第三回口頭弁論---その5---ファイル | 【実録】ネコ裁判  「ネコが訴えられました。」

第三回口頭弁論---その5---ファイル

裁判官    「では……原告と被告から準備書面と書証が提出されていますので、その確認をします。」


ファイルを開いてページをめくると……

ファイルがバラバラと外れる……。


「あああ………」


ルーズリーフ型のファイルカバーにクリアファイルを30枚ほど……

そのクリアファイルに書証やら準備書面の束がキュンキュンに詰まっている。


キャパシティー的にはイッパイイッパイである。


無理やりページをめくると、状況は更に悪化……。

10ページほど外れてしまった。


…………。


冷静を装う顔とは裏腹に、ファイルを一生懸命はめ直す。


紙じゃなくビニールなので更にタチが悪い……。

「トントン」ってやっても「クニャンクニャン」である。


仕方が無いので一枚一枚はめ直す……。


その間にも裁判官は進めている。


裁判官    「原告、準備書面及び書証に訂正箇所などの問題はないですか?」

川畑      「はい……。ワタシの書面に問題はないです。」

裁判官    「被告の方はどうですか?」

タロウ     「あ……ワタシの出した準備書面に関してですか?」

裁判官    「そうです。」


もぞもぞやりながら……。


タロウ     「ええ……問題ないです。」

裁判官    「わかりました。」


横目で傍聴席を見ると……さっき話した学生一団の女の人がこらえようきれずに笑っている。

ワタシのハプニングぶりがツボに入ったのであろう……。


こんなに困っている状況で、傍聴席を確認する自分の不思議な余裕ぶりに驚いたりする。


裁判官    「原告の提出した書証ですが……準備書面のこの記述の部分がこの書証でいいですか?」

川畑      「ええ……そうです……。」

裁判官    「原本はお持ちですか?」

川畑      「持ってます。お見せしたほうがいいですか?」

裁判官    「まぁ……いいです。被告が確認を求めれば被告に対してお願いします。」


例の賃借契約書と引越し予定日の書いた見積もりの様子である。


裁判官    「被告……確認しなくていいですか?」

タロウ     「……ああ……いいです………別に……。」


ファイル修復作業中。

頭と手の別作業……飲食店では良くある事。

へっちゃらである。


裁判官    「では……確認しておきますが……原告はいつから被害にあっていると主張ですか?」

川畑      「ええと……。」


口ごもる。


川畑      「部屋を借りたのが1月27日で……引越しが2月2日……

         被害に気づいたのは3月初めですから……。」

裁判官    「ええ……その日付を聞いているんです。」


困る川畑。


川畑      「ですから被害の最初は2月頃ですかね……。」

裁判官    「…………。」


はっきりしてくれ……。

ツッコむにもツッコめないではないか。


裁判官    「訴状の一部を1月27日に訂正してますが……。」

川畑      「ええ……ですから……。」


どうしていいかわからない様子。


裁判官    「まぁ……いいです。」


ちょっと怒った様子。

まぁいいらしい……。


裁判官    「被告……原本の確認はよろしいですか?」

タロウ     「ええ。結構です。」


さらっと流した。

そしてファイル修復作業は終盤に向かいつつある。


裁判官    「では……被告提出の準備書面と書証の関連付けですが……特に問題はないですね……

         この前、一度見せてもらっていますが……この『被告飼育のネコ』の写真は

         乙4号証の1ページの①でいいでしょうか?」

タロウ     「ええ……それでOKです。」

裁判官    「わかりました……。」


と……裁判官、もう一度資料を確認する。


裁判官    「今日……先程提出された被告の方からの検証結果報告書ですが……。」

タロウ     「はい。」

裁判官    「まぁ……原告の準備書面に対する反論と受け取っていいですか?」

タロウ     「はい。かまいません。」

裁判官    「検証はですね……もし裁判所が必要と判断すれば……

         裁判所が中立的な立場として検証しますから……。」


ファイルが修復された。

一安心である。


裁判官    「で……これは提出されますか?」

タロウ     「いや……どっちでも……。」

裁判官    「そうですか……まぁ……これを提出されますと、原告からこれに対する反証を提出したいと

         申し出られるかもしれませんよ……。そうなるともう一回審理が伸びますけど……。」


「もう勘弁」という裁判官の心の声が聞こえてくる。


タロウ     「裁判所の判断で、必要無いと判断ならば取り下げますが……。」

裁判官    「…………。」


一瞬考える。


裁判官    「まぁ……この点に関しては、争う必要も無いと思いますから未提出でいいですか?」

タロウ     「はい。結構です。」


ご馳走様。


「争う必要が無い」との裁判官のご判断である。

もし万が一、「該当ネコがウチのネコ」との判断ならば……傷の状態について争点が移るであろう。


それが「必要無い」という事は、そこまで話が進まないと言う事である。


お疲れ様……裁判官さん

お疲れ様……書記官さん

お疲れ様……司法委員さん

お疲れ様……傍聴の読者さん


そしてお疲れ様……川畑。


裁判官    「では……原告・被告、言っておきたい事や主張しておきたい事はありますか?」


ここで双方「無い」となると弁論終結で結審である。

せっかくなので言っておく事にする。


タロウ     「あの……ワタシのほうから1~2点。」

裁判官    「どうぞ。」

タロウ     「原告提出の賃借契約書ですが……。」

                                第三回その5 イラスト:

以下次号。