第二回口頭弁論--その12--押し問答 | 【実録】ネコ裁判  「ネコが訴えられました。」

第二回口頭弁論--その12--押し問答

川畑      「では、ワタシは被告の答弁に反論します!」


だから……。あんたに反論する権利は無いんだって………。

言ってやりたかった。


裁判官    「あのねぇ……。そういう事を『水掛け論』って言うんです。

         ……被告が仰った様に、立証責任は原告にあるんですから、証拠として提出してください。

         それと被告もこの件に付いて論争したくなかったら、そちらも証拠を出してください。」


ワタシまで怒られたではないか……。

とばっちりもいいところである。


川畑      「まぁいいです。」


いや。こっちが「まぁいい。」


川畑      「被告は『サッシを開ける』と言ったり『閉める』と言ったり…証言が矛盾しています。

         これは被告が『ネコの侵入』をきちんと防御していないと言うことになりませんか?」


それで?


川畑      「該当ネコの侵入を防御せずに黙ってみていると言うことは……。

          飼育していると言うことです!エサも自由に食べられる状況に置いてありますし!」

タロウ     「だから……。ウチのネコがいるって言ってるだろう。」

川畑      「じゃあ、サッシを締め切っている時は……必ずエアコンかけているんですか?」

タロウ     「いや。かけなきゃダメですか?エアコン……。」

川畑      「…………。……いや別に…。」


人が誰もいない部屋で、「冷蔵庫のせいで室温が上がる」という理由だけで

エアコンをかける人間がいるのであろうか?

ワタシはいないと思う。
少なくともワタシの家族とその友人知人にはいない。


川畑      「ネコのエサは常にここに置いてあるんですよね?」

タロウ     「そうですよ。」

川畑      「どうしてですか?」

タロウ     「いつでもウチのネコが食べられるように。」

川畑      「飼いネコが食べる時に出して……食べ終わったら片付ければいいじゃないですか!」

タロウ     「どうして?ウチのネコがいつ食べるかわからないのに?

         それに商売やっててネコがメシ喰い終わるまでイチイチ待ってられんでしょう?

         残したエサを後から食べるかもしれないでしょう?

         それともイチイチ片付けなきゃダメですか?エサ……。」

川畑      「…………。……いや別に…。」


資料を一生懸命めくる川畑。

その動きから、かなり苛立っている様子である。


川畑      「だいたい不自然じゃないですか!」


いきり立った。


川畑      「いいですか?被告!あなたの言っている事は滅茶苦茶です!部屋を閉め切った場合…

         冷蔵庫のせいで室温が普通の部屋以上に上昇すると言っていますよね!?」

タロウ     「そうですよ。」

川畑      「そしてエアコンを必ずかけるわけでもない!!

         だったらどうしてそんな場所に『ネコの餌箱』を置くんですか?」

タロウ     「はぁ?」


言っている意味が理解できない。


川畑      「そんな室温の上がるところに餌箱を置いておいたらネコのエサが腐るじゃないですか!

          それが不自然だと言っているんです!!」


「食べてます」の次は「腐る」か……。


野菜が腐ろうがネコの餌が腐ろうが………。

正直勝手である。


川畑      「不自然です!不自然すぎます!!この『該当ネコ』にエサをやる為だけに……

         この場所に餌箱を置いたとしか思えません!!おかしいです!!」



ちょっと整理しよう。


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川畑理論(仮説1)

     飼いネコがが自由に出入りできるようにしている。

     飼いネコがいつでもエサを食べられるようにしている。

               ゆえに該当ネコにも自由に出入りできるようにし、エサを食べられるようにしている。


     結論……該当ネコを飼っている。


川畑理論(仮説2)

     該当ネコに本当に迷惑しているのであれば……。

       サッシを締め切り施錠し、飼いネコが外出しないようにする。

       エアコンを効かせてエサが腐らないように、飼いネコに住みよい環境を作る。

       エサを随時片付け、該当ネコが食べに来ないようにする。

               これらの事をしていないから該当ネコの侵入を黙認している。


     結論……該当ネコを飼っている。


と言ったところだろう。


飛躍し過ぎだ…。飛躍し過ぎている……。
こんな論法が通るのであれば……。


タロウ理論

     西田敏行はサルに似ている。

     織田裕二はサルに似ている。

               ゆえに西田敏行と織田裕二は似ている。


って話になってしまうであろう!!


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川畑      「それに……。三ヶ月間調査しましたが……。

          ここを出入りするのネコはこの該当ネコだけでした!」


それはただ単に調査不足であろう。

それにウチのネコはあまり外出しない。


タロウ     「だから?見ていないからウチがニャン太を飼っていないとでも?」

川畑      「そんな事は言っていません!」


落ち着け。いいから落ち着け。


タロウ     「もういいですか?この質問……。」

裁判官    「まぁ……。水掛け論ですね。……。立証してください。原告。」

川畑      「…………。」


川畑……。資料をまた漁る。


川畑      「裁判官。この写真なんですが……。先程被告が飼いネコの写真を見せましたよね?

          この飼いネコが写っている写真が……これは被告宅の二階のベランダなんですが……。

          偶然写っていました。」

裁判官    「いいから出して。……。全部。」


もう怒らない。

裁判官もオトナだ。

でも呆れてはいる。


写真が書記官からワタシの元へ回ってくる。

………。嘘だ。偶然写してこんなに真ん中に被写体が来るものじゃない………。


多分、なんらかの反論の為に……隠していたのであろう。

まぁ川畑にとっては、今が「反論」のタイミングなのであろうが……。


タロウ     「……。で……なに?」


書記官に写真を返しながら聞き返す。


川畑      「この写真は被告が『飼いネコの引越しをした』と言った日付よりも後に撮られています。

         これを提出する事で、被告の証言を崩す事が出来ます!」


それは無い。絶対にない。

それに万が一……。崩したところで………どうなんだ?


「ウチの飼いネコが6月1日以降にもウチにいた。」ってだけだろう………。

そこから何が繋がるのだ?


裁判官    「もういいです。もう全部全部出してください。日時と撮影時間も明記してください。

         書証で出してください。……いいですね!」


もうこれしか言いようが無い。

ワタシでもそうすると思う。


自分だけ持っている写真をイロイロと見ながら次の質問を考えている様子の川畑。


裁判官    「もういいですか?原告……。」


時計を見れば5時10分を回っている。

そう言えばさっきからちょっと暑い。


エアコンが切れた様子だ。


川畑      「ちょっと待ってください。…………。」


そう言うと少し考え込んだ。


川畑      「あ…………っ!!」

                                       第二回その12 イラスト:

いいところで以下次号。