さて、タイトルは「怖くない」になっていますが、それはあくまで当事者であるわたし個人の感想であって、世間一般の見方からすると、怪談の類なのかもしれません。

 

なので、幽霊や怪談が苦手な方は、ご注意ください。


ただ、わたしにとっては、これもある意味、スピリチュアルな失敗談なのです。

 

というわけで。

 

みなさまは、ヘミシンクをご存じでしょうか。

 

これはざっくりかんたんにご説明しますと、ロバート・モンローという方が開発された音響技術で、ヘッドフォンを使って左右の耳に若干異なる周波数の音を聞かせることで、人を変性意識状態に導くというものです。具体的には、体外離脱などが可能になります。

 

昔の僧侶は、瞑想によってそういう境地に到達していたんでしょうが、ヘミシンクは科学的な手法を使って、てっとりばやく脳波を変えちゃおうというわけですね。

 

わたしはこれを、バシャールと坂本政道さんの対談本で知りました。十年以上前のことです。

 

で、

 

「うっわ、面白そう! 爆  笑」 

 

と思ったんですよ。

 

だって、体外離脱って、ちょっと経験してみたくないですか?

 

好奇心に突き動かされたわたしは、さっそく自宅学習用CDのシリーズを買いこみました。

 

本気でやるんだったら、もちろんセミナーに参加するほうがいいんでしょうが、とりあえずお試しで。

 

しかし、考えが甘かった。

 

わたしはそもそも瞑想が苦手で、すぐ眠ってしまうんですよ。(当時はつねに寝不足だったし)

 

ヘミシンクも同じでした。CDを聞き始めると、毎回毎回、爆睡してしまう。

 

わたしは根性がないので、あっさりあきらめました。

 

とはいえ、せっかく大枚はたいて買ったわけだし、少なくともヘミシンクを聞いたら確実にぐっすり眠れて頭がすっきりするので、睡眠薬がわりに聞きつづけていたんです。

 

すると、体外離脱はできないまでも、ちょこちょこ妙なことが起こりはじめまして。

 

なかでも、もっとも不可解だったことが、今回のお話です。

 

さて、いつものようにひとりでヘッドホンをして横になり、ヘミシンクを聞き始めたときです。(このときはまだ眠っていませんでした)

 

いきなり何者かが、わたしの両足首をつかんだのです!

 

えっ? なにっ!? びっくり

 

びっくりしていると、わたしの肉体から中身が抜けて、ずるずるずるーっと引きずっていかれ、そのまま暗くて長―いトンネルの中へ!

 

わわわ、なんだなんだなんだ──っ!? ガーン

 

パニクりながらトンネルを抜けた先は、雪国──なわけがない。

 

ヨーロッパ風の街並みを見下ろす空の上でした。

 

えっ、ここどこ?

 

困惑しながら赤い屋根が並ぶ街を見おろしていると、音楽が聞こえはじめました。

 

わたしはその曲を知らなかったのですが、雰囲気は、クラシックギターで演奏する「アルハンブラの想い出」みたいな感じでした。

 

はてな? わたしは、いったいどうして、こんなところに連れてこられたんだろう?

 

と、考えこんでいたら次の瞬間、また自分の部屋にもどっていたのです。

 

そのときわたしが思ったのはですね、

 

「くそっ! 低級霊にからかわれた! ムキー

 

です。

 

わたしが毎度毎度ヘミシンクを聞きながら脳天気に爆睡しているものだから、どこかの霊がいたずらしてやろうと思ったんだな、と。

 

いやもう、めっちゃ悔しくて、腹が立ちまして。

 

で、このことがあってしばらく経ったころ、偶然、とあるブログに怪談漫画が載っているのを見つけたのです。

 

本当にあった怖い話、みたいなあれです。
 

その内容が、布団に横になっていたとき、幽霊に両足首をつかんで引っ張られたという体験談で。


おお。わたしといっしょ! やっぱりあるんだ、そんなこと!

 

でも、これって怪談なのか……?

 

そのとき、はじめて気づきました。

 

幽霊に足を引っ張られるなんて、ふつうは恐怖以外のなにものでもないはずだと……! 

 

なにを呑気に腹を立てたりしちゃってたんだ、わたしは。

 

うん。われながら、にぶい。

 

わたしは本来、めっちゃ恐がりなんですけどね。

 

ホラー映画なんか絶対に観られない人なんですけど。

 

でも、あのときのあれは、本当に怖くなかったんですよ。

 

あれから十年以上経った今、あらためて思うのは……

 

何者の仕業かはわかりませんが、べつに悪気はなかったのかもしれませんよね。

 

だって、変なところに連れていかれたわけじゃないし。

 

誰かが見かねて、体外離脱を手伝ってくれようとしたのかも。

 

だとすると、怒って悪かったなーとさえ思うのです。


ともあれ。わたしは今でも自力で体外離脱はできないし、ヘミシンクを聞いたら爆睡します。
 

本来のヘミシンク体験って、こんなものじゃないはずなんですが、わたしはいったいどこで間違ってしまったんでしょう?