ネコ探し | 【実録】ネコ裁判  「ネコが訴えられました。」

ネコ探し

イチロウ    「で……。父さんどこ行くのさ?」

タロウ     「散歩。」

イチロウ    「えーーーーーーーーーー!?それだけ?」

タロウ     「それだけ。」


いきなり一人で大ブーイングである。

妻のユミコが見ていたら……「嫌がってるんだから一人で行きなよ!」で片付いてしまうところであるが……

ここは実家。……ワタシが早朝一人で奇襲した形である。

イチロウの援軍は来ない。


タロウ     「お前さぁ……父さんが『散歩』って言ったらついて来ないで

         『山』とか『海』とか言ったら喜んでついて来るだろ?

         ………そんなのインチキだぞ。これからは山も海も連れて行かないぞ。」


親子だから通用する超強引理論展開である。


イチロウ    「でも町内の散歩なんてツマランじゃん!」

タロウ     「……。確かにな………。お前にはツマランと思う。……だが父さんにとっては重大事だ。

         100万円払うか払わないかの瀬戸際だぞ。」


実際そこまで追い詰められていないのではあるが……。

ちょっとオーバーに言ってみた。


イチロウ    「なんでだよ?」


だいたいの内容を小学三年生にもわかるように、掻い摘んで話す。


イチロウ    「ふーん。そんならカバーかければいいじゃん。」


小学三年生にも同じ事を指摘される。

川畑。よく読んでおけ。


イチロウ    「だいたいさー。あのクルマ………。ネコのベットが走ってるようなものだよ……。

         ネコ好きそうだもん……ああいう生地。」

タロウ     「………………。」


正直過ぎて笑いが止まらない……。

子供の発想とは安直で素直で……それでいて的を射ている。


タロウ     「あの生地でなくてもネコは車の上が好きだぞ。」

イチロウ    「どうして?」


お。喰いついて来た。

こうなればコチラのペースである。


タロウ     「学校で習わなかったか?黒い色は太陽の熱をたくさん吸収するんだ。

         だから2月や3月のちょっと肌寒い時期なんかは……黒のクルマはあったかい。

         ネコは日向ぼっこが大好きだから……。だから車の上に乗るんだよ。」

イチロウ    「へー。じゃあ白い車には乗らないの?」

タロウ     「白い車にも乗るだろうな……。とりあえず温まるから……太陽熱で。」


ネコはどんなクルマにも乗る。

なぜならネコはあったかい場所が好きだから。


人間の都合などお構いなしである。


タロウ     「………と言うわけだから……散歩に行くぞ。」

イチロウ    「……えーーーー!」

タロウ     「いいから行くぞ。」

イチロウ    「……しょうがないなー。」


ワタシはデジカメ…イチロウにケータイのカメラを持たせて出発した。


イチロウ    「父さんデジカメでいいね。僕のと替えてよ。」

タロウ     「あ?」


よく考えるとこのデジカメ……。二世代ほど古い機種なので……画素数が150万画素。

一方ケータイは、200万画素……。


「あら……ケータイの性能がいいじゃん。」と思った。



タロウ     「しょうがないなー。いいよ。使え。」

イチロウ    「やったー。」


性能的にダウンした事を知らないイチロウ……。

をして貸しを作った……。


イチロウ    「でさ……。ネコ撮るの?」

タロウ     「そうだなーネコだな。………あと万が一ネコの餌箱なんかが外に置いてあったら教えて。」

イチロウ    「わかった。」


この近辺。

いわゆる「辻エサ」をやる「ネコばあさん」が出没すると言う話を聞いたこともある。

シロクロもにゃん太が6月からいなくなっているのに、食に困っている様子はない。


痩せてきてもいないし……いたって健康である。

相変わらず問題の駐車場で時々昼寝している。


イチロウ    「なんかくれる?」

タロウ     「はぁ?」

イチロウ    「だからネコ見つけたらさ……なんかくれる?」


