第一回口頭弁論---その6---示談交渉 | 【実録】ネコ裁判  「ネコが訴えられました。」

第一回口頭弁論---その6---示談交渉

裁判官    「では少し裁判所内で話し合いますので、原告被告傍聴席の方、一度退出してください。」

というので一度出て行く。
出口に近い川畑はワタシが出て行った時には既にベンチに腰を掛けて「ぼー」としていた。

ユミコ     「ちょっとネクラそうでない?」

小声で話しかけてくる。

ユミコ     「『まともに人と接しられない症候群』よきっと…」

勝手に病名をつけるな…。

ユミコ     「都合の悪い事は『取り下げ』ればすむんだー。タロちゃんもこれからそうすれば?
          通ればですけど…。」

わざと聞こえるくらいの声で今度は喋りだす。

タロウ     「奥さん…。静粛に…。」
ユミコ     「だってさー……。」
タロウ     「まぁまぁ…。」

なぜか怒る方となだめる方が反対になっている。

書記官が出てきた…。

書記官     「山田さん。ちょっと」
タロウ      「はい」

促されて入廷した。
裁判官と裁判委員二人、それと書記官とワタシ…。あわせて5人である。

裁判官    「被告…の山田さん。」
タロウ     「はい。」
裁判官    「今からお話しすることは、裁判所としてのひとつの提案ですから聞いてください。」
タロウ     「はい。」
裁判官    「ネコが複数の家にまたがって生活をするというケースは結構あります……。」
タロウ     「そういった事例もあるんですか…」
裁判官    「この金額も被告の答弁書のとおり、いかがなものかと思いますけども…」

なにやらこちらよりな発言のオンパレードである

裁判官    「まぁそれは置いておいてですね…。
         このまま裁判を続けますと、手間も日数もかかりますよね?
         これを数万円支払って示談という方法を取ることも出来ますが?」
タロウ     「どういう意味ですか?ワタシが負けるって事ですか?」
裁判官    「…いや…負けるとか勝つとかって言うのじゃないんです。
         もちろん貴方がこのネコを飼い猫として認めると言うのとも違います。
         ただ、この件を早く終わらせる為に数万円を相手に支払って、
         『裁判がなかった事』にするわけです」
タロウ     「私が支払うんですか?」

わかっていたが聞いてみた。

裁判官    「そういうことです。」
タロウ     「川畑に?」
裁判官    「はい」
タロウ     「冗談じゃない。何でウチが支払わなきゃならないんですか?
         こっちは訴えられただけでも迷惑しているんですから!
         むこうから謝罪して欲しいくらいですよ!」
裁判官    「では示談の意思はないという事ですね?」
タロウ     「当然です!」
裁判官    「わかりました……。では書記官……。原告と傍聴人を入廷させてください」

書記官が呼びに行った。
川畑が入ってくる。
ユミコはさっきよりも前のほうの傍聴席に着いた……。
ユミコの方が怒り心頭の様子である。
                                 第一回その6 イラスト:
以下次号