第二回口頭弁論---その9---一時中断 | 【実録】ネコ裁判  「ネコが訴えられました。」

第二回口頭弁論---その9---一時中断

裁判官     「えー。それではちょっと……司法委員の方と相談しますので……。

          皆さん一旦退廷して下さい。」

書記官     「ええ。原告も被告も……。傍聴席の方も、一旦外に出てもらえますか?」


ぞろぞろと出る。


廊下で杉森のおばさんがニンマリ顔で迎える。


おばさん    「ははっ!裁判て初めて来たけどさ……。こんなユルいもんなのかい?」

タロウ     「いや……。今回だけじゃないかな?多分……。」


多分今回だけである。


おばさん    「しっかし向こうの証人てさ……。何しに来たんだろ……。」

タロウ     「さぁ……。まぁ、引田くんは『ネコの被害の状況とネコが家に上がってる』証人。

         山本さんは『ネコがどこの家のネコか』ってのの証人に来たんだと思う。」

おばさん    「だよねぇ……。なのにさぁ…。」


そう言うとまた笑い出す。


ユミコ     「でも結局『食べてます』じゃん」


確かに「食べてます」だ………。


ユミコ     「『食べてます』はこの前の答弁書でタロちゃんが書いてるじゃんねぇ」

タロウ     「そうなんだよ。」


確かに書いている………。


ユミコ     「『上がってます』もこの前の答弁書でタロちゃんが書いてるじゃんねぇ」

タロウ     「そうなんだよ。」


確かに書いている………。


整理してみると…。

「勝手に」と言う言葉は付くのであるが……「食べてます」「上がってます」はこっちが「認めている」部分だ。

何もこれ以上争う必要も証明する必要も無い。


大切なのは「『シロクロ』がウチのネコである。」事を証明する事だ。

その為に山本さんを呼んだと思うのであるが………見事に大滑りである。


引田くんの証言に至っては……。なにも新しい証拠を立証する証人になっていない。

時間の無駄であった。



ちょっと離れて陣取っている「原告川畑陣営」……。

なにやら話をしてはいるが……。全く聞こえない。

たぶんコチラの話も全く聞こえていないであろう。


おばさん    「で……。この後なにがあるのさ?」

タロウ     「多分、被告尋問と原告尋問ですね」

おばさん    「ふーん。」

タロウ     「それで次回の日程を決めて終わり」

おばさん    「ふーん。」

ユミコ     「じゃ……。次、川畑ちゃんに質問できるわけだ」

タロウ     「そうだね。多分……。」


時間は4時45分……。

時間が無い。

裁判官は「5時までだ」と言っていた……。

まぁいい。


ユミコ     「タロちゃん何聞くのさ?」

タロウ     「まぁ、さっき証人に聞いた事と同じような事だよ。一応質問事項は作ってある。」

ユミコ     「でさ……。タロちゃんは何聞かれるんだろ?」

タロウ     「さぁ?」

ユミコ     「また『食べてます』かな?」

タロウ     「……………。」


ユミコは随分「食べてます」がお気に入りの様子である。


心配なのは……。多分被告尋問から始まるであろう……。

だから原告尋問の時間が少なくなってしまう。


それだけだ。


おばさん    「そういえばさ……。あの引田くん。昼頃に川畑の店から出てきてたの見たよ。」

タロウ     「ふーん。」


まぁ、後輩なら予め待ち合わせをして一緒に来たとしても不思議は無い。


おばさん    「きっと『タダで喰わせるからよろしくな』ってな具合なんだよ。」

タロウ     「……………。」


まぁきっとそうだろう。

ワタシでも友人に証人を頼んだら……そうするかもしれない。

証人もタダではない……。

お金を払うよりは、そういった方法も「あり」だと思う。


おばさん    「んで、『こう言ってくれ。ああ言ってくれ。』って打ち合わせしてあるんだよ」

タロウ     「……………。」


まぁきっとそうだろう。

ただ、この場合……。推測だけなので…その辺を法廷内で突っつく事は出来ない。


下手をすれば「名誉毀損」と言われかねないからだ。


おばさん    「どうしたんだい?タロちゃん?押し黙っちゃって……。緊張してるのかい?」

タロウ     「……。いや。大丈夫。……全然楽勝。」


ただ単にワタシが答えにくい質問をしている事に気づかない杉森のおばさん……。

まぁこのキャラクターが憎めなくて大好きなのであるが……。


ユミコ     「『食べてます。食べてます。』ってくどいんだよね。」


ユミコが少し川畑に聞こえるように話す。


ユミコ     「『食べてます。食べてます。食べてます。』ばーっかり。」

タロウ     「まぁまぁ………。」


こっちを「キッ!」っと川畑が睨んだ。

こっちは100%の笑顔で返してあげた。


飲食店経営者の100%の愛想笑いだ。



……………。


法廷の扉が開いて書記官が出てきた。


書記官     「終わりました。どうぞ入廷してください。………あ。こちらからで結構ですよ。」


真っ先に私が入る。

被告席は一番遠い所にあるし……。


後ろを見ると川畑は書記官となにやら話しをしている。


ワタシが席に付いた頃…。やっと川畑が入廷してきた。



いざ再開である。

                                        第二回その9 イラスト:

以下次号。