子供はすぐに褒美を欲しがる……。

これをうまく利用すれば扱い易いものなのかもしれないが……。

あまり利用するのも親としてどうかと思う。


タロウ     「じゃ。100円。」

イチロウ    「えーーーーー?100円!?ジュースも買えないじゃん。」

タロウ     「図書館で買え。」


図書館の自販機は100円。

最近図書館通いがブームのイチロウにちょうどいい。


イチロウ    「もうちょっとちょうだいよ!」

タロウ     「じゃ。沢山見つければいいじゃんか……。

         でも『ネコ1匹につき100円』だからな!同じネコを何枚も撮ってもだめだぞ!」

イチロウ    「ちぇっ!!」


すねさせても仕方ないので……。


タロウ     「じゃ。餌箱見つけたら1000円。」


釣ってみた。


イチロウ    「お!みつけよ。」


釣れた。


餌箱など、なかなかあるはずもないのであるが………。



……………。


タロウ     「とりあえず……フェンスの写真を撮っておくか…。イチロウちょっと来て。」


該当駐車場でフェンスと地面の幅……フェンスの高さ……フェンスの厚みを

持って来た巻尺の目盛と一緒に撮る。

「ウメキチじいさん宛の訴状 」の時に「被告の子息が無断で駐車場に侵入し猫との遊び場にしている。」

書かれちゃったりしているので、さっさと撮って退散する。

………というかこんな事で訴えられる事もないのであるが……。

それに訴えるなら土地の「所有者」であり「使用者」では無いようにも思うのであるが……。


タロウ     「OK。」

イチロウ    「OK。」

タロウ     「じゃ。ネコ探し続行だな。」

イチロウ    「OK。」


町内をウロウロ親子で散歩する。

問題の駐車場からあまり離れてしまっても意味が無い。


駐車場を中心に4ブロック……半径200mくらいが調査範囲であろう。


イチロウ    「あついねー。」

タロウ     「暑いな……。」


まだ8時を回った頃であると言うのに……暑い。

夏真っ盛りである。


イチロウ    「ネコいないね……。」


歩き出して15分ほど………。

確かにネコがいない。

普段はよく見かけるのに探すといないものである。


タロウ     「今日はやめようか?」

イチロウ    「そうだね。ネコも暑いから……きっと涼しいところにいるんだよ。」

タロウ     「あ。そうだ。」

イチロウ    「どうした?」

タロウ     「駐車場を探さないと。」


現在の原告が借りている駐車場を探さなくてはいけない。

とりあえず車はわかっているので簡単ではある。


それにそんなに遠くに借りるとも思えない。

ついでに探す。


………………。


タロウ     「車……。無いな。」


2~3箇所、近所の月極駐車場を回る。


イチロウ    「どっか行ってるんじゃないの?」

タロウ     「そうかもな。」

イチロウ    「帰ろうか…。」

タロウ     「帰ろうか。」


帰る事にした。


タロウ     「ま。明日もあるしな。」

イチロウ    「父さん……。ボク思ったんだけど……。」

タロウ     「なに?」

イチロウ    「こんなに暑い時に、黒い車の上でネコが寝たら……焼死するよ。ネコ。」


焼死………。

使い方は正しくないが……そのとおりである。


タロウ     「それもそうだな。」


黒い車の上でネコが寝るのは「季節限定」であったか……。

迂闊だった。




………………。


とりあえず店に到着。


イチロウ    「今日は終わりだね。」

タロウ     「だな。また明日な。」


イチロウ……マンガの本を持ってきながらこう言う。


イチロウ    「昼からでも…暇な時にボク行ってみるよ。」

タロウ     「お。そりゃ助かるな……。」

イチロウ    「ネコ100円。餌箱1000円ね。」

タロウ     「…………。」


結局はそれである。

                                        ネコ探し イラスト:

以下次号。