでも請求です。……あなたには支払う選択も支払わない選択もあります。」
川畑      「………………。」
タロウ     「『支払わない』と言うのであれば……ワタシはあなたがロクな事実確認もせずに

         提訴した『濫訴』と合わせて開廷中にあなたが推測で発言した『ネコ摩り替え』や

         『証拠隠滅をした』等を『名誉毀損』と『慰謝料請求』の対象とし提訴します。」
川畑      「……だから……『そうして下さい』って言っているでしょう……ハハ……。」


何度も言わせるな……人の話の途中に口を挟むな……。


タロウ     「言っておきますが……現段階での請求額の12万円は実費の部分に対してですから……

         名誉毀損の刑事告訴・民事提訴と慰謝料請求額は別ですよ。」
川畑      「……どういう事ですか?」
タロウ     「………12万円よりも増えますよ……

         この用件2には慰謝料分は入っていませんから……。」
川畑      「………なっ……!!」


少々驚いた様子。


タロウ     「次に用件3……。」
川畑      「ちょ……ちょっと待ってくださいっ!!」


ちょっと待たない。


タロウ     「いや……先に全部聞いてください。……何回も言わせないで下さい。

         ……あとで聞きますから。」
川畑      「………………。」
タロウ     「用件3……。謝罪文の提出。」
川畑      「はっ???」


事務的に行く。
「人間、怒り過ぎると逆に随分冷静になるもんだ」と更に冷静な自分が分析している……。


タロウ     「あなたの起こした裁判のおかげで……ウチの家族は随分気苦労しました。」
川畑      「いやいやいやいや……それは喋ったあなたの責任でしょう。」
タロウ     「勿論……ワタシも含めて……!!!」
川畑      「………………。」


反論できまい。


タロウ     「大体、店の住所に死んだ爺ちゃん宛に訴状を送りつけてきたでしょう。」
川畑      「ええ……。」
タロウ     「その後でワタシを訴えた時点で……

         ワタシだけじゃなく家全体を訴えてきてるんですからっ!!」
川畑      「………………なんでそうなるんですか?」


飲み込んでいないらしい。


タロウ     「だいたいワタシ……あそこで生活していませんから……。」
川畑      「どういう事ですか?」
タロウ     「あそこで寝泊りしていません。仕事しているだけです。」
川畑      「………はぁ………。」
タロウ     「あなたがキチンと事実確認をしたのであれば……あそこでワタシが

         生活していない事くらい簡単に調べられますが……。」
川畑      「はぁ……どうやって……?」
タロウ     「近所の人に聞けば分かるでしょ?」


……………。


川畑      「あなた……あそこに住んでいないのに被告になったんですか?」
タロウ     「そうですが……?」
川畑      「それこそ『偽証罪』ですっ!!……この件でワタシはあなたを訴えますよっ!!」


おっ……水を得た魚の様に今までしおらしかった川畑が息を吹き返す。

話の流れから、若干、川畑に口を挟む隙を与えてしまっているようである。


仕方ない……バッサリいくか……。


タロウ     「残念ながら住民票の所在地で有る無いに関わらず……その人物が特定できれば

         勤務先でも被告になる事が可能です。偽名でも芸名でも可能な場合がありますが……。」
川畑      「………………。」
タロウ     「あなたがどこの国の……どの法律を述べているのか理解に苦しむ事が

         多々ありますが……もうちょっと勉強してから発言した方がいいですよ……。」
川畑      「………………。」
タロウ     「そんな調子で弁護士さんに相談したら……失礼ってもんですよ……。」
川畑      「………………。」
タロウ     「自分に都合のいい事情だけを弁護士さんに話せば……『あなたは勝てます』って

         言われるに決まってますよ。もう少し、ご自身の事を客観的に見てはどうですか?」
川畑      「………………。」


バッサリ言ってやった。


……………。


……………。


……………。


タロウ     「用件3の続き……話してもいいですか?」
川畑      「………どうぞ……。」


キュウキュウの様子。




以下次号。