第三回口頭弁論---その8---帰路 | 【実録】ネコ裁判  「ネコが訴えられました。」

第三回口頭弁論---その8---帰路

急いで駐車場へと向かう。


川畑BM号が停まっている。

急ぎながらも側面の白い傷の箇所をチェック……。


確かに消えている。

でもよーーーーく見るとボディには修復しきれない傷の跡がある。


タロウ     「きっとコンパウントかなにかで擦ったんだな……。」


傷取れてよかったな……BM……。

この調子でネコの引っ掻いたとされる傷も精進してくれ……川畑。




自分の車に乗りエンジンをかける。


「きっと他人の間違いには事細かくツッコんだり責任追及するくせに……自分の間違いは

絶対に認めない……。隠してでも、ウソをついてでも認めない……そういう人間なんだな……。」


と思ってみる。


「そういう自分はどうなんだ?」と自問。


……………。


「まぁ……オレも家族や気の許せる友達なんかには……そういう時もあったりするかな……」と自答。


どちらにしても他人に対してやる事ではない。

それも一度も顔を見たことも無い相手にしてでは尚更である。


……………。


もう10年の付き合いになる93年式シボレーアストロハイルーフ……。

無駄にデカくて、地球に厳しい車である。


サイドミラーを確認する。

バックミラーのほとんど効かないワゴン車にとって、サイドミラーは後方確認にも使う安全の命綱である。


「うおっ!!」


右のサイドミラーが明後日の方向に曲がっている。

きっと隣に停めた車のドライバーが引っ掛けたのであろう。


もう一度降りて、ミラーを調整する。


「デカいお前が悪いんだぞ……」などと心の中でつぶやいてみたりする。


思い起こすと、ロクに洗車をした事も……掃除をしたことも無い。

それでも文句のひとつも言わずに言う事を聞いてくれる。

ワタシの相棒は辛抱強いのである。



気を取り直して出発。



先程傍聴してくれた学生風3人組が目にとまる。


………他の傍聴者は……どうやら皆、一人ずつ参加の様子だ。

三々五々でどこに行ったかわからない……。



……………。


タロウ     「おーーーい。」


信号の手前で捕まえる。


タロウ     「せっかくだからお茶でも飲みに行こうか!!」


驚く学生風3人組。


学生風    「いいんですか?」

タロウ     「いいよいいよー。乗って!乗って!」


大急ぎで車に飛び乗る三人。


タロウ     「いやー。予想以上に荒れずにサッパリ終わっちゃってさ………。」

学生風    「………はぁ……充分荒れてたと思いますよ……。」


顔を見合わせる学生3人……。


学生風    「普通……裁判官……あんな風にキレないですもん……。」


そうらしい………。

やっぱり普通じゃないらしい……。


運転しながらコーヒー屋を探すワタシ……。

だが裁判所周辺は官庁街ということもあって、コーヒー屋が見当たらない。


「まぁ……隣の駅まで送るつもりで探せばいいか……。」と思いながら

その間も、雑談を交えながら運転する。


……………。


それから5分ほどドライブした頃……。


タロウ     「おっ!!ネミーズがある!!あそこにしよう。」

学生風    「そうですねー。いいですよー。」


ネミーズの駐車場に車を入れる。


「ガッ……!!ガガガッ……!!!」


……………。


聞き慣れない音がする。

きっと無断駐車防止のロック板を踏んだ音であろうと判断する。


タロウ     「着いたよー。」

学生風    「はいー。」


学生風……降りるとすぐ、心配そうに車の後方を確認。


学生風    「………タロウさん……ここ……擦ってます……。」

タロウ     「ぶっ!!」


見るとサイドミラーでも見えない、とっても低い位置に白いポールが立っている。

そこに「ガガッ!」と擦った様子。


タロウ     「あちゃーーー。こんなとこにポールがあるなんてなー……。」

学生風    「……………。」


きっと川畑なら……「こんなところにポールを設置するネミーズが悪い!訴えてやる!」とやるのであろう。



気まずそうな学生3人を見て……。


タロウ     「大丈夫、大丈夫……これくらい傷のうちに入らないっ!!ツバ付けときゃ直る!!

         ポールの白い塗装が着いてるだけだからっ!!」

学生風    「ははは………。」

タロウ     「それにアメ車は強いんだからっ!!これくらいヘッチャラだよ!!

         バンパーはぶつけるためにあるんだからっ!!」

学生風    「ははは……でも……バンパーじゃないですよ……。」

タロウ     「あーーーいいのいいの!細かい事は気にしない!!」


と……その場は納めてネミーズ店内に入る。


でも内心ちょっとショックであった。


相棒のアストロ君は……傷がまったく無いわけではない……。

よく駐車場で隣の車がドアを開ける時にぶつけたであろう痕がある。


ただ……自分で擦ってつけた事は、この10年……無かったのである。


「大きな車に乗っていてぶつけた事が無い」と言うのが一つの自慢でもあった……。

ついた傷よりそっちのほうがショックであった。


だが、せっかく傍聴にまで来てくれた読者さん……。

ブルゥになるのも大変申し訳ない……。


先導して空いた席に座る。


タロウ     「ささ……どうぞ、どうぞ。」


車の中での会話で、緊張感は大分ほぐれている様子である。

                                 第三回その8 イラスト:

以下次号。