あとがき | 【実録】ネコ裁判  「ネコが訴えられました。」

あとがき

いつものように忙しかったランチの後、

問題になったサッシから、問題になった駐車場を眺める。


タバコに火をつけ、ふぅっと一息……。


うちのニャン太は、ハナばあちゃんの家に行ったきり今でもお世話になっている。

年寄り同士、気が合うらしい。


そして最近、シロクロは見かけない。


先日、判決を受けて保健所の勝俣さん挨拶をしに行った時、少々シロクロの安否が気になったので……

「最近、例のネコを見ませんが……保健所で駆除とかしてるんですか?」

……と聞いてみた。


すると

「ネコは首輪をしていてもしていなくても、飼いネコか野良ネコかわからないですから……

後々の責任問題に発展いたしますので……例え苦情があっても捕まえる事はありません。」

……との事。


「責任問題になるであろう問題は触らない」お役所らしい風潮である。

そして、決して野良ネコがはびこる状況は好ましくないが……少し安心した。



法律は何の為にあるものなのか……

裁判所は何の為にあるものなのか……


話し合いで折り合いがつかない時……

当事者間で折り合いがつかない時……

地域で折り合いがつかない時……


どうにも折り合いがつかない時に頼るべきものであると思う。


確かに「裁判を起こす権利は誰にでも平等にあり自由」であるが……

軽々しく起こして良いと言うものでは決して無い。


起こす側にも生活があるのと同様に、起こされる側にも生活があるのである。

その生活を乱すほどの理由が、はたしてその裁判にあるのだろうか?


もし今、裁判を起こそうとしている人がいたら

その事実は本当に正当なもので、正しい情報なのか……


そして自分が起こされたらどう思うか……

起こされた側に立って、もう一度考えて頂きたい。





サッシと駐車場の間に、ヨシコが手掛けている一畳ほどの小さな小さな庭がある。

そこから一本の独り生えの冬瓜が、グングン伸びて左隣の家のフェンスを蔦って大きな実をつけている。


左隣のこの家も、ウチと同じで「ウナギの寝床」

前半分をラーメン屋にして後ろ半分を住居にしている。


その家のおばさんが、洗濯物の取り込みに出てきた。


タロウ     「おばさ~ん……こんにちは!」


驚かない程度……聞こえるように声をかける。


おばさん   「あらっ!タロちゃんかいっ!こんにちは。」

タロウ     「あのー……ウチの冬瓜なんですが……すみません……。」


すまなさそうに尋ねる。


おばさん   「……あらヤだよ……そんな事……先月まではウチの朝顔がお邪魔してたんだから……。」

タロウ     「もう採らなきゃいけない頃なんで……採ったら半分貰って下さいね……。」


ニコリと笑っておばさん。


おばさん   「ははは……なに言ったんだかっ!!気にしなくて大丈夫だよ!

         ……それに半分も貰ったら……ウチ4人家族なんだから3日間は冬瓜じゃないかっ!!」

タロウ     「ははははは……。」


仰るとおりである。


おばさん   「でもせっかくだから先っちょのほう……ゲンコツ一個分くらい貰おうかな……。」

タロウ     「勿論ですよ。」


思い出したようにおばさん……。


おばさん   「そう言えば……時々ウチのワンコのエサを盗み喰いに来てたシロクロのネコ……

         最近見ないねぇ……。」

タロウ     「……………。」


びっくり……である。


おばさん   「来てた時はイヤらしいネコだねぇ……なんて思ってたけど……

         来なくなると寂しいもんだねぇ……。」

タロウ     「はぁ……。」


とてもじゃないけど……そのせいで、裁判になったなんて言えない……。


おばさん   「きっとああ言うネコは、きっとまたどこかでよろしくやってんだよ……。」

タロウ     「きっとそうですね……。」


これが精一杯である。


おばさん   「あっ!!そうそう……タロちゃん家……なんか裁判してたんだって?」

タロウ     「あ……はい……まぁ……。」

おばさん   「それって……どうして……どうなって……そうなったんだい?」

タロウ     「あはははは………それはまぁ……又、今度………。」


適当に話を濁す……。


洗濯物を取り込み終わると会釈をしておばさんは家の中に入っていった。


これがワタシの近所との付き合い方である。




改めて問題の駐車場を眺めてみる。




人は誰でも多かれ少なかれ他人に迷惑をかけて生きている。


一切迷惑をかけていないと言い切れる人がいるとすれば……

その考え方自体が迷惑をかけているのである。


人に迷惑をかけていると思いながら生活するからこそ……人の迷惑も受け入れられる。

それでいいのではないのか……。


お互いに譲り合う。


難しい事は何も無い。

法律よりもなによりも……人との調和がなによりである。
                             あとがき イラスト:



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【追記】


いかがでしたでしょうか?

……というわけでこっちが書籍版です。


どうぞ買って下さいっ!!!!

ここまでしっかり読んだ方も……(まぁ結末は変わりませんけど……)

楽しみを前借りしたと思って買ってあげて下さい。

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ではこの後も、ちょっぴり続く【続編】 と……

その後に更に続く【続】ネコ裁判「隣のネコも訴えられました。」 でお楽しみ下さい。