第二回口頭弁論---その4---証言 | 【実録】ネコ裁判  「ネコが訴えられました。」

第二回口頭弁論---その4---証言

傍聴席の杉森のおばさんが「ぶはっ!!」と笑った。


ワタシと同じような事を想像したのであろう。


裁判官     「四方八方とは?」

引田くん    「ですから四方八方です。」


ここで引田くんの言いたい事をワタシが代わりに伝えよう。

「四方八方」ではなく「追い払うたびにいろいろな方向へ」と表現すべきであった。


裁判官     「まぁ…。逃げるわけですね…。」


敢えて訂正しない裁判官……。


川畑      「どうやって追い払いましたか?」

引田くん    「手で『シッ!シッ!』って感じですかね。

          って言うか……。追い払うと言うよりは、近くに寄れば逃げていきました。」


ちょっぴり打ち合わせ通りの感は否めないが…。

まぁいい。


川畑      「で、逃げたネコはどこに行きますか?」

引田くん    「わかりません。…と言うより……いなくなる時もありますが、

          柵をくぐったり柵を飛び越えたりしてこの奥の家の中に入っていった事もあります。」


ちなみにこの柵とは土地境界線上にコンクリートブロックが一段詰まれており、

その上に作られた緑色のネット上の柵である。よく草野球場や公園にあるようなものだ。


川畑      「なるほど。で、引田くんはどう思いました?」

引田くん    「ここのネコなんだなぁ…。と」

川畑      「なるほど。」


川畑、引田くんの証言にご満悦の様子である。


川畑      「あと他に見たものはありますか?」

引田くん    「このネコが、この奥の家に上がっている様子をみまいた。」

川畑      「なるほど。で、ネコは何をしていましたか?」

引田くん    「エサを食べたり、座っていたりしました。」

川畑      「だから!引田くんは『このネコがこの家のネコ』だと思ったわけですね。」


「続」してやったりのご満悦顔である。


川畑      「車の傷も確認してくれていますよね?」

引田くん    「はい。そうです。」

川畑      「どういった状況ですか?」

引田くん    「猫を追い払った後に、ネコの乗っていた周辺や

          ネコが逃げる時に最後にジャンプした位置辺りを確認しました。」

川畑      「どうなっていました?」

引田くん    「足跡が付いていて、その前後に『ピー』って感じで

          線上に傷が付いているのを確認しました。」

川畑      「なるほど。で、どう思いました?」

引田くん    「『ネコのキックで付いたんだなぁ』と思いました。」


もう満足か?川畑。

ワタシにも早く質問をさせてくれ。


川畑      「あと、引田くんは証拠写真も撮ってくれていますよね?」

引田くん    「そうです。ネコが車に乗ってる写真です。

          ……えっと、ケータイのカメラなんで…。これなんですけど……。」


裁判官が割って入る。


裁判官     「じゃあ、原告。それも書証として提出してください。」


一瞬戸惑う川畑…。

どうした?何か困るのか?書証なら今日既に追加しているのだから、もう怒られないぞ。


川畑      「はぁ……。引田くん……これってプリントできましたっけ?」

引田くん    「…。あ……。これプリントできない……。」


ちょっと無言の沈黙……。


裁判官     「じゃあ、それをちょっと見せてください。」

引田くん    「あ。はい。」


ケータイを書記官に渡す。使い方をちょっぴり説明している。

数枚撮っているようである。


書記官がケータイを裁判官に見せる。司法委員のおじさんにも見せる。


……。そう言えば前回と違い司法委員のおじさんは一人しかいない……。

???…あら……???と思ったら傍聴席にいた…。この前の司法委員のもう一人のおじさん。


今日はただの傍聴人らしい。興味があるのか?この裁判……。

それとも仕事の延長か?


書記官がワタシにも見せる。

写真は3枚だ。

ネコが車の上に座っている様子である。


1枚目は車全体が写っている。車のサイズは写真の半分くらい。ネコは豆粒くらい。

2枚目はもうちょっと寄っている。車が写真全体に切れるか切れないかで写っている。

3枚目は更に寄っている。オープンカーの幌のアップにネコのアップだ。写真の2分の1を猫が占めている。


ふーん。川畑の写真と大差ないじゃん。


裁判官     「この写真は、証人が撮ったんですよね?」

引田くん    「そうです。」

裁判官     「原告の写真と似通ってますけど……。」

引田くん    「別の写真です。」

川畑      「別の写真です。ワタシの写真はワタシが撮りました。」

裁判官     「わかりました。」


裁判官、ちょっと間を置いて………川畑が質問しない様子なので、こう切り出した。


裁判官     「原告、証人に対する質問は以上ですか?」

川畑      「……。そうですね。以上です。」

裁判官     「わかりました。……。ではワタシが2~3。」


何を聞くのであろうか?


裁判官     「週に2回くらいネコが車に乗っていると証言していますが…。

           証人は週に何回くらいこの車の前を通りますか?」

引田くん    「そうですね。学校がありますので、週4~5回ですか…。その往復です。」

裁判官     「ふむ。で、毎回乗っているわけではないのですね?」

引田くん    「そうですね。」

裁判官     「乗っていない時、ネコはどこにいますか?」

引田くん    「見かけない時もありますし…。駐車場のアスファルトの上に寝ていたり、車の下にいたり…。

          あと、この家の中や庭の部分にいたり……。柵の上に座っていたり…。色々です。」

裁判官     「ふむ。で……。毎回追い払っていましたか?」

引田くん    「車の上に乗っている時は、極力そうしました。

          ……まぁ急いでいる時は出来ない時もありましたが……。」

裁判官     「アスファルトの上にいる時も追い払いましたか?」

引田くん    「いえ…。その時はしていません。」

裁判官     「ふむ。………。ワタシからは以上です。……被告質問ありますか?」


いよいよ来た。ついに来た。


タロウ     「あります。よろしいですか?」

裁判官     「どうぞ。」

                                      第二回その4 イラスト:

以下次号。