ネコ写真 | 【実録】ネコ裁判  「ネコが訴えられました。」

ネコ写真

今日の内容はいつにも増してシリアスである。

少々覚悟して呼んで頂きたい。


日付は8月20日(土)昼過ぎの事である。


昨日の昼……ちょっと用事に出かけた後から母ヨシコの様子が少々変である。

口数が少なく何か悩んでいるようにも見える。


親子だからであろうか……それも一緒に仕事をしているから、普通以上に敏感に気が付くのであろうか……


タロウ     「………なにかあったの?」

ヨシコ     「なにが?」

タロウ     「……いや……。」


いきなり聞いても答えるはずも無い。


ヨシコ     「あのさぁ……。」

タロウ     「なに?」

ヨシコ     「あんた今、近所のネコの写真集めてるでしょ……。」

タロウ     「そうだけど……。」

ヨシコ     「それってさ……裁判でどういう意図で使うのさ?」

タロウ     「どういう意図………って?」

ヨシコ     「まぁいいわ……。」


そう言うと黙った。

………ワタシもそれ以上聞かなかった。



3時過ぎ………

杉森のおばさんが遊びに来た。


おばさん    「おーぅい。」

タロウ     「こんちわー。」

おばさん    「お母さんいるかい?」

タロウ     「今……奥にちょっと行ったかな?」


しばらく話をしていたら……奥からヨシコが出てきた。


ヨシコ     「あ。杉ちゃん。」

おばさん    「元気ー?」

ヨシコ     「元気よー。」


杉森のおばさんと接する母はいつもの様子と変わりが無い……。

ヨシコが「何か悩んでいる」様に見えたのはワタシの思い過ごしだったのであろうか……。


ヨシコ     「こんな時間にどうしたの?」

おばさん    「いや……。今日さ……タロちゃんに土産があって……。」


そう言うと手提げバックから封筒を取り出した。


おばさん    「ほら……これ。」


封筒を受け取って開ける……。

中から2枚の写真……。

ネコの写真である。


タロウ     「お!おばさんこれ撮ったの?」

おばさん    「ああ……一枚はワタシ……一枚はヨメサン」


ヨメサンとは「裏の八百屋の鈴木の嫁さん」の事だ。

この界隈で「ヨメサン」と言えば彼女の事である。


タロウ     「わざわざ写真に現像してくれたの?」

おばさん    「そうだよ。……でも簡単だよ。スーパーの写真屋の前に機械があってさ……

          ケータイのカードを抜いて『ピピピ』だわさ。」

タロウ     「へぇー。おばさんそこまで出来るんだ。すごいじゃん。」


ケータイ本体の画像データをメモリーカードに移して、それを機械に入れて現像する………。

「50代半ばの人でも出来るんだ……。」……と思った。


おばさん    「いや……やってくれたのは店員さんだけどね。」


やっぱり……。

少々「ばれっちゃった」顔で照れ笑いする杉森のおばさん……。


タロウ     「で……どこで撮ったの?」

おばさん    「ワタシは店の前だよ。捜査範囲内だろ?」

タロウ     「もちろん。」


おばさんの店は第二回口頭弁論で川畑が「避難の為に利用したコインパーキング」のすぐそばにある。



この点からも証拠集め 箇条書き


6.原告準備書面「避難したコインパーキング」周辺にも他ネコがいる事の証明。


に使えるであろう……。



おばさん    「ヨメサンのは裏の……今、アイツが停めてる駐車場のまん前だよ。」

タロウ     「すげー。ありがと。」


ユミコが最初に撮った辺りであろう……。だがユミコの撮ったネコとはまた別のネコである。

あの辺りにはまだまだネコがいる様子だ。


タロウ     「いや……本当……ありがとう……。使わせてもらうよ。」

おばさん    「お役に立てて嬉しいよ。」


ヨシコが話しに入る……。


ヨシコ     「あのさ……ちょうどいい………杉ちゃんもいるから……。」


神妙な口調だ……。


おばさん    「なに?どうした?」


そう言うと自分のケータイを出して操作する……。


ヨシコ     「これなんだけど……。」


ワタシとおばさん……一緒になって覗き込む。


……ケータイにはネコの写真…………2匹写った写真……5匹写った写真……

背景から同じ場所であると確認できる……。

ネコ……7匹まとめてである!!


驚くワタシとおばさん……。


タロウ     「どうしたの?これ?」

ヨシコ     「これさ……。散歩の帰り……ほらあそこのメゴチ荘なんだわ。」


捜索範囲内である。


ヨシコ     「二階に住んでるおばさん……おばあちゃんかな……。」


固唾を呑んで聞く……。


ヨシコ     「餌箱出してエサやってた。……外で」


やっぱりいたか……「ネコばあさん」


ヨシコ     「で……どうする?……タロウ……この写真……。」


「どうする?」と聞かれた……。

「使うかどうか」という意味であろう……。


もう一度じっくりと写真を見る………。

写真には問題の「シロクロ」の姿は無い……。

そして7匹全部……今まで捜査で撮った4匹とは全く別物である。


………考える………そして母ヨシコの言わんとする所も考える……。


タロウ     「……この写真はいいや……使わない。」

おばさん    「なんでさ!?」


驚くおばさん……。


タロウ     「だってさ……今までのほかの写真は『この町内に飼いネコも野良もたくさんいますよ』って

         写真だったでしょ。全部『飼い主が誰かわからないネコの写真』。

         けどさ……この写真は……このばあさんが『ネコを外飼いしてますよ。

         野良にエサをあげてますよ』って写真だよ。」

おばさん    「そうだよ。」

タロウ     「この写真には『シロクロ』が写っていないだろ……。

         だからシロクロを飼ってるって写真でもないわけだし……。」

おばさん    「そうだよ。」

タロウ     「もし、これを川畑に見せたらさ……。今度はこのばあさんが訴えられるよ。

         だってあの車にシロクロだけが乗ってるわけじゃ無いと思うもん……。

         ネコの足跡だってあれから増えてる様子なわけだし……。

         だからキッチリマークされて……ネコが一回でも車に乗ったら写真に撮られて………。」

おばさん    「…………。」

タロウ     「あんなばあさん訴えられたら……なす術無いよ……。知識も無さそうだし……。」

おばさん    「…………。」

タロウ     「だからこの写真は使えない。」


……………。


タロウ     「いくらウチのお客さんじゃない……この『ネコばあさん』でも……

         町内の人を売れない……だろ?」


……………。


ヨシコ     「安心したよ。」

おばさん    「…………。」


おばさん涙ぐんでいる………。

元々感激屋のおばさんだが……ネコの写真で泣いてしまうとは思わなかった……。


ヨシコ     「ウチのお客さんだとかどうとかってんじゃなくてね……。万が一この写真を川畑が見て……

         ウチへの訴えを取り下げてさ……今度はこのばあさんが訴えられたら……

         世間はウチがばあさんに『なすりつけた』って思うだろうね……。

         そんな事したら商売出来ないよ………。

         タロウ……それわかってるんなら安心したよ。」


母親にそう褒められて……少し照れくさい……。


タロウ     「まぁ……そういうわけだから……。それにそこまでしなくても楽勝でしょ。」

おばさん    「まぁ……そうだろうね。……あの様子じゃ……。」


おばさん……前回の口頭弁論の様子を語り出し……思い出し……笑い出す……。



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さて今晩……一大プロジェクト開始である。


5.原告準備書面「サッシを開けられないと思う」を崩す証拠。


をやってみようと思う……。


成功はイチロウの協力無くしてありえない……。

                                ネコ写真 イラスト:

以下次号。