コンクリートジャングルだろうか。東京は。
隠退して、東京を歩いていると、緑が多いと感じる。
OECDの調査によると、世界の都市の緑地化比率は、
東京は21.4%。
ベルリン60.3%、ロンドン57.3%、パリ49.3%、ローマ41.7%などの
西欧の都市と比べると東京は緑地がたいへん少ないことになる。
公園の多さが影響しているのかもしれない。
それでも、東京は、緑豊かに感じてしまう。
東京は、道沿いの緑、つまり街路樹、植え込みが豊富なのかもしれない。
地元本郷の道を歩いてみた。
まず本郷の西の白山通り。
歩道が広くとってある。
そのせいか街路樹以上に植え込みが大きく占有しているのが目立つ。
街路樹は、東京の樹、いちょうが多い。
とともに、広い白山通りの歩道は、増えた自転車利用者のための自転車道化してしまっている。
車道の脇に自転車道は設置されているのだが、そこを利用する人は少なく、もっぱら皆歩道を突っ走る。
広い植え込みは、季節の草木・花というより、雑草が茂ってしまっている。
これでは管理が大変だろう。
本郷の北の言問い通り。
歩道が狭い。
狭いのに、街路樹と植え込みがきちんととられている。
街路樹は、いちょうはない。もうすこし小さい樹木だ。
植え込みの花が統一されている。いま小さな紫の花を咲かせているのはランの一種らしい。
歩行者にとってはいい感じだか、増えた自転車族がぞろぞろ来ると、
街路樹、植え込みは、邪魔になってしまう。
本郷の真ん中を横断する春日通り。
本郷通りと交わる本郷三丁目の交差点を境に、様子が変わる。
西の春日、茗荷谷側は、道幅が広く、街路樹、植え込みも大きめにとられている。
ここも、街路樹はいちょうが多く、植え込みは雑草が茂る。
東の御徒町側は車道も歩道も狭くなり、
街路樹、植え込みは姿を消す。
歩道を歩くにも、せまぜましい。
本郷を南北に貫く本郷通り。
東京大学の赤門、正門がある通りだ
歩道は狭く、人通りが多い。
が、街路術は、東大の印ともいえるいちょうが連なる。
植え込みも、小さいながらある。
ここは自転車が比較的少ないため、歩行者のストレスはそれほどでもない。
本郷には、前出の街道を除くと2つの商店街がある。そこはどうか。
大通り商店街。本郷1丁目から3丁目を貫いている。
街路樹だけがある。が、小さな金木犀だ。
歩行者を邪魔していない。
もうひとつ。菊坂商店街。
ここは街路樹も植え込みもない。
そもそもきちんとした歩道も設置されていない。
本郷の街の中にはいってみる。
本郷は、1~3丁目は中小のオフィスビルやマンションが多い。
それらの新しい建物は、すべて門前に植え込みがきれいに設置されている。
5~6丁目は戸建ての家が多い。
ここに限ったことではないだろうが、多くの家が玄関先には植え込みがある。
以上のとおりだ。
東京の街は、緑が豊富、に見える。
そもそも、大都市は、なぜ、街路樹、植え込みを設置するのか。
それは、つぎのような大きなメリットがあるためだ。
・景観がよくなる
・街並みに統一感や彩り、季節感、潤いをもたらし、美しい並木道を形成する
・環境の保全に役立つ
・夏の強い日差しを遮り、木陰を作ることで、周囲の気温上昇を抑え、ヒートアイランド現象緩和に貢献する
・光合成によって二酸化炭素を吸収し、地球温暖化の防止に役立つ
・葉が大気汚染物質(窒素酸化物など)や粉塵を吸着し、空気を浄化する
・騒音を低減する
・交通安全
・車と歩行者を分離し、歩行者の安全を守る
・車のヘッドライトの眩しさを遮る
・防災
・火災発生時の延焼を防ぎ、市街地の火災拡大を食い止める
・地震時には、倒壊する家屋を受け止め、避難経路を確保する効果も期待される
・生物多様性の維持
・鳥や昆虫、小動物などの生息環境となり、生態系のネットワークにおいて重要な役割を果たす
一方で、街路樹、植え込みにはつぎのようなデメリツトもある。
・近年とくに話題になっているが、倒木、落枝、根上りがあり、歩行者、車両の障害になる。
・落葉樹が多く、落ち葉はスリップ、転倒の原因になっている
・病害虫が増える
・標識、街路灯、看板を遮り、景観を阻害することもある
・維持管理コストが膨大。剪定、清掃、病害虫対策など。
街路樹について国土交通省が令和3年に自治体に対して実施した課題調査結果がある。
・街路樹台帳がない 21%
・管理マニュアルがない 56%
・予算が不足している 54%
何がどこにあってどのようになっているか、どのように維持管理していくか、
といった基本的なデータ整備ができていないところが多いようだ。
そして、街路樹・植え込みは、自治体にとっては
大きな「お荷物」「負担」の状態になっているようだ。
日本は、古来、先進国の模倣・応用をして、それを改善を重ねてつきつめ、
先進国が驚嘆するまでの状態にしてきた国だ。
街路樹・植え込みについて、先進国はどうしているか、
みてみよう。
アメリカは、都市緑地の価値を貨幣に換算し、都市インフラとして整備していくと決めた。
街路樹の価値をこう設定し、数値化して判定できるようにした。
ヒートアイランド防止、水質改善、災害被害低減、大気の冷却・浄化効果、
地価上昇効果、生物多様性(野生生物生息)、
健康効果(生活習慣病リスク低減、精神疾患低減)など。
Itreeというソフトウェアを開発し運用している。
ドイツは、マイスター制度を導入した。
デジタル樹木調査システムを開発し、
大学で教育3年・実務3年を経た者をマイスター資格を付与し、
1人1000本を担当し詳細な調査を実施し続けていく。
スウェーデンは、バイオ炭街路樹管理システムを導入した。
都市のゴミからバイオ炭をつくり、街路樹植栽の基盤としている。
行政は、その道の環境によつて、街路樹・植え込みをなくすことなく、そのあり様を変えている。
ぜひ引き続きがんばってほしい。
また、アメリカやドイツのような先進例に学んでほしい。
日本は、八百万の神の国だ。
自然に溶け込んでくらしてきた。
その根幹のところを自覚しながら取り組むべきだろう。










