バイトのミドリちゃん---EP1--- | 【実録】ネコ裁判  「ネコが訴えられました。」

バイトのミドリちゃん---EP1---

3年前……。

当時、バイトだったリカちゃんが彗星のように辞めていった……。


困ったワタシは店の外に「バイト募集」の張り紙をした……が……問い合わせが来ない。


世間は「就職難」とか「不景気」とか言ってはいるが……

「とりあえずバイトしておこう」と思う人がいないのであろうか……。


就職難でも生活ができてしまうのであるから……それも不思議な世の中である。


なにせ「就職難」で「不景気」でも「餓死して死んだ」なんて話は滅多に聞かない。

まぁ……無い事も無いらしいが、世界的に見ても、かなり日本は少ない様子である。




待っていても新しいバイトが来ないので……自ら探すことにした。


時々覘く近所の居酒屋で、そこのバイトを呼び止める。


タロウ     「あのさーバイトのカナちゃん……。」

カナ      「なに?」

タロウ     「誰かバイト探してる人……いない?」

カナ      「タロウさんの店って……朝から昼でしょ?バイトの募集時間。」

タロウ     「そうだよ。」

カナ      「じゃ……学生はダメだ……。フリーターか……。」

タロウ     「そう言う事になるかな……。あとは主婦。」


ちょっと悩んで……。


カナ      「う~~~ん……。」

タロウ     「どう?」

カナ      「もうすぐ辞めるコがいる。」

タロウ     「お!」

カナ      「今月いっぱいだったはず……ミドリ。」

タロウ     「じゃ……そのコに声かけてよ!今月いっぱい何とか耐えるから!」

カナ      「いいよー。言っとく。」


思い出したように


カナ      「ちょっと個性あるけど……いい?」

タロウ     「ああ……。」

カナ      「タロウさんなら大丈夫だと思う。」

タロウ     「どういう意味じゃ?」

カナ      「深い意味じゃないよ!」


そう言うとカナは微笑みながら仕事に戻った。


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話はトントン拍子に進み……面接となった。


面接日時の午後……。

まだ約束の時間には30分ほどの余裕があった頃……

店の外でメモを見ながらウロウロする女性が一人……そう思うと、その女性が店に入ってきた。


………アフロである。

頭が当社比3倍くらいになっている。


今時「アフロ」と言う言葉が生きているのかは知らないが……まさにそんな感じである。

良い風に例えれば……歌手のミーシャ。

率直に例えれば……昔の鶴瓶。


とりあえず冷静を装いながらも身構える。


女の人    「あのー。」

タロウ     「はい?」

女の人    「バイトの面接に来たんですけど……。」


まさかと思ったが聞いてみる。


タロウ     「お。ミドリちゃん?」

女の人    「そうですー。」


アフロがミドリ……。

一瞬目の前が真っ暗になった。

カナの言う「個性」とはこの事だったのか……。


だが……人間を外見で判断してはいけない!!


高校の先生がいつも言っていた。

まぁ……その先生に服装検査でビンタを喰らった事もあったが……。



とりあえず容姿には触れずに仕事の内容の説明。


バイトの曜日と時間を相談して決める。

次に時給も決める。

ミドリちゃんも飲食店でのバイトを経験済みであるから、即実戦で役に立つであろう。


…………。


そして最重要課題……容姿について話を切り出す……。


タロウ     「あのさー。ところで……。」

ミドリ      「はい?」


例え仕事上とはいえ……女性の容姿に文句を言うのは気を使う……。


タロウ     「その髪型なんだけど……ウチ……飲食店なので……。」

ミドリ      「あっ!!これですか?」


と頭を指差す。

その指がアフロにめり込む。


ミドリ      「全然その件に触れないので……このままで良いのかと思っちゃいました!」


あっけらかんと笑いながら言う。

「そんなはずあるかいっ!」と思い切り突っ込んでやりたかったが……さすがに今日初対面である。


ミドリ      「この髪型は今のバイト用なんです。」

タロウ     「今のバイト?」

ミドリ      「今……東南アジア系のブティックでバイトなんで……。」

タロウ     「ほう……。」

ミドリ      「だから、ここでバイトするようになったら……もうちょっとおとなしくして、まとめて来ますよ。」


ふぅ……。


タロウ     「じゃ……よろしく。」


思い出したように……。


ミドリ      「あっ!!」

タロウ     「どうした!?」

ミドリ      「爪も切ったほうが良いですよね?」


と言いながら手を見せる。

長い爪にキラキラとラメの入ったマニュキュア……。

一本一本にお花やら星やらが描かれている。


タロウ     「………よろしく。」

ミドリ      「はい!……では、来月からよろしくお願いします。」

タロウ     「こちらこそ。」


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無事面接は終わった。

一時はどうなるかと思ったが……。


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ミドリちゃん出勤初日



約束の時間よりも10分早くミドリの人影が店の外に見える。

朝から雨が降っていた。

傘を畳む姿が見える。


「お……時間しっかりしてるな……」と思いながら仕事を続ける。


ミドリ      「おはようございまーす!!今日からよろしくお願いしまーす!!」

タロウ     「ああ。よろしく……。」


と仕事の手を止めて顔をあげる。


………パイナップル………。


いわゆるドレッドってやつだ……。

ヘアバンドでまとめてはいるが……何も変わっていない……。

いやむしろ状況は悪化している。


本当に「きょとん顔」になった。


ミドリ      「どうかしました?」

タロウ     「………いや……いい……なにも……。」


そう言うとにっこり笑う。


ミドリ      「で……何からしましょうか?」

タロウ     「あ……ああ……。」


「馴らすより慣れろ」と言う事であろう……。


今になってカナの「ちょっと個性あるけど……いい?」の意味が「深い意味」だった事に気づく。


アフロ           ドレッド

                                              イラスト:  

以下次号。


PS.昨日ネットで自分のネコ裁判を検索して廻っていたら「庭師のゴミ袋」 さんのサイトにて名言を発見。

   紹介させて頂く。


   「そもそも、ネコは車のボンネットに乗るものだと車が出来る前から決まっているのだ。」