コンクリート群での自殺、パブリロから聞かされた発砲事件、薬でイカれた人たち、死体捨て場、死に対する人々の反応。
・・・人が死んだのにどうして常識で片付けるのか。なぜ何とも思わないのか。この国の人たちはどこかが壊れてるんじゃないか。もっとも、死ぬことで何か解決するのか。人が死ぬとはどういうことだろう・・・。
起こった事実を交えて、死に対する疑問を音楽家にぶつけた。そして、彼は遠くのほうを見つめながら話し出した。
「私には分からないな。永遠の疑問だよ、それは。・・・私はこれまで数々のことを経験してきた。だけどな、まだ死というものに直面していない。きっと死んでみないと分からないんじゃないか。
・・・自殺や他殺、それから自然死もあるが、他殺以外は全部、当事者が死を選択したことになるんだろう。自殺は文字どおりだけど、自然死にしても、死ぬ瞬間この世と別れるという選択を無意識のうちにするんじゃないかな。
・・・でも、よく分からないな、私には。」
「じゃあ、幸せって何でしょう?」
「それはね、自分らしいということ。本当の自分といるときだな。・・・心が平穏なとき、最もそう感じるね、私は。
心がありのままで何物にも捉われず閑かな気持ちでいるとき、特に幸福っていうか、至福感を感じる・・・。
私も含めて、生きていく上で大切なことは自分を成長させてくれるものに忠実であること、そして最善をつくすことだと思う。
・・・自分の過ちや自分が正しいと思うことを素直に認められる心を持つこと。自分の心の中の衝動に耳を傾け、他人の目を気にせず自分が人間として正しいと思う事に進んでいくこと。
・・・そして・・・、これが最も重要なことなんだが、心の中に逃げ道も開けておくこと。
一度に多くのことが入ってきて、君たちの頭のなかはパニックになってるようだが、要するにはだ・・・、どんな生き方をするにせよ、自分の内に秘めたルールに従えば幸福になれるなずだよ。」
音を失った音楽家は、こう言うと傍らに立てかけてあったギターを抱え、ポロンと鳴らした。そして、今日はたくさんのことを話したけど、それは彼が出した答えで僕たちが出すべき答えは僕たち自身で探すことだ、と付け加えた。
オーディルは何か歌ってほしいと催促し、彼は不思議と落着く音色に合わせて歌いはじめた。
破れた赤い風船
見つめている少年のハート
喚きたてるスピーカーズコーナー
血管の浮きでた禿げ面
一刻もはやく時間のない国へ行こうよ
ストリートを駆けぬけ自由の国へさ
俺に付いてこいよ 誰だってかまわない
野性的な心の持ち主なら大カンゲイさ
瞳から流れる真っ赤なルージュ
排気ガスにかき消され
奴の口から飛びだしたゴースト
石につまづき破裂する
自分の心を透かしてみろよ
真実がつまってるお前のハート
薄汚れた箱を開けてみな
羽のない天使が飛び出してくるぜ
まるで、黒い紙に赤い色でペイントしたような激しさが彼の詩とメロディーに表れていた。二人は再び現実感のある幻想の世界へ陶酔していった。
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次回へ続